出版社 : 早川書房
自殺した学生とのゲイ関係などまったくない-ロビンソン教授は断言した。教授はゲイ関係の噂を立てられ、終身在職権を否決されたので調査を依頼してきたのだ。恩人の息子だからよろしく、というホークの紹介とあれば断わるわけにはいかない。スペンサーは黙って自殺事件の調査をはじめる。自殺した学生は、他人のゲイ関係を暴露するミニコミ紙を発行していたいかがわしい男だった。さらに、彼の銀行口座には法外な金が残されていた。犯罪の臭いを嗅ぎつけたスペンサーは、自殺現場を見て不審の念をいっそう強めるが…。ホークのみか、前後してスーザンも事件を持ち込んできた。女友達のKC・ロスが正体不明のストーカーに悩まされているという。こちらも気軽に引き受けたスペンサーは、ロスの元夫や元恋人を中心に聞き込みを開始する。ところが、孤独な境遇のロスはスペンサーに急接近し、ついには彼女自身がスペンサーに対しストーカー行為を働いてきた!息もつかせぬ展開で魅了する、人気シリーズ最新作。
観光地として賑わう、古代遺跡のローマ浴場の地下室で、白骨化した人間の手が発見された。一報を聞きつけた警視ピーター・ダイヤモンドは、骨の身元を特定すべく捜査を開始する。だが、くだんの地下室の番地に、『フランケンシュタイン』の作者メアリ・シェリーの自宅がかつてあったという事実が浮上し、捜査は混乱に陥った。この偶然の一致にマスコミが飛びつき、「人骨は怪物の犠牲者なのか?」などとバースの町に流言飛語が飛びかう実態となってしまったのだ。時同じくして、女性の骨董商が他殺とおぼしき水死体となって発見された。事件担当の主任警部ウィグフルは、容疑者の尾行を単独で開始するが、何者かに殴打され、生死の境をさまよう意識不明の重体に!同僚に代わってこの事件の捜査も担うことになったダイヤモンドは骨董商の身辺を探り、幻想的な画風の絵画が殺人事件当夜に取り引きされていたことを突きとめる。しかも、その不気味な絵のモチーフは『フランケンシュタイン』の一場面を意味していた…。不可解な繋がりをみせる二つの事件から、ダイヤモンドが辿りついた犯人像とは?ゴシック的な香り漂う怪奇な事件に、ピーター・ダイヤモンド警視が熱き刑事魂で立ち向かうシリーズ第六弾。
第一部-陪審。ある殺人事件を裁くために選ばれた十二人の陪審員。彼らのなかには誰にも知られてはいけない秘密を持つ者もいる。そんな陪審員たちの職業や経歴、思想などが浮き彫りにされ、各々が短篇小説を読むような面白さとなっている。第二部-事件。莫大な遺産を相続した十一歳の少年と後見人の叔母。孤独な少年が唯一愛する一匹の兎をめぐり、二人は静かなる闘いを繰り広げ、やがて異様きわまる殺人事件へと…第三部-審理と評決。証言ごとに揺れ動く陪審員の心の動きをメーターの針で図示。様々な思惑を秘めた十二人の評決は。
ひとつ頼みがある。力いっぱい俺を殴ってくれータイラーの一言がすべての始まりだった。映写技師の仕事をする彼との出会いは、平凡な会社員として暮らしてきたぼくの生活を一変させた。週末の夜、密かに素手の格闘を楽しむうち、二人で作ったファイト・クラブはみるみるその規模を拡大し、過激な暴力は果てしなくエスカレートしてゆく。その行く手に待ち受けていたものは?熱い注目を浴びる、全米大ヒット映画の原作。
ジャーナリズム学科の女学生マギーが課題として選んだのは、過去の未解決事件三件の再調査レポート。だが調査に着手した矢先、彼女は他殺死体で発見される。死体が放置されていたのは「恋人たちの小道」、1988年の殺人事件の現場だったーマギーを指導していたヘンリー・Oは独自の捜査を開始する。過去と現在、交錯する謎の深淵に潜む衝撃の新事実とは。
わたしは耳が不自由。だけど言葉を話せるし、読唇術などを駆使して女性新聞記者として多忙な毎日を送っている。そんなわたしのもとに前町長の未亡人が訪れ、行方不明の妹を捜す広告を依頼してきた。だがその夜、広告は突然キャンセル、翌朝、彼女は死体で発見された。保安官は自殺と見るが、死体のポーズが気になるわたしは密かに調査を始めるー研ぎ澄まされた感性で事件を追うコナーの活躍を描くマカヴィティ賞受賞作
わたしの心の闇は23段階あり、気分が沈むにつれて深まっていく。わたしは今どの段階にいるのか?保守的な警察署内で、偏見と闘うエクアドル人の女性警官フィル。ある夜、製薬会社の工場で劇薬の漏洩事故が起き、現場に急行した彼女は謎の男を見かけた。数日後男は銃の暴発で死亡するが、彼と製薬会社との対立を知ったフィルは、潜入捜査を決意する!気骨で孤独に立ち向かうフィルの姿を描く、魂を震わすハードボイルド。
ビリーには誰もが惚れこんだものさ-心やさしく、筆まめな男、気のきいたおしゃべりで周囲を楽しませる陽気な男。第二次世界大戦から帰ってきたビリーといとこのデニスは、ロングアイランドの海辺で、アイルランドからやって来ていた娘エヴァとその姉メアリに出会い、恋に落ちた。夏が終わり、きっと戻ってくると約束してエヴァは故郷へ帰っていった。ビリーは連日、エヴァに宛てた手紙を書き、もどってくるときの資金まで工面して送りつづけた。だがある日、エヴァがアイルランドで亡くなったとの知らせが…。それ以来、ビリーはあの弾けるような輝きをすっかり失ってしまい、デニスや周囲の者は心を痛めた。後年、アイルランドを訪れたビリーがそこで見たものとは…。ひとりの女性をひたむきに想いつづけた男と、彼をとりまく人々の人生を通し、生への限りない希望を謳いあげる珠玉の物語。全米図書賞受賞作。
32世紀、“連邦(ヘゲモニー)”の“崩壊(フォール)”から約300年後、人類星域はふたたびひとつにまとめられ、カトリック教会を主体とするパクスの支配下にあった。辺境の惑星ハイペリオンの若者ロール・エンディミオンは、死刑判決を受けたものの謎の老人に助けられ、驚くべき依頼をされる。もうすぐ“時間の墓標”から出てくる少女アイネイアーをパクスの手から救いだし、少女が宇宙の命運を決める“教える者”となるまでいっしょに旅をしてくれというのだ。さらには、史上最強の権力を誇るパクスを滅ぼし、教会を権力の座からおいやってくれという。できるかどうかわからないものの、頼みを引き受けたエンディミオンは、少女アイネイアーとアンドロイドのベティックとともに星から星へと宇宙をめぐり、ついに惑星・地球にたどりついた。そして、さらなる冒険へと旅立とうとしていた。いっぽう、新教皇ウルバヌス16世ひきいるパクスは、大天使型戦艦の機動艦隊を非キリスト教徒であるアウスター討伐に送りだす。さらに“テクノコア”の恐るべき手先たちがアイネイアー追跡を再開したのだが…ヒューゴー賞をはじめ、英国SF協会賞など数々の賞に輝く、壮大な未来叙事詩ハイペリオン・シリーズ、待望の完結篇。ローカス賞受賞。
二日酔いの頭を抱えたモーリーンが目の端でとらえた鮮やかな赤色。彼女の自宅の居間には、幾重にも巻きつけられた紐が皮膚にくいこみ、頭がごろりと落ちてきそうなほど深く切りつけられた喉元から、身体中の血を噴き出して息絶えた恋人の無残な姿があった…過去の精神病歴が災いし、警察や家族から殺人犯と目された彼女は、嫌疑を晴らすため自ら辛い過去の記憶を手繰り寄せる。陰鬱な秋空のグラスゴーを舞台に、新進気鋭作家の放った衝撃のデビュー作。英国推理作家協会賞最優秀処女長篇賞受賞作。
痴呆化し、盗賊と化した人類が掠奪と破壊をつくし、荒廃したテラニア。アーロンは免疫者だったがゆえに、痴呆者からなる盗賊団の頭目となった。だがかれは心に直接呼びかける声に操られており、その声の命ずるまま破壊をくりひろげ、人類最後の砦である地下ブンカーの都市群へと忍び寄る。一方、デイトンに呼び寄せられた銀河通訳、セルカノ・ステーマーは盗賊団の黒幕の発見と排除という捨て身の任務を命じられるが。
離陸直後の旅客機が、凍結したポトマック河に墜落した。やがて犠牲者のなかに、偽名を使い夫婦として搭乗した男女の存在が明らかになる。その男女の残された妻ヴィヴィアンと夫エドワードは、愛しあっていたはずの相手の不実を初めて知り、打ちのめされ、そして怒りに震えた。事故をきっかけに出会った二人は、それぞれの失われた夫婦生活に隠された真実の姿を探るうち、しだいに惹かれあってゆくがー大型映画化原作。
ぼくは自殺しそうな気がする。守ってほしい…ランディーと名乗る若者はバークに訴えた。彼の周囲で知り合いの若者が次々と自殺し、異常な事態に怯えたランディーは、母親の知人であるバークを頼ってきたという。死んだ若者たちの親から話を聞くうち、彼らが同じ精神科医の診療を受けていた事実が判明する。その背後には、残忍かつ非情な秘密が!心に癒せぬ傷を抱えたアウトロー探偵バークの苦闘。シリーズ第二期開幕。
人間への愛と心の不思議さをあたたかな筆致で描きつづけ、世界中の人々を魅了する作家、ダニエル・キイス。代表的な長篇『アルジャーノンに花束を』の原型である中篇版のほか、奇妙な能力をもつ少年マロと弁護士デニスの運命の出会いを描く表題作「心の鏡」、万能コンピュータがひきおこす騒動をユーモラスに描いた「エルモにおまかせ」など、七篇を収録。キイスの魅力をあますところなく伝える、日本版オリジナル作品集。
グロテスクな怪奇幻想をロマンチックに描き、幅広い層に根強い人気を持つブラッドベリ。イメージの魔術師が、目にも止まらぬすばやさで繰りだす、色あざやかなシルクのような21の夢想をお楽しみあれ。
「わたしの車を取り返して」ある日同じ会社に勤めるマリアンナがハロルドを訪ねてきた。中古車販売店で下取り車を相場より三千ドルも安く買い叩かれたので、売りつけられた車をつっ返して元の車を取り戻したいというのだ。女に弱い中年男のハロルドは、いいところを見せようと気軽に引き受けた。だが、それがきっかけで次々に起こる思いがけない出来事に、彼はぬきさしならない泥沼にはまりこむ。やがて刑務所入りは確実という事態に追いこまれるが-。MWA、アンソニー両賞の最優秀処女長篇賞の候補となった期待の新人のデビュー作。
オクスフォードのカレッジに招かれ、はるばる大西洋を渡ってやってきた元刑事で大学教授のホーマー・ケリー。だが彼を迎えたのは怪事件の数々だった。構内で目撃された奇怪な生物の影、長年失われていた貴重な標本の再出現、大学名物の絵画の紛失…そして死体が次々と!ネロ・ウルフ賞受賞作『エミリー・ディキンスンは死んだ』に続く教授探偵の名推理。
本書の幕開きは1912年11月、バルカン半島では長く続いたトルコの支配が崩れるきっかけとなる第1次バルカン戦争が勃発し、その結果トルコはヨーロッパの領土の大半を放棄する。イギリス、フランス、ドイツ、ロシアなどの列強は、その空白をにらんで水面下での駆け引きを繰り返していた-巨匠ライアルの久久の新作。激動の歴史を動かした男たちの、謀略と闘いの日々。冒険小説の巨匠が描く、英国情報部草創期の活躍。渾身の新シリーズ開幕。