出版社 : 小学館
戦後間もない時代の若者たちを描いた“自伝的青春文学”旧制中学から新制高校へと移行する時代、高校2年生の倉沢明史は、通学途中に出会った中学3年生の美少女・棗に惹かれていく。文学に憧れ、政治にも熱い関心を寄せる明史だが、幼なじみの慶子との接吻もあって心は千々に乱れる。武蔵野の美しい四季を背景に、物資は満足にないけれど心豊かに生きる若者たちの甘く、ほろ苦い思春期の恋愛を叙情的に描いた青春小説の傑作。“内向の世代”を代表する著者が、今回あとがきを特別寄稿。
勤王と佐幕の間の謀略に翻弄される志士たちの悲劇から、冷酷な政治と熱い志の葛藤を描いた「地獄の門」。長州の志士を斬った嫌疑がかかってしまった鞍馬天狗は、これは仕掛けられた罠では…と疑念を抱く。新選組と見廻組も絡んで二転三転する展開の末、隠れていた裏切り者は意外な人物だった「宗十郎頭巾」。名作時代小説「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第二弾。解説も鶴見俊輔が特別寄稿。
白刃閃き任侠吼え、血花咲き散り舞い狂う! うだつが上がらない中年男、九条尽ーーツクシは、勤め先の従業員出入り口から、突如として異世界カントレイアへと迷い込んでしまう。言葉すら通じないまま、異界の街並みを彷徨い歩くうち、瀕死の老剣士と出会い、ひと振りの刀を託された。それは恐るべき業を宿す魔刀だった。 老剣士の最期を看取った直後、ツクシと同じく異世界カントレイアへと迷い込んだ日本人、八多羅悠里との邂逅によって、ツクシは異世界の情報を得ることに。そして、悠里が所属する冒険者団「アルバトロス曲馬団」への勧誘を受けるツクシだったが、それを拒絶し、断固として日本へと帰ることを主張する。 「自分の意思で決めていないものを押しつけられて、我慢をするような生き方を、俺はこれまで一度もしてきてねェ」 「帰った先で何も待っていなくても、俺は必ず日本へ帰る」 頑固一徹、男の矜持。己の意地を通すべく、ツクシは日本への帰還の手掛かりを求め、“ネスト”と呼ばれる『異形の巣』に挑む!! 酒と女にだらしないロクでなし剣士による血みどろダークファンタジー!!
若い男女とその両親たちの“夫婦交換遊戯” 大学で知り合い愛し合うようになった一組の若い男女。だが、期せずして自分たちの両親が、夫婦交換遊戯を長年にわたって続けてきたことに気づいてしまう。 結婚を夢見る男女と、一方で両親たちが繰り広げる艶麗な恋愛譚を通じ、生涯“物語文学”を追求し続けた倉橋由美子が、古代神話、源氏物語等の系譜を織り込んだ意欲作。倉橋文学後期を代表する「桂子さんシリーズ」の第一弾である。解説は倉橋文学研究の第一人者である古屋美登里氏。
1964年の第51回芥川賞受賞作で、当時、一大センセーションを巻き起こした『されどわれらが日々-』。その続きともいえる本作では、その時代の新左翼運動にかかわった血気盛んな青年男女の機微を、ダンスパーティーの現金紛失事件とからめてミステリー仕立てで描いている。登場人物がそれぞれの視点で世界を見つめ、それが一つに収斂されることなく多様性に開かれたまま放置されている点は、『されどわれらが日々-』とは対称的な位置づけにある作品といえる。
角兵衛獅子の少年・杉作を囮に、鞍馬天狗を取り囲んだ新選組。隊長・近藤勇も新手をひきつれそこに駈けつける。大坂城代あての密書を奪った鞍馬天狗だったが、謀られて地下の水牢に閉じこめられる。恩人を助けようと城へ忍びこんだ杉作少年ももはや袋のねずみー。幕末の京を舞台に、入り乱れて闘う勤皇の志士と新選組。時代小説の名作「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第一弾。
めぐみとかすみは新制中学一年のクラスメート。赤の他人ながら瓜二つ、誕生日も同じとあって親しくなっていく。鵠沼での夏休み、上級生・容子への憧れや嫉妬。微妙にすれ違っていく友情の行方は?日本人初のノーベル文学賞受賞作家・川端康成による幻の少女小説。昭和二十九年から月刊誌『女学生の友』に連載された貴重な秀作が蘇ります。玉井徳太郎による連載当時のイラストも多数収録。また川端が戦前に『セウガク一年生』に寄稿した短編「樅ノ木ノ話」も当時の誌面のまま収載しています。解説は娘婿の川端香男里氏と、生前の著者と親交のあった瀬戸内寂聴氏。
みずみずしい感性が光る永遠の恋愛小説集 「ひとつ例にとると、『傘を探す』という作品。僕はこの、失われた雨傘を探して夜の街を、人から人へとめぐり歩くストーリーをいまでも面白いと思います。 もし若い佐藤正午がこれを書いていなければ、いま僕の手で新たに挑戦してみたいくらいです。 短編集『夏の情婦』を読み返して、この五編がいずれも、書くべきときに書かれた小説である、と三十年後のいま思える、それが僕の率直な感想です」 (本書「三十年後のあとがき」より) 「鳩の撃退法」、「月の満ち欠け」と、次々に小説読みたちを唸らせる傑作を発表し続けている著者が、「永遠の1/2」でのデビュー直後に執筆した恋愛小説五編を収録。 「傘を探す」の他には、小説賞を受賞した三十一歳のぼくがネクタイを介して大学生の自分と年上女性との恋愛を追憶する「二十歳」、男と女のフラジャイルな関係を気だるい夏の残暑のなかに再現してみせた「夏の情婦」など。 いずれも恋愛をテーマにしているものの、その語り口は変幻自在で、すでに「小説巧者」の片鱗をうかがわせる作品ばかりだ。 解説は著者の長年の熱烈な読者である中江有里さん(女優・作家)が執筆している。 【編集担当からのおすすめ情報】 佐藤正午氏ほど同業者や編集者に隠れファンが多い作家を知りません。 それは彼がずっと小説に対して技巧的な挑戦を続けてきたからに他なりません。 そんな佐藤正午氏と小説に関して話すときいつも話題に上っていたのがこの小説集です。 寡作な作家であるため、近年あまり短編小説を発表する機会は少なくなりましたが、実は小説に対するテクニカルな試みは、この初期短編の頃から続けられています。 そして、この小説集の再刊行は、佐藤正午氏のたっての希望でもありました。 後世に残る永遠のスタンダードともいうべきこの一冊、ぜひご一読ください。
物語の住人の”意思”が、世界を変えてゆく クリエイターになることを夢見る高校2年生の水篠颯太の目の前に、ある日突然、アニメ『精霊機想曲フォーゲルシュバリエ』のキャラクター、セレジア・ユピティリアと、軍服を着た謎の少女が現れる。両者の戦いに巻き込まれた颯太は、PCゲーム『追憶のアヴァルケン』のキャラクター、メテオラ・エスターライヒが現れたことにより、事なきを得る。 「自分たちの物語を作った創造主に会いたい」というセレジアたちの要望を受け、原作者とコンタクトをとる颯太。次々に新しいキャラクターが”現界”する中、メテオラは「物語世界の住人」=被造物が現実に干渉し続けることで、現実世界が滅ぶ「大崩潰」が起きるという仮説を立てる。 「軍服の姫君」とは一体、何者なのか。そして、創造主が愛した人々を守るため、颯太たちはこの世界が滅ぶのを阻止することができるのかーー!? 『BLACK LAGOON』の広江礼威と『Fate/Zero』『アルドノア・ゼロ』のあおきえいがタッグを組んだ、大人気オリジナルTVアニメーションを完全ノベライズ! 【編集担当からのおすすめ情報】 アニメーションカットや原画を多数収録した、スペシャルカラー口絵16ページ付きです。
9月1日公開映画原作本! 突如転校してきた森山燐は不治の病を患っていた。 俺は彼女と共に、ライブを演り、最高の時間を共に過ごし…そして、俺は燐を失った。 俺に残されたのは、取り返しのつかない、たったひとつの後悔ー決して伝えてはいけなかった言葉。 俺があんなことを言いさえしなければ、きっと燐は最後まで笑顔でいられたのに…。 二度めの夏。タイムリープ。 俺はもう一度燐と出会う。 ひと夏がくれたこの奇跡のなかで、俺は自分に嘘をつこう。 彼女の短い一生が、ずっと笑顔でありますように…。 映画化記念・書き下ろし短編「はじめての夏、一度めの花火」収録!! 本作の主役には数多くの作品に引っ張りだこの若手実力派・村上虹郎。 ヒロイン役にはパワフルなライブパフォーマンスで唯一無二の存在感を放つ吉田円佳(「たんこぶちん」Vo&Gt)。 その他、AKB48の次期エース候補の呼び声も高い加藤玲奈。 モデル・女優と幅広く活躍する金城茉奈。 映画・テレビドラマに出演作が目白押しの山田裕貴。 と、フレッシュなキャストが集結! 彼らの教師役に本上まなみ、そしてメンバーが通う楽器店の店主役として菊池亜希子がスクリーンを彩る。 二度と来ないひと夏を彩る、青春ストーリーの決定版!
ワケあって、田舎暮らし、はじまる。 苦戦した就活でどうにか潜り込んだ先はブラック企業。働き始めて一ヶ月で辞職した。しかし、再就職のアテもなければ蓄えもない。そんな矢先、疎遠にしていた父親の訃報が飛び込んできた。孤独死したのか。どんな生活を送っていたのか。仕事はしていたのか。友人はいたのか。父について何も知らないことに愕然としながらも、文哉は南房総にある父の終の棲家で、遺品整理を進めていく。はじめての海辺の町での暮らし、東京とは違った時間の流れを生きるうちに、文哉の価値観に変化が訪れる。そして文哉は、積極的に父の足跡をたどりはじめた。「あなたにとって、幸せとは何ですか?」と穏やかに問いかけてくる、著者新境地の感動作! 【編集担当からのおすすめ情報】 千葉県は南房総、館山を舞台にした小説です。 解説は、丸善津田沼店の沢田史郎さんという千葉つながりです。 もちろん、作家・編集者とも千葉出身です。
2006年12月1日、東京で3人の人物が殺され、未解決となっている「12月1日連続殺人事件」。大学生のメイは、この事件を追うテレビ番組の制作会社でアルバイトをすることになる。無関係にみえる3人の被害者の共通点が“祝言島”だった。東京オリンピック前夜の1964年、小笠原諸島にある「祝言島」の火山が噴火し、生き残った島民は青山のアパートに避難した。しかし後年、祝言島は“なかったこと”にされ、ネット上でも都市伝説に。一方で、祝言島を撮ったドキュメンタリー映画が存在し、ノーカット版には恐ろしい映像が含まれていた。
史上最恐のミイラが襲いくる! トム・クルーズ主演、今夏最恐のホラーを独占ノベライズ! ユニバーサルの名クラシック作品「ミイラ再生」をリブートした作品。 米軍関係者のニック・モートン(トム・クルーズ)は、中東空爆後、偶然にも古代エジプト王女・アマネットの墓を発見する。 だがそれは悪の化身となった王女を生き埋めにするための 牢獄だった。5000年もの間封印されていたその棺を運び出したニックだったが、空輸中におぞましい事故が起きて墜落、同行する元恋人のジェニーだけが奇跡的に脱出に成功する。数日後、死んだはずのニックが突然目を覚まし……。 本作は、ユニバーサル・ピクチャーズがかつて手がけたモンスター映画を次世代に向けてリメイクするという「ダーク・ユニバース」企画の第1弾となる。 今後も続く、「フランケンシュタインの花嫁」、「透明人間」などにも要注目だ。
はぐれ者には福がある? 冒険者が集う街・迷宮都市レイロア。その立地ゆえに、この街には人や物の流れが絶えない。街の冒険者ギルドを訪れた青年・ノエル。てっきり僧侶になると思っていたところ、なんの偶然か上級職の司祭になってしまう。司祭という天職を与えられた喜びもつかの間、その上級職ゆえの成長速度の遅さに愕然とする。おかげでまともに固定パーティを組むこともできず、地道にスポット参戦を主とする「便利屋」稼業を続けていた。 しかし、そんなコツコツと冒険を続ける彼のまわりには、徐々に個性豊かな面々が集まり始める。スケルトンのジャック、ゴーストのルーシー、〈黒猫堂〉のリオやかつての仲間のミリィ。 たとえ一度きりの参加となるパーティでさえも、ノエルにとってはかけがえのないつながりで、その縁がまた別の縁を結んでいく。ノエルは今日もギルドへ赴き、参戦させてくれるパーティを探すのであった……。 「小説家になろう」にて累計1300万PV突破! 日間・週間・月間ランキングで1位を獲得した、超人気の冒険ファンタジー! はぐれ司祭と愉快な仲間達が繰り広げる、せちがらくもどこか楽しい異世界冒険活劇、はじまり、はじまり!
市川拓司、4年ぶりの書き下ろし純愛小説! 市川拓司、4年ぶりの書き下ろし! 会えなくなるとわかっていても、ぼくはきみを守りたかった‥‥。 その日、映画の脚本家になることを夢見ていたぼく(佐々時郎/ジロ)は、駅前通りの本屋さんで『ハリウッドで脚本家になるための近道マップ』という名前の翻訳本を立ち読みしていた。 600ページもある高価な本だったから、夏休みに入った最初の日から毎日店に通って、少しずつ全ページを読破する計画だった。 その日も本に没頭していると、急に肩を叩かれ、ぼくは飛び上がった。 (本屋の親父さんについに見つかった!) 恐る恐る振り返ると、そこに彼女がいた。 南川桃(モモ)。 同じクラスにいたけど、一度も口をきいたことがない女の子。 女子のヒエラルキーでも頂点にいるのが当たり前のようなその子が、そのあとぼくに頼んできたのは、伝記を書くことだった。 「伝記? 誰の?」 「わたしの」と、彼女は言った。 『いま、会いにゆきます』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『そのときは彼によろしく』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』-- 累計258万部に達する市川拓司×小学館の大ベストセラー恋愛小説群に加わる、新たな傑作の登場です!
退廃的な田舎町で過ごした“青年のひと夏” 誇り高い姉と、快活な妹ーーいま、この2人の女性の前に横たわっているのは、一人の青年の棺だった。 美しい姉妹に愛されていながら、彼はなぜこの世を去らねばならなかったのか? 卒業論文を書くために「廃墟のような寂しさのある、ひっそりした田舎の町」にやってきた大学生の「僕」は、地所の夫婦、妻の妹の三角関係に巻き込まれる。 古き日本の風情を残しながらも、どこか享楽的な田舎町での青年のひと夏の経験から、人の心をよぎる孤独と悔恨の影を清冽な筆致で描いた表題作「廃市」は、後に大林宣彦監督によって映画化された。ほかに「飛ぶ男」「樹」「風花」「退屈な少年」「沼」の全6編を併録。
海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船“大いな眞晝”号に乗り込んで船出をする。「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
ポーランド北部オルシュティン市の工事現場で、白骨死体が見つかった。検察官テオドル・シャツキは、現場が病院に続く地下の防空壕だったことから、戦時中のドイツ人の遺体と考えていた。ところが検死の結果、遺体の男は十日前には生きていたことが判明、この短期間で白骨化することはあり得ないという。さらに調査を続けると、複数の人間の骨が入り交じっていた。やがて、この男は生きたまま大量の配水管洗浄剤で溶かされて死んだことがわかるが…。こんなミステリーがあったのかー「ポーランドのルメートル」が描く衝撃の傑作クライムノベルが日本初上陸!