ヴィティコー(第3巻)
雄大な叙事詩的物語は最後の大団円を迎える。エルサレム奪還を目指す十字軍の遠征から、自由都市ミラノと神聖ローマ帝国との戦いへと、舞台はボヘミアとモラヴィアから世界史へと大きく拡大してゆく。ヴィティコーは数々の武勲により森の領主となって、美少女ベルタを娶り、とうとう自らの城を築く。しかし作者の筆は、永遠の時を振り返るかのごとくに、静謐に、淡々と進む。あたかも、森に咲く薔薇をキャンバスに描く画家の絵筆のように…。ドイツ語以外の言語によってはこれまで刊行されたことのないこの大長篇小説の、訳者畢生の邦訳も、本巻をもって完結する。