おんな太閤記(上)
「一城の主とまでいかないが、ほどほどに出世して、相応の一家をなす男」とはねねの父・杉原助左衛門の藤吉郎評であった。ねねもその程度でいいと思う。だが、藤吉郎の幼いころからの苦労と猿に似た顔であれば道化て皆に笑ってもらいながら出世するしかないという悲痛な本音をきいた時、ねねは、初めて藤吉郎を理解した。
「一城の主とまでいかないが、ほどほどに出世して、相応の一家をなす男」とはねねの父・杉原助左衛門の藤吉郎評であった。ねねもその程度でいいと思う。だが、藤吉郎の幼いころからの苦労と猿に似た顔であれば道化て皆に笑ってもらいながら出世するしかないという悲痛な本音をきいた時、ねねは、初めて藤吉郎を理解した。