出版社 : 創元社
瀬戸内の小さな街のジャズバーに、いろんな人がやって来る。最後には、ついにあの骨董屋のおばあちゃんまで…。ちょっと変わった人たちの新生・再生の物語。精神科医、青木省三による初の小説。
1990年にマガジンハウスから刊行された『〈うさぎ穴〉からの発信』の復刊本。 河合隼雄は、児童文学を自らの生きる指針として読み、こよなく愛した心理臨床家の一人である。 臨床家としてクライエントと向き合う中で、著者は「たましい」との関係にしだいに深く気づかされていったという。目に見えず、ふれることもできない「たましい」の存在を、曇りなく澄んだ「子どもの目」ははっきりととらえることができる。だからこそ児童文学は、著者にとって生きる指針となりえたのである。 「たましいの存在について語るのは、ファンタジーという形がもっとも適している」。生き生きとした子どものまなざしは、豊かな感性の輝きを見いだすだけでなく、ときには身近な人の心の中に、言葉にならない深い悲しみをも読み取る。 1990年にマガジンハウス社から刊行された『〈うさぎ穴〉からの発信』の復刊本。子どものこころに温かく寄り添う、繊細で緻密な臨床家としての視点が、カニグズバーグをはじめ、エンデやケストナー、ギャリコ、また宮澤賢治や今江祥智、長新太、佐野洋子と、ファンタジーから絵本までの多彩な作品を、説得力ある言葉で読み解いてゆく。 「児童文学は、子どものためだけのものではなく、われわれが生きてゆく上で必要な深い示唆を多く含む。だから、若者や大人たちにこそ読んでほしいのだ」と言う著者に従って、子どもが主人公の物語を、いま一度読み直してみてはどうだろうか。 まえがき 1 読むこと・書くこと 「うさぎ穴」の意味するもの 児童文学の中の「もう一人の私」 2 アイデンティティの多層性ーーカニグズバーグの作品から 少年の内界の旅ーー『さすらいのジェニー』を読んで 『はてしない物語』の内なる世界 少女の内界のドラマーーアリスン・アトリー『時の旅人』 『グリム童話集』を読む 瀕死体験と銀河鉄道 宮澤賢治の死生観 『ぼんぼん』とトリックスターー今江祥智『ぼんぼん』を読んで /ファンタジーの素晴らしさーー今江祥智『海賊の歌がきこえる』 大人になることの困難さーー上野瞭『さらば、おやじどの』 長新太の不可解/現実の多層性ーー絵本『イソポカムイ』を読む 3 児童文学のすすめ 小学四年生 子どもの知恵に学ぶ 観覧車 子どもとファンタジー あとがき