出版社 : セルバ出版
偶然の出会いから結婚に至ったものの、お互いに絶対に明かせない秘密を抱えている夫婦。救いを求める声を聞き流した男のもとに、かつての恋人から届いた手紙。生まれ育った島にやむなく帰った男が言葉を失ってしまう思わぬ告白。赤々とした炎のように燃え立つ心をぶつけ合って、たちまち離ればなれになった恋を思い出すウェールズ生まれの女性。田舎でくすぶる初恋の人を無念に思うイギリス人編集者の揺れるような記憶。海外文学の影響を受けた筆致で紡がれる短編はいずれも「生きることのミステリー」を突きつけていく。やるせない人生たち。そこに音楽は流れている。「生きることのミステリー」を描いた32の短編小説たち。
政治学者・秋津義博は、気づくと、この世界の日本とは少し違う現代日本に移動していた。その世界は素晴らしき異世界。それでも元の世界に戻ろうと、さまざまな都市伝説を試みる。そんな中、歴史上の人物との交流を楽しみ、シリウス星人と巡りあい、はるかなる宇宙につながる。異世界で生きる決意をし、充実した日々を過ごす義博。はからずも元の世界に戻ったその運命は…。超常現象のみならず、多分野の知識と理論で描き出される壮大な物語。東大法学部卒、法学博士、官僚・学者・作家の顔を持つ著者渾身の一作。
栃木県と群馬県の県境にある奥日光。いろは坂、華厳の滝から中禅寺湖、さらに登って戦場ヶ原という日本が誇る美しい情景が続く日光国立公園。その奥の静かな湯ノ湖、休日にはトレッキングや釣り人などで賑わう。さらに湯ノ湖の先、金精峠を越え群馬県側に入るとまたいくつかの湖(丸沼、菅沼)が見えてくる。九月中旬には木々の葉は色づき始め、朝晩は息が白くなり冷えてくる。物語はその湯ノ湖で幼児の水死体が発見されるところから始まり、事件は金精峠を越えて群馬県側に…。
一匹狼の私立探偵が、前代未聞の犯罪に挑む本格ミステリー。探偵が依頼された事件は、当初、単純な人探しと思われていた。ところが、失踪者の謎の過去と不可解な行動、依頼人の記憶喪失、社長夫人が入院していた特別室に絡む多くの謎、連続ストーカー殺人…。事件は複雑に絡み合っていき、ついに探偵までも襲撃される。事件の鍵は最先端技術のメタヴァースにあった!不屈の探偵が辿り着くのは、犯罪の罠に隠された悲しい真実、そして、希望。真の「消えた女」は誰だったのか。
二〇二×年一月、中国武漢で始まった新型コロナウイルス感染症は、全世界へ蔓延し、すさまじい程の死者数を出した。厚労省医系技官の中大路文也は、橋田内閣官房長官の命を受け、調査のため武漢国立ウイルス研究所に向かった。日本政府は、中国が生物兵器として新型コロナウイルスを作成したとの情報を得たからだ。中大路は、外務官僚の端本哲也と共に潜入調査し、中国国防部から研究所宛に生物兵器として新型コロナウイルス作成を命令する機密文書を入手した。その機密文書の情報を持って帰国した直後、中国人民解放軍海軍は、航空母艦遼寧艦隊を繰り出し、日本固有の領土である南鳥島へ侵攻し占領した。安蘇内閣総理大臣は、閣僚を集め緊急協議したが、結局、中国外務省に抗議するのみで憲法上の制約から武力行使できずにいた。その間、中国は、島の周囲を埋め立て、滑走路拡充、軍港建設、海域のレアメタル発掘などを急速に進めた。