出版社 : 中央公論新社
焼跡にはじまる青春の喪失と解放の記憶。戦後を放浪しつづける著者が、戦争の悲惨な極限に生まれえた非現実の愛とその終りを“8月15日”に集約して描く万人のための、鎮魂の童話集。
男は剣を揮っていた。黒髪は乱れ日に灼けた逞しい長身のあちこちに返り血が飛んでいる。孤立無援の男が今まさに凶刃に倒れようとしたその時、助太刀を申し出たのは十二、三と見える少年であった…。二人の孤独な戦士の邂逅が、一国を、そして大陸全土の運命を変えていくー。
会社生活と文学を両立させてきて四十年。定年を控えた修吾が仄かに惹かれる同世代の従妹は、娘を乳癌で失う苦境に陥っている。その彼の前に現れたのは、夭折した先輩作家の初恋の女性だった…。ドイツ中都市と日本の美しい四季を背景に、自立をめざした二人の女性に導かれるように、主人公は、過去の部屋に入る。一枚のタペストリイのように繊細で甘美な感情を織りなす長篇小説。
女のために盗賊から足を洗おうと、心に誓う男。男が愛したのは、何一つ真実を知らない女。やがてそれが劫火となり、すべてを焼き尽くす運命になるとは知らずに-。最後の稼ぎに、江戸屈指の大店へ襲いかかる男、そして賊ども!その先に待つのは、やはり破滅なのか…。鬼才・富樫倫太郎が放つ大江戸暗黒時代小説。
女の子にもマケズ、ゲバルトにもマケズ、男の子いかに生くべきか。東大入試を中止に追込んだ既成秩序の崩壊と大衆社会化の中で、さまよう若者を爽やかに描き、その文体とともに青春文学の新しい原点となった四部作第一巻。芥川賞受賞作。
清朝で五人の皇后を出すという、栄光に包まれた巨大な一族。その末裔で、大伯母に西太后をいただく著者が、清朝崩壊、中華民国成立、国共分裂、中華人民共和国成立さらに文化大革命を経て現代まで、激動の歴史に翻弄される清朝貴族の流転を描く。うつろう時の背後で奏でられるのは「采桑子」の哀切な調べ…西太后の末裔が描く自伝的小説。魯迅文学賞受賞。
許されぬ恋は雨にうち震え、閉じこめられた遙かな思いにライラックは香る。旧き邸によぎる遠い人の面影。革命と動乱はやむことなく、骨肉のあらそいと生死のあわいに京劇の調べはたゆたう。時をこえてひそやかに息づくおさなき日の想い。十四の愛と十四の宿命は、酔うもやるせなく、醒めるもまたやるせない…清朝貴族の斜陽を描く自伝的小説。魯迅文学賞受賞。
失ってはならない心の宝ものは、ここにある。姿を消した幼なじみを追って謎に満ちた冒険が始まる。C・NOVELSファンタジア『西の善き魔女』3、4巻合本。