出版社 : 影書房
日本の植民地支配下での幼年時代。何度も支配が入れ替わる朝鮮戦争下のソウルで生き抜いた苦闘の日々。“家族”との葛藤、母親との確執、そして大人の女性へー。
ヤマトゥでの出稼ぎ先で、主人公は偶然、沖縄戦のさなかにスパイ容疑で父を斬殺した元日本軍部隊長を見つける。何事もなかったように幸福に暮らすかに見えるこの老人に主人公がとった行動とは(「神ウナギ」)。護郷隊に入り米軍支配下にある村内の偵察を命じられた少年は、母から得た「米軍への協力者」の情報を上官に伝えるが……(「斥候」)。 戦争がもたらす傷は、何十年たっても記憶の底からよみがえり、安定を取り戻したかに見える戦後の暮らしに暗い影を差しこんでいくーー。 日本の“捨て石”にされ激しい地上戦が展開された沖縄では、住民の4人に1人が犠牲となった。 鉄の暴風、差別、間諜(スパイ)、虐殺、眼裏に焼き付いた記憶…… 戦争を生きのびた人びとの変えられてしまった人生。 芥川賞受賞から26年。現実と対峙しながら“沖縄戦”をライトモチーフに書き続ける作家の10年ぶりの短篇集。 沖縄戦の記憶をめぐる5つの物語。 〈収録作品〉 ・魂魄の道 ・露 ・神ウナギ ・闘魚(とーぃゆー) ・斥候 ・魂魄の道 ・露 ・神ウナギ ・闘魚(とーぃゆー) ・斥候
戦端は日本軍の「朝鮮王宮占領」によって開かれた。「文明と野蛮の戦争」とされた日清戦争。はたして「野蛮」だったのはどちらか。日本・清・朝鮮の三者の視点から近代日本の方向を決定づけた「日清戦争」を多角的に描き、最新の研究成果をふまえつつその本質に迫る1500枚に及ぶ大作。
「そして全て死に果てればいい。」-- 基地の島に連なる憎しみと暴力。 それはいつか奴らに向かうだろう。 その姿を目にできれば全てが変わるという幻の虹の鳥を求め、夜の森へ疾走する二人。 鋭い鳥の声が今、オキナワの闇を引き裂くーー 救い無き現実の極限を描き衝撃を与えた傑作長篇。
米軍に占領された沖縄の小さな島で、事件は起こった。 少年は独り復讐に立ち上がるーー 悲しみ・憎悪・羞恥・罪悪感…… 戦争で刻まれた記憶が、60年の時を超えて交錯し、せめぎあい、響きあう。 読む者の魂を深く揺さぶる連作小説。 アメリカ・カナダでも英訳出版された著者の代表的長篇。
「死ぬ日まで空を仰ぎ 一点の恥辱(はじ)なきことをーー」 清冽至純な詩篇を残し、戦争終結の半年前に日本の獄中にわずか27年の生涯を閉じた尹東柱。時局がら生前は1冊の詩集を出すこともかなわなかったが、関係者によって守りぬかれたハングル書きの詩稿は戦後になって出版され、韓国の国民的詩人となった。近年では日本でも毎年追悼行事が開かれるなど、日本人にも広く愛され親しまれている。 本書では、尹東柱の日本とのかかわりを中心に、日本留学中に治安維持法違反で逮捕・投獄され、1945年2月に“謎の獄死”をとげるまでの詩人の足跡を実証的に辿り、いくつかの知られざる事実を明らかにしつつ、また遺稿や蔵書を読み解き新たな視点からの作品解釈も試みながら、詩人の孤高の詩精神に改めて焦点を当て、その人、その文学の核心に迫る。 著者はNHKディレクター時代の1995年、「NHKスペシャル」で尹東柱のドキュメンタリー番組『空と風と星と詩ーー尹東柱・日本統治下の青春と死』を手がけ、以来二十余年にわたり尹東柱を独自に追い続けてきた。本書はその長年にわたる調査・研究の集大成。 はじめに 第1章 『病院』から『空と風と星と詩』へーー詩人誕生の秘蹟にあずかった日本語のメモ 第2章 「半韓」詩人がつづった「我が友」尹東柱(前編)--尹東柱と交際した日本詩人・上本正夫 第3章 「半韓」詩人がつづった「我が友」尹東柱(後編)--モダニズムとの邂逅と乖離 第4章 同志社の尹東柱。京都で何があったのか?--発見された生前最後の写真を手がかりに 第5章 福岡刑務所、最後の日々(前篇)--疑惑の死の真相を追って 第6章 福岡刑務所、最後の日々(後編)--永遠なる生命の詩人 第7章 そして詩と、本が残ったーー所蔵日本語書籍から見る尹東柱の詩精神 尹東柱略年譜 あとがき