出版社 : 文藝春秋
美貌と気立てを見込まれ、江戸で指折りの献残屋に嫁いで十二年。夫が外で生ませた子を育てながらも懸命に店を守るおしのは、ある日またも夫の裏切りを知り、店を出る決意をするが…時の将軍の寵姫・お琴の方との交流、女主人としての迷いと決断を経て成長する女性を鮮やかに描く、文庫オリジナル時代小説。
日本橋本石町にある旅篭「長崎屋」で、腹を竹槍で無残に抉られた酉右衛門の死体が見つかった。隣りには、江戸の市中に時刻を知らせる「時の鐘」があり、その鐘撞き堂で、鐘を撞いてきた撞き師の孫六が死んだ酉右衛門を恨んでいたと分かり…。南町奉行根岸肥前が、江戸の怪異を解き明かす「耳袋秘帖」殺人事件シリーズ第十三弾。書き下ろし時代小説。
大学教授のサイトがきっかけで発生した「ビニール袋集団自殺」事件を、やり手キャップの市川と担当する社会部の新聞記者の長妻は、たびたび他社に出し抜かれ、追い詰められていくが、やがて独自の取材で起死回生のスクープを放つ…。生き馬の目を抜く報道の最前線を活写した怒涛のエンターテインメント長編。
高松の親戚にひきとられたきょうだいの一人が人形浄瑠璃に魅せられる。塩祭の夜にきょうだいたちに何かが起こる(「塩」)。列車の旅をする英語教師や海沿いの巡礼路をゆく巡礼者、渦潮に魅せられたトラック運転手や逃げ出した藍と追う藍師…。四国を舞台に現実と異世界とが交差する、五感に響く物語世界。
川に大量の油が流れ出た!大打撃を受けた漁師たちは、日本橋にある町年寄・樽屋の屋敷に押しかけた。まずは被害を抑えようと率先して走り回る三四郎だったが、今度は油問屋の蔵に火が放たれー将軍にも謁見できる町人トップの権力と、影の集団・百眼の情報網を駆使して江戸の事件を未然に防ぐ三四郎シリーズ、男前な第六弾。書き下ろし時代小説。
世界的大ヒット! 『BUTTER』で話題の著者、衝撃のデビュー作 映画化決定!! 2026年公開予定 主演:當間あみ、中島セナ (内容紹介) 入学式の日。中学からの内部進学者の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマンだった。希代子は風変わりな朱里が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、ある変化が訪れる。 フォーゲットミー、ノットブルー 甘夏 ふたりでいるのに無言で読書 オイスターベイビー 解説 瀧井朝世
ほぼ一年に一度、空から人が降ってくる町、ファウルズ。単調で退屈な、この小さな町に流れ着き、ユニフォームとバットを身につけレスキュー・チームの一員となった男の物語。奇想天外にして自由自在、文學界新人賞受賞の表題作に、知の迷宮をさまようメタフィクション小説「つぎの著者につづく」を併録。
野球賭博絡みのトラブルで失踪した父親から少年に葉書が届く。「野球をやってるか」。野球好きだった父親の願いをきくべきか、野球を嫌悪する母親に従うべきか。おりしも1986年、日本シリーズでは、大逆転劇が起ころうとしていた。はたして少年の身にも奇跡は訪れるのか。芥川賞作家の描く父と子の迫真の物語。
真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で、静かに再会した男と女の凄烈な愛を描いた表題作、酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を牧草匂う交歓の裏に映し出した、オール讀物新人賞受賞作「雪虫」ほか、珠玉の全六編を収録。北の大地に生きる人々の哀歓を圧倒的な迫力で描き出した、著者渾身のデビュー作品集。
2016年1月、18歳のジン・カイザワは、南極海の氷山曳航を計画するシンディバード号にオーストラリアから密航する。乗船を許されたジンは厨房で働く一方、クルーや研究者たちのために船内新聞をつくることに。多民族・多宗教の船内で、ジンはアイヌの血という自らのルーツを強く意識する。女性研究者アイリーンとともに、間近で見る氷山に畏怖の念を覚えるジン。真の大人になるための通過儀礼を経て、プロジェクトに反対する信仰集団と向き合う。このプロジェクトの行方は…。21世紀の冒険小説。
小学五年生のノブオは、誰もが一目おく野球少年。詩人である父は行方不明、母は働くことにも子どもにも無関心という悲惨な状況のなか、ひたすら長嶋に憧れ野球に打ち込みます。友との別れや理不尽に負った怪我、出生の秘密やほろ苦い初恋も、「長嶋」を心の支えに、ぜんぶぜんぶ乗り切るのです。
鎌倉幕府を開いた源頼朝、そして、日本史上の稀代の英雄、源義経の父にして、太政大臣・平清盛の最大のライバルと目された男、源義朝。平家に比肩すべく、関東を源氏の拠点として作り上げ、頼朝再起の基礎を作り、保元の乱では、敵方についた父と弟たちを殺し、源氏の棟梁に君臨した悲運の御曹司の波瀾の生涯。
美しい容姿からは想像もつかないほどガサツな叔母の意外な秘密についての表題作、雨の日だけ他人の心の声が聞こえる少女を描く「雨つぶ通信」、西日暮里の奇妙な中華料理屋を巡る奇譚「カンカン軒怪異譚」など、『花まんま』『かたみ歌』の著者が、昭和の東京下町を舞台に紡ぐ「赦し」と「再生」の七つの物語。
赤坂で発生した殺人事件の特捜本部に、警視庁公安部でロシア事案を担当する倉島が呼ばれた。被害者は右翼団体に所属する男だ。二日後、今度は暴力団構成員が殺された。2つの事件に共通する鮮やかな手口から、倉島はプロの殺人者の存在を感じる。鍵はロシア、倉島は見えない敵に挑む。公安捜査官の活躍を描くシリーズ第3弾。
「イリエワニ一頭を頂戴しました。怪盗ソロモン」凶暴なクロコダイルをどうやって?続いて今度はミニブタが盗まれた。楓ヶ丘動物園の飼育員である僕(桃本)は解決に乗り出す。獣医の鴇先生や動物園のアイドル七森さん、ミステリ好きの変人・服部君など、動物よりもさらに個性豊かなメンバーが活躍する愉快な動物園ミステリ。
無実の死刑囚を救い出すために与えられた期限は三ヶ月、報酬は一千万円だった。不可能とも思える仕事を引き受けた二人の男に待ち受けていた運命とはー手に汗握る展開と、胸を打つ驚愕の結末。現代社会の罪と罰を問い、圧倒的なサスペンスで読書界を震撼させた江戸川乱歩賞受賞作。『十年ぶりの後書き』収録。
次点から繰上当選した参議院議員の周辺で、次々と関係者が死んでいく。ある男は右腕が川に浮かび、ある男は不自然な交通事故にー。警視庁公安部警部・青山望の前に現れたのは、選挙ブローカー、刀匠、中国人鍼灸師、暴力団…。彼らが大きな権力の一点に結び付く。徹底的にリアルさにこだわった文庫書き下ろしシリーズ第二弾。
六世紀の中国、南北朝時代と呼ばれる動乱の世。北斉は無能な皇帝の乱脈を極めた統治のもと、西に北周、南に陳、北に突厥と三方を強敵に囲まれていた。あまりの美貌ゆえに仮面をつけて戦場にたったと言われる北斉の皇族、蘭陵王・高長恭は智勇兼備、不敗の名将であり傾きかけた国を必死でささえていた。