出版社 : コトニ社
詩人・エッセイスト・翻訳家であり、日本文学最高の文章家の一人とも言われる管啓次郎による初の小説集。 未知の人生たちーー。 ありそうでなさそうな、なさそうでありそうな……。 そんな時代と場所と人物が、まじわり、飛びこえ、 現代によみがえるもう一つの小さな世界。 異郷(ヘテロトピア)への旅物語。 この100 年の東京へのアジア系移民たちの物語をつむぐ巡礼型演劇作品「東京ヘテロトピア」(Port B)のために書かれた5篇にはじまり、北投(台湾)、ピレウス(ギリシャ)、リガ(ラトヴィア)、アブダビ(アラブ首長国連邦)、ヘルダーリンの小径(ドイツ)へ。中篇「三十三歳のジョヴァンニ」、対話劇「ヘンリと昌益」も併録。 1 ヘテロトピア・テクスト集 言葉の母が見ていた(ショヒド・ミナール、東京) 神田神保町の清頭獅子頭(チンドゥンシーズートウ)(漢陽楼、東京) 本の目がきみを見ている、きみを誘う。旅に(東洋文庫、東京) 小麦の道をたどって(シルクロード・タリム、東京) 川のように流れる祈りの声(東京ジャーミィ、東京) 北投の病院で(北投、台湾) 北投、犬の記憶(北投、台湾) ピレウス駅で(ピレウス、ギリシャ) 港のかもめ(リガ、ラトヴィア) アブダビのバスターミナルで(アブダビ、アラブ首長国連邦) パラドクスの川(ヘルダーリンの小径、ドイツ) 2 もっと遠いよそ 野原、海辺の野原 そこに寝そべっていなかった猫たち 偽史 三十三歳のジョバンニ ヘンリと昌益 川が川に戻る最初の日 跋
閉塞する時代に詩はあるか、旅はあるのか。世界をさまよう宿命を背負った詩人の生涯と、大洋を越えてひろがる詩の連帯の“世界文学”を浮上させる、本格評伝!ルーマニアからスイス、ブラジルはリオデジャネイロ、ラテンアメリカをへて、シアトル、そしてハワイはホノルルへー。