出版社 : 中央公論新社
時は豊臣秀吉の天下統一前夜。肥後国田中城では村同士の諍いの末、岡本越後守と名乗る男の命が奪われんとしていた。だが、そこに突如秀吉軍が来襲。男は混乱に乗じて武器を取り応戦、九死に一生を得る。その戦いぶりにほれ込んだ敵将・加藤清正は、城主の姫を人質に取って越後守を軍門に降らせ、朝鮮の陣に従軍させるがー。
フィジー人、インド人、日本人、中国人…。雑多な人種が陽気に暮らす南国の楽園・フィジー。そんな日常をクーデターが一変させてしまう。観光業が一気に傾斜して国全体が不穏になっていく中、浮き彫りになる民族的な価値観の対立。それは次第に衝突の気配を孕み出してー。幸せの意味を問い続ける著者、渾身の長篇小説。
円山町のラブホテル街で女性の扼殺死体が発見され、渋谷署に特別捜査本部が設置された。警視庁捜査一課の若手刑事・根本恭平は、証券会社に勤める恋人とのデートをキャンセルし、所轄のワケありベテラン刑事とともに聞き込みを始める。被害者は外資系証券会社のキャリアOLであることが判明したが…。現代の矛盾に鋭く斬り込む、名作警察小説。
被害者の周辺を調べる特捜本部の面々。根本らは、キャリアOLの元上司である証券会社専務・柳谷の筋を、古株の大月刑事らは、政治家の塚本周辺と中央電力・大橋常務グループの筋を追う。やがて、銀行も巻き込んだ“不適切な融資”疑惑が浮上してきて…。被害女性の鎮魂のため奔走する刑事たちを描く、渾身の警察小説。
親友殺しの嫌疑が晴れ、ようやく故郷・諏訪への帰途につく重兵衛。その胸に、母への思慕の念と、主命を秘めていた。友と弟の仇であり、前の江戸家老の不正を知る遠藤恒之助は、この手で屠らなければならぬー。一方その遠藤は、重兵衛の後を追い、甲州街道を急いでいた。前回の剣戟で自らに傷を負わせた重兵衛には、必ずや報復してみせる、と。
自分を苦労して育ててくれた姉への恩返しのため、がむしゃらに働き、身体を壊した一蕗。そこに「稲荷荘」から求人葉書が届く。興味本位で赴いた一蕗がここで見たのは、廃業寸前のおんぼろ旅館。しかも従業員は白狐と猫又…そう、ここは妖怪が運営するお宿だった。茫然とするうち、一蕗は偶然、宿泊客(妖怪)の悩み相談を受けることになって?
中学生の慎治は、いじめっ子に万引きを強要されて実行してしまう。一方、偶然その現場に出くわした担任の古池は、事情を聞いた後、居場所のない慎治を自室に招き、とある趣味の世界に誘う。古池との交流や新たな世界との出会いに、徐々に変わっていく慎治。だが、いじめはさらにエスカレート。万引きの後始末は思わぬ事態に発展して…。
江戸期に十二回来日した朝鮮通信使の受け入れは、国を挙げての一大イベント。版元「荒唐堂」の三兄弟は、公認絵図の出版に向けて立ち上がるが、長男の意気込みをよそに、次男は仕事に追われ、三男は町をふらつくばかり。そして次々と難題が降りかかる!抱腹必至の長篇時代小説。
植民惑星に降りた学術調査団からの保護要請を受け、地球連邦は国場大尉率いる宇宙軍陸戦隊を救出に派遣する。だがその惑星では、想像を絶する内戦が繰り広げられていた…。後に連邦首相となる国場の若き日の“血塗られた歴史”とは!?『地球連邦の興亡1』所収の「救難任務/泥森の罠」を大幅加筆し長篇化。書き下ろし短篇「攻撃目標G」を併録。
由良家の一人娘・珠子が無事に小学校へ通い始め、平穏な日々が訪れるかに見えたゆら心霊相談所。だが「視えちゃう」アルバイトの秋都尊は、変人所長・蒼一郎がいつも首に巻いている包帯に、不穏な黒い靄が滲むのを目撃する。尊は、その首に刻まれた秘密をつきとめ、恩人を救うことができるのか?波乱のシリーズ第3弾!
時は幕末。天誅と称する血腥い殺人が公然と行われ、京の風雲はいよいよ急を告げていた。鴨川の三条河原で髪結床を構える三兄弟の眼前でも、勤王志士と新選組との死闘が繰り広げられる。そして彼らに関わる遊女や目明かしたちの命も激動する時代に翻弄され…。「新選組三部作」の外伝ともいうべき、動乱の京の生と死を描く幕末絵巻。
女の胸をかき乱す、淋しさ、愛欲、諦め、悦びー。安野モヨコが愛した、女心のひだを味わう傑作群。孤独な男を残酷なまでに誘惑する「耳瓔珞」、愛している男を自分の親友と結婚させる「むすめごころ」などー繊細な挿絵とともに、円地文子、川端康成、白洲正子、岡本かの子、有吉佐和子、芥川龍之介、織田作之助らの奥深い魅力に出会える、好評シリーズ第二弾。
捜査一課への異動から一年。一之瀬は、新たに強行班へ加わった後輩の春山と共に福島へ出張していた。新橋で発生した強盗殺人事件の指名手配犯が県内で確保され、その身柄を引き取るためだ。楽な任務と思われたが、被疑者を乗せ福島駅に向かう途中、護送車が襲撃されー。若手刑事たちの奮闘を描く、書き下ろし警察小説シリーズ。
浪人が殺され、二百両はするという名刀が奪われた。同心の河上惣三郎は、刀剣道楽の数寄者の線を洗い始める。一方、重兵衛の頭の中は、ある男のことで一杯だった。親友と弟の仇・遠藤恒之助。妖剣を使うこの強敵を倒すため、新たな師のもとで“人斬りの剣”の稽古に励む重兵衛だったが…。男たちの友情に胸が熱くなる、人気シリーズ第四弾。
先生、ごめんなさい…。痛みと後悔に苦しむ少女が知らぬ“真実”(「痛み」)。裕福な人妻はなぜホテルで突然命を絶ったのか?(「かたみ」)。天才舞踊家をずっと見つめてきた女の心裏は(「妬み」)。息詰まる駆け引き、鮮やかなどんでん返しー人生の裏も表も知る大人のためのミステリ。入手困難・幻の短篇集の増補復刊。
その美しい速さ、比類なき鋭さ。こんな剣がこの世にあったのかー。突如現れた謎の刺客。ゼンは己の最期さえ覚悟しつつ、最強の敵と相対する。至高の剣を求め続けた若き侍が、旅の末に見出した景色とは?
20××年、日本で設立された初の民間刑務所「AIO第一更生所」。そこに新たに若林耕平ら四人が就職した。しかし、そこでは、刑務所の経営者、更生官、更生者、更には設立に関係した議員たちの欲望が渦巻いていたー。日本の未来を戦慄的に描く名作、待望の文庫化。
「AIO第一更生所」に勤務する若林耕平は、次第にこの日本初・民間刑務所の矛盾点に気づいていく。そんな最中、更生者が更生官を殺害する事件が発生。さらに、同期の仁美にも魔の手が迫る。明らかになる恐るべき更生所の闇の全貌とは!?「もぐら」シリーズの著者が描く近未来アクション&バイオレンス小説。
九州の地頭の子・五郎太は朝鮮出兵に叛逆し、妻子領民を殺された。後に五右衛門を名乗るこの男は追放され、絶望の旅路を彷徨う。マニラで出会った異端の神父、自由を求め舞う女、そして太閤暗殺へ。足裏に刻んだ「仏」の字を踏みにじり、それでも生きる男に訪れた恩寵とは。生の意味を問いかける傑作長篇。