出版社 : 光文社
豊かな自然のなかで育ったペーターは、文筆家を目指し都会に出る。友を得、恋もしたが、都会生活の虚しさから異郷を放浪した末、生まれ故郷の老父のもとに戻り…。青春の苦悩、故郷への思いを、孤独な魂を抱えて生きてきた初老の独身男性の半生として書きあげたデビュー作。
西国の大名、山野辺藩から、牡丹堂に菓子の注文が舞い込んだ。小萩をはじめ見世の面々は晴れがましく感じながらも、なにやら落ち着かない日々だ。そんな折、もともと山野辺藩の御用を務めていた老舗の伊勢松坂が、何者かに乗っ取られた。主の松兵衛が相場で大損して、借金の形に取られたというのだが…。菓子の味と人情に心ほっこりする大好評シリーズ第四弾。
高齢の四郎兵衛に代わり、廓を御する吉原会所の八代目頭取を誰が継ぐのか。五丁町名主の話し合いは紛糾し、画策や探り合いが始まった。新春の吉原、次期頭取候補と目される神守幹次郎を狙い、送りこまれる刺客に、張られる罠。危機を覚えた幹次郎は、故郷の豊後岡藩藩邸を訪れるとともに、ある決意を固める。吉原百年の計を思い、幹次郎の打つ、新たな布石とは。
貧乏極まり行き場を失くした小磯は、学生課で寮費千三百円という怪しげな「富穣寮」を紹介される。大学キャンパスの奥の奥。そこでは、変人の寮生たちが奇妙な自給生活を繰り広げていた。しかも部屋には、夜な夜なヨリコさんという「血まみれの女」が現れるという。ヨリコさんの正体を解き明かそうとする小磯は、やがて世界の存続をかけた戦いに巻き込まれていく!
シャルロットは六歳の雌のジャーマンシェパード。警察犬を早くに引退し、二年前、浩輔・真澄夫婦のところへやってきた。ある日、二人が自宅に帰ってみると、リビングが荒らされており、シャルロットがいない! いったい何が起こったのか。(表題作) いたずら好きでちょっと臆病な元警察犬と新米飼い主の周りで起きる様々な“事件”──。心が温かくなる傑作ミステリー。
世間を騒がす児童行方不明事件に、ある大学教授が偶然関わることとなった。場外馬券売り場でいつも見かける男が容疑者に浮上したが、週刊誌の記者に報道とは異なる事実を伝えたからだ。予期せぬ殺意が近付きつつあることも知らず…。(「しりょうのふね」)元新聞記者が未解決事件の真相を小説の形式で追及。見出された光景にあなたは戦慄する。異常と陰惨に満ちた短編集。
依頼があれば、どんな譜面でも、必ず見つけ出すー楽譜探索人。彼は欧州から中国、果ては日本まで…古今東西に散った音楽に秘められる人々の過去まで解き明かす。忘れ去られた旋律が響かせるのは、いつかの罪の記憶か、はたまた美しき愛の残像か。第14回酒飲み書店員大賞受賞『奇譚を売る店』の魂を受け継ぐ、摩訶不思議の連作幻想短編集。
友人の美樹から「一生に一度きり」と頼まれ、朋子はある旅に付き添うことに。お互い看護師、三十代半ば。美樹が旅先で打ち明けた、この先後悔しないための決断とは?(表題作)母親の再婚によって居場所を失った姉弟。二人を引き取ったのは動物園の飼育員のマア子おばさんだった。(「月夜のディナー」)波乱含みの風が問う家族、夫婦、友情の形。爽やかに心揺さぶる七編。
渋谷駅から二駅目のそこそこ大きな街。駅からほど近い路地の奥に、その店「灯火亭」はある。心づくしの季節の料理とそれらに合わせた酒。そして、なにより、さりげない気づかいにあふれた主のユウさんのもてなしが待っている。今夜も人生に迷う人々がやって来てーやがて、大切な何かに気づいてゆく。ちょっぴりほろ苦くて、でも優しい、大人の心を癒す連作集。
バー“森へ抜ける道”の酒のつまみは難事件。パン屋を営む夫婦の妻が何者かに殺されたが、関係者は皆アリバイがあったり、動機がなかったり。一体誰が殺害を!?(表題作)。ウィスキーを片手にしたおじさんたちの他愛ないトークをスルーし、名探偵・桜川東子は宝塚ファン顔負けの知識でもって華麗な推理を繰り広げる。新たな登場人物も加わり、さらに賑わう人気シリーズ第六弾!
西城秀夫は、アフリカのザンビアでハンティングを楽しんでいた。命がけの闘いで次々に大物を斃す彼のもとに、警察庁から緊急連絡が入る。五十億円という報酬額以外、何も知らされないままアテネへと飛ぶ西城。やがて複数の連絡員から細切れに伝えられる密命ーそれは、究極の殺人機械・西城をもってしても、絶望的なまでに困難な任務の数々だった。
鞠の意匠をあしらった「鞠巾着」が人気となり、安定した仕事をもらえるようになった律。涼太との祝言の日取りも決まり、幸せをかみしめながら、職人の仕事も一生続けていこうと決意するのだった。そんな折、拐かし一味の女の似面絵を頼まれた律は、仕上げた絵に何か引っかかるものを感じてー。恋に仕事に一途に生きる女職人の姿を描く、人気シリーズ第五弾。
将軍直属の闇御庭番・菅沼外記は、江戸に流入する危険な抜け荷品の実態と、その流入経路を探る密命を受ける。棒手振りの義助は、魚河岸で仲間が死んだ背後に不審な犯罪の匂いを嗅ぎ、浅草奥山に小屋を張る唐人一座の花形・ホンファに魅了された春風は、怪しい廃寺へと導かれていくー。同様に事件を追う南町奉行の鳥居耀蔵と外記らの、新たな決戦が幕を開ける!
疼く。騒めく。震える。亡き女房と瓜二つの女。五寸釘が首を貫く禍々しい死。欲に呑み込まれていく、商と政。剣呑で厄介な同心・木暮信次郎×刺客の過去をもつ商人・遠野屋清之介。男たちは、どう決着をつけるのか。
トランクルームの密室。白い粉が舞い散る殺人現場。足跡なき泥濘の逃亡者。案内板に磔にされた首のない死体ー。南美希風が、奇跡を偽装した不可能犯罪の数々に挑む!世界法医学交流シンポジウムのために来日したアメリカ人法医学者エリザベス・キッドリッジ。美希風にとって、彼女は恩人の娘にあたる。法医学のための実地検分として、謎めいた事件現場に赴くエリザベスと、ガイド役として付き添う美希風は、神の悪戯としか思えない不可能犯罪を解明できるのか!?
松平家の嫡男にして、尾張国の人質・竹千代は、その才を織田信長に気に入られるも、今川家との人質交換で、三河国へと移される。そこで竹千代は、申楽の師・観世十郎と出会い、駿府館で今川義元に近づく機会を得る。今川家の実権を掌握する太原雪斎に、心の内を疑われながらも、宿敵・義元からは、その眉目秀麗な容姿と才能を、歪んだ形で寵愛されることになる。狂おしいほどの殺意を秘め、舞台は運命の桶狭間の合戦へと向かうのだが…。令和元年、歴史小説の新たな地平を切り拓く傑作誕生!
織田家中において、決して欠かせぬ者という意で「米」にたとえられた、「米五郎左」こと丹羽長秀。その右筆・太田牛一は、長秀の記を秘かに残そうとする。本能寺の変で長秀は、窮地に立たされていた。明智光秀を討つのに最も有利な位置にいながら、軍を動かすことはおろか、行動を共にする信長の息子・信孝が光秀の娘婿・津田信澄を、疑心のあまりに殺害するという暴走を止められなかった。しかし、大乱の中で長秀は、亡き主君への想いと、信じるべき未来を見据え、ある秘策を立てていたのである…。男たちの熱い生き様を描いた、新鋭による戦国秘史!
孤島の児童養護施設に入所している男子中学生の網走一人。ある夜、島の外に出た職員たちが嵐で戻れず、施設内が子どもたちだけになった。網走は、悪質ないじめを繰り返していた剛竜寺の部屋に忍び込む。許せない罪を犯した剛竜寺を、この手で殺すためだ。しかし剛竜寺はすでに殺されていた。その姿を見て震え上がる網走。死体は、片目を抉られて持ち去られ、代わりに金柑が押し込まれていたのだ。その後もまるで人殺し自体を楽しんでいるかのような猟奇殺人が相次ぐ。「この島に恐ろしい殺人鬼がいる」-網走はその正体を推理しながら、自らも殺人計画を遂行していくが…。