出版社 : 中央公論新社
第三〇二航空隊の夜間戦闘機「極光」は駿河湾にてB29と交戦。日中の高高度という不利な条件下ながら、空中雷撃による敵機の撃退に成功した。一方、上海の日本軍海兵隊司令部に中華民国政府高官・閻烈山将軍が接触を求めてくる。日本の存亡に関わる重要機密を知るという彼の目的とは? 緊迫する世界情勢の中、厚木基地を発進した艦上偵察機「彩雲改」が敵信を傍受。戦略爆撃を狙う米艦隊の偵察に踏み切るが、そこに新たな敵影が……。戦局はいよいよ佳境へと迫る!
夫・一俊と共に都営団地に住み始めた永尾千歳、40歳。一俊からは会って4回目でプロポーズされ、なぜ結婚したいと思ったのか、相手の気持ちも、自分の気持ちも、はっきりとしない。 二人が住むのは、一俊の祖父・日野勝男が借りている部屋だ。勝男は骨折して入院、千歳に人探しを頼む。いるのかいないのか分からない男を探して、巨大な団地の中を千歳はさまよい歩く。はたして尋ね人は見つかるのか、そして千歳と一俊、二人の距離は縮まるのか……。 三千戸もの都営団地を舞台に、四十五年間ここに住む勝男、その娘の圭子、一俊、友人の中村直人・枝里きょうだい、団地内にある喫茶店「カトレア」を営むあゆみ、千歳が団地で知り合った女子中学生・メイ。それぞれの登場人物の記憶と、土地の記憶が交錯する。
夫の両親と同居する塔子は、可愛い娘がいて姑とも仲がよく、恵まれた環境にいるはずだった。だが、かつての恋人との偶然の再会が塔子を目覚めさせる。胸を突くような彼の問いに、仕舞い込んでいた不満や疑問がひとつ、またひとつと姿を現し、快楽の世界へも引き寄せられていく。上手くいかないのは、セックスだけだったのにー。島清恋愛文学賞受賞作。
母の仇を討ち、横浜に戻った朝丘剛は、マリアが消えたことに大きなショックを受ける。無為な日々を送る剛に声をかけたのは、またしても松任組の組員だった…。異形の強者が集まる「闇試合」。松任組が仕切る秘密の格闘技興行への誘いに乗った剛は、賭け金の舞う流血の真剣勝負に挑む。勝つために非情に徹し、邪拳の様相を帯びる剛の拳。その前に立ちふさがった男とは!
英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。思わぬ遺産に飛びつくが、大伯母は面識のない自分に、なぜこの屋敷を託したのか?遺産を受け取るため、親族の中で異端視されていた大伯母について調べるうちに、「十六夜荘」にこめられた大伯母の想いと、そして「遺産」の真の姿を知ることになりー。
あの人気キャラクターの最新作。「読売新聞」好評連載がいきなり文庫に!東京第一銀行の跳ねっ返り行員・花咲舞は、己の信じる正義のもと、空気は読まず、時にブチ切れながら、問題支店や勘違い行員の指導に奮闘している。そんな中、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまい……このままでは我が行はダメになる! 歯を食いしばり行内の闇に切り込む、痛快連作短篇。
閑古鳥が鳴く新宿のバー兼探偵事務所「あなたのシュガー」。だが、謎の美女が訪れた夜から、龍二と秀之進は政界の怪物に接近することに。その男はカリスマ性と“あるもの”によって日本を覆さんとしていたー。元刑事の探偵コンビ「ダブルシュガー」シリーズ完結篇。文庫書き下ろし。
遊郭の打ち壊しが起こり、闕所物奉行、榊扇太郎は競売の入札権を持つ天満屋とともに後始末にあたる。事件を発端に不可解な殺人が続発、そこには水戸藩の思惑と幕府の陰謀が入り乱れていた。やがて吉原にも魔の手がのび、扇太郎にも危険が迫る!痛快時代小説シリーズ、待望の新装版!
帰郷した重兵衛が重臣たちに隠居の覚悟を告げている頃、その諏訪家に向けて、将軍の御朱印状が江戸を出立した。この使いの行列が、重兵衛出奔の端緒となった市之進斬殺や、忍びによる目付頭襲撃、江戸留守居役・塚本の死などを、三十年前のある騒動に結びつける口火となる。すべての謎が、今明らかにー痛快時代小説シリーズ、第一部完結!
いく度も奉公先を追われる美しい娘・菊。慾のない菊の姿はやがて、つねに満ち足りない旗本青山家当主・播磨の心に触れるが、菊の父親の因果や、播磨の暗い人間関係が、二人を凄惨な事件に突き落とす。数えるから、足りなくなるー欠けた皿と心の渇きに惑う人々が織りなす、今まで語られなかった「皿屋敷」の真実。
手には大型ナイフ、血まみれの着衣。殺人現場付近の監視カメラは敏腕検事・田島の衝撃の姿を捉えていた。絶対的な証拠が揃う中、彼は無実を訴えたきり口を閉ざす。田島の下で働いていた検察事務官・星利菜は、真相を明らかにするために彼と法廷で対峙するが…。ドラマ原作にもなった傑作ミステリー。
推理作家が親友に古今東西の「殺し方」を話したその晩、人が殺された。驚きの方法で…(「冷たいのがお好き」)。昔の恋人を消す計画を練っていた男が落ちた陥穽(「殺さずにはいられない」)。幻のショートショートを含む傑作短篇集第二弾。著者選「ミステリーひねくれベスト10」も収録する。
新宿の闇金業者殺しの現場から、亀戸で遺体となって発見された少年の指紋が見つかった。SRO室長・山根新九郎は、法歯学の調査により少年の発育に遅れがあったことを知る。同じ頃、東京拘置所特別病棟に入院している近藤房子が動き出す。担当看護師を殺人鬼へと調教し、ある指令を出した。そのターゲットとはー。
渋谷スクランブル交差点でのテロを防ぎ、事件に関わる警察官を大量検挙した「クラン」。しかし、全ての黒幕「神」の魔手は、ついに「クラン」のメンバーへ迫る。次々と消える仲間たち、敵に回る日本警察。絶体絶命の窮地の中、刑事たちに残された秘策とは。最終局面に向け、急加速する戦いを見逃すな。書き下ろしシリーズ第五弾。
香港の暗黒街九龍城砦でストリートファイトに明け暮れる少年・朝丘剛。独力で形意拳の一つ「崩拳」を身につけた剛は、香港に売られて死んだ母の怨みを晴らすため、日本へ密航を図る。船内での労役に耐え、上陸した少年を待っていたのは、横浜中華街の老人・劉栄徳だった。劉より中国武術の極意「功夫」を学んだ剛は、今、復讐の鬼と化す。入魂の格闘小説、待望の新装版!
警察エリート一家で育ち、優秀な兄と比較されながらも地道に事件に向き合う蟻塚博史。六本木で起こった爆破事件では、元暴力団員の単独犯として捜査が進むのを疑問視し、独自の捜査を続けた結果、カジノ法案可決の裏で暗躍する警察上層部に疑いの目を向ける。中心には警備局長の兄の姿が…。
蓋の国を動かすのは、盤戯「天盆」を制した者。人々は立身を目指し研鑽に励むが、長い間、平民から征陣者は出ていない。そんな中、貧しい十三人きょうだいの末子・凡天が激戦を勝ち進みー少年が歴史に挑むとき、国の運命もまた動き始める。圧倒的疾走感で描き出す放熱ファンタジー!
湖から屍蝋が上がったー。小さなバーのママと常連客は、そのニュースに激しく動揺する(「水底の祭り」)。十二年前の夏、不注意から起こった悲劇。大人になり再会した二人は狩りに出た(「風狩り人」)。兄のひと言から、封印された暴力の記憶が甦り…(「鎖と罠」)。初期の傑作を厳選した、文庫オリジナル短篇集。