出版社 : インスクリプト
キューバの作家、レイナルド・アレナスの『夜明け前のセレスティーノ』に続く〈ペンタゴニア〉五部作の第二作目。バティスタ政権崩壊とカストロの革命政権の交代期に、貧しい生活にあえぐ家族に囲まれて思春期を送る青年フォルトゥナートを主人公に、現実と非現実、人称の境を飛び越えながら、生の苦難と魂の叫びを描く。パワフルな言葉が紡ぎだすめくるめく小説世界。 第一部 プロローグとエピローグ 一 蠅 第二部 不平不満のある者たちが話す 最初の苦悩 二つめの苦悩 三つめの苦悩 四つめの苦悩 五つめの苦悩 二 蠅 第三部 上演 六つめの苦悩 三 蠅 訳者あとがき
ある年の大晦日の夜、アルジェリア駐在のフランス陸軍士官エクトール・セルヴァダックは、従卒のベン= ズーフとともに、尋常でない衝撃を受けて気を失う。意識を取り戻した彼らは、西と東が逆転し、一日の長さが半減し、重力が六分の一となり、誰もいない孤島にいた……。彗星の一撃によって地球もろとも宇宙空間に運び去られたセルヴァダック一行の、パラレルワールドで展開される太陽系ロビンソン漂流記。奇想天外、ジャンルSFの出発点と目され、〈驚異の旅〉の転換点を刻する問題作、初の完訳。
地球が回りつづけねばならぬのなら未来は貴方がたが決めるのよ。生きるためなら他人となるも厭わぬ、そんな人生の許された時代に大西洋を往還する者たちの運命。スーザン・ソンタグ絶賛のデビュー作『都会のヴードゥ』から16年、ブエノス・アイレスの映画作家が還暦からの新生を遂げた奇跡の短編集。
「どんな子供でもハテラス船長に付きしたがって、世界の果てまで、北極点まで、近づく者を焼きつくす火山の聳え立つ、あの「クイーンズ島」まで行ってしまうにちがいない」(ル・クレジオ)。 人類未踏の北極点を目指す狂熱の冒険行。屹立する氷山、酷寒の氷原、友愛と叛乱……、北極圏を生き延びる「ロビンソン」たちを待ち受けていたものとは。 ドゥルーズ的「無人島」がヴェルヌ世界に初めて出現し、〈驚異の旅〉の真の出発点となった「紛れもない傑作」(グラック)が、「出版者まえがき」(エッツェル)とともにその全貌を現す、待望の新訳・完訳。オリジナル挿絵約270葉、ジュール・ヴェルヌ略年譜収載。 「ヴェルヌが自作を一作に集約させようと思えば、この作品以外にはありえない」(石橋正孝)。ヴェルヌ理解を決定づけたビュトールがその「至高点」の概念を抽出したのも『ハテラス』だった(「至高点と黄金時代」『レペルトワールI』所収)。ピエール=ジュール・エッツェルによって挿絵版シリーズの第一回配本として選ばれ、〈驚異の旅〉を冠せられる第一作となった『ハテラス船長の航海と冒険』。ヴェルヌの小説世界の可能性を示す記念すべき大長篇。 出版者まえがき ハテラス船長の航海と冒険 第一部 第二部 訳註 解説 石橋正孝 訳者あとがき ジュール・ヴェルヌ略年譜 地図 細目次
遂に姿を現すマルティニック・サーガの核心部。奴隷船でカリブ海・マルティニック島に運ばれたアフリカ黒人の、対立し混じりあう二つの家系を軸に、六代にわたる年代記が描くアフロ=クレオールの歴史。記憶を創造し、歴史を奪い返す想像力の冒険。
新訳完訳「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」第三回配本。 元祖ヴァーチャルアイドルと見えない花嫁……。本巻では、東欧を舞台にしたゴシック小説的幻想味あふれる後期の傑作二篇を収録。「カルパチアの城」はブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に先立つこと五年、吸血鬼伝説の本場トランシルヴァニアを舞台に推敲を重ねた自信作。ホフマン、ポーやルルーの「オペラ座の怪人」などを好む方々には特におすすめの完訳版。レオン・ブネットの挿画40枚収録。 「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」は、H・G・ウェルズ「透明人間」の向こうを張ってヴェルヌが書いた透明人間もの。本作は息子のミシェル・ヴェルヌが書き換えた版(未訳)が長く読まれてきたが、今回がジュール・ヴェルヌのオリジナル版本邦初訳となる。唖然呆然の最終章のみ、ミシェル・ヴェルヌ版を併録した。 二作ともに、不在の女性への狂恋が物語を貫いており、美しきヴォーカロイドとも言うべきラ・スティラを追い求める二人の男(「カルパチアの城」)、完璧な令嬢ミラへの倒錯的愛に身を捧げるヴィルヘルム・シュトーリッツの、身の毛もよだつ透明人間ストーカーなど、さまざまな意味で現在に直結する「〈独身者機械〉小説」(新島進)であり、ヴェルヌの最も21世紀的な小説。面白さ抜群の二篇を練り上げられた訳文と詳細な註を付して贈る。 カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 ミシェル・ヴェルヌ版第一九章 訳註 解説 石橋正孝 訳者あとがき 細目次
北インドの大自然を舞台に繰り広げられる冒険と復讐の物語。セポイの叛乱で捕虜を虐殺し合い、あまつさえ、互いの伴侶を殺害した、イギリス陸軍士官エドワード・マンローと叛乱軍の首領ナーナー・サーヒブ。叛乱鎮圧後、憂鬱に沈むマンローを励まそうと、友人たちは鋼鉄の象が牽引する豪華客車を用意、インド横断の旅に出る。闇の中を蠢く叛乱軍の残党たち、正気を失い、松明を持って密林をさまよう謎の女性「さまよえる炎」……。血の糸で引き合う宿敵同士の運命やいかに。「ヴェルヌの最も不思議な魅力を湛えた小説」(ジュリアン・グラック)であり、インドを横断する『八十日間世界一周』と表裏をなし、『八十日間』を逆向きに反復しかつ更新する傑作、130年の時を経てついにその全体像が姿を現す。本邦初完訳。 目次 蒸気で動く家 第一部 第二部 訳註 解説 石橋正孝 訳者あとがき 細目次