出版社 : 早川書房
アストリアスの手から奪還したフロリーだが、光団の中に潜んでいたゴーラの密偵によって再び、さらに今度はスーティとマリウスまで拉致されてしまう。追跡を開始したグインとリギアは、ボルボロス砦で、三人を連れた密偵の一味を発見、大立ち回りのすえ、彼らを閉じこめていた馬車もろとも仲間を取りもどし、轟然と走り去るのだった。その頃、中原の各国では、グインが行方をくらましたことによるさまざまな問題が…。
上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは十歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。ロンドンに帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し社交界でも名声を得た彼は、戦火にまみれる上海へと舞い戻るが…現代イギリス最高の作家が渾身の力で描く記憶と過去をめぐる至高の冒険譚。
わたしはパリ郊外のパラダイス団地でママと二人暮らし。パパは家族を捨てて故郷のモロッコで再婚した。ママは清掃員の仕事をしてるけど、フランス語がうまくないし、バカな上司のせいでほんと苦労してるんだ。よく泣いてる。わたしも高校に友だちはいないし、おしゃれなんてするお金もない。でもでも、落ち込んでたってしかたない。きっといいことがあるんだと信じていたら、わたしの前にひとりのニキビづら男子が現われた。最初はアホで無神経でイヤなやつだと思ったんだけどな…フランス暴動で話題となった郊外に住む移民たちの生活をポジティブに、ユーモアたっぷりに描く珠玉のデビュー作。
恋人同士がたがいに触れ合えないとしたら、ふたりはそんな世界をあきらめるだろうか?あるいは仮想世界の動物園でキリンが鳩を食べたとしたら、それは、現実に住まう神の御業なのだろうか?あるいは、仮想世界で生涯を終えた者がいて、果たしてその魂はどこへ向かうのだろうか?人間の意識と神についての思索が、現実と仮想のあいだを往還するー20年間の歳月を費やした、神林長平の原点にして到達点たる連作集。
古びた二階建ての建物で、開業医を始めたサックス。いままで医師のいない村だったプライの住民たちは、まだ若く独身の彼を、最初は好奇の目で見る。どうせ、すぐ町に転居してしまうのさ。子供が泣きやまないんです…大したことはないと思うんですが、熱が…病気や怪我や老いは待ってくれない。いつしか待合室は満員になり、人々は熱心に噂を交換する。友達もいないのかな…本屋で見掛けた…食生活がみすぼらしい…でも、いい人みたいだよ…時間外でも、往診でも、ほかの医者の患者でも、常に患者と正面から向き合う医師の日々。フランスで、文芸書としては異例の60万部を売り上げ、世界中で反響を呼んだ話題作。
世界を震撼させたあのベストセラー小説に騙されるな!「わたしの物語は真実であり、それは単なる小説ではない」と『ダ・ヴィンチ・コード』の著者ダン・ブラウンは主張する。つまり、彼の小説は綿密なリサーチの結果であり、秘密結社や儀式をはじめとする歴史、芸術、宗教に関するデータはすべて「事実」に基づいていると言うのだ。だが、本当にそうだろうか?ダン・ブラウンの言葉に疑問を持った本書の著者が、物語の細部を徹底的に検証すると、驚くべき嘘が次々と明らかになっていく!-スペイン、イタリアで発売間もなくベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』検証本。
中年男パルの頭を吹っとばされた死体は、内側から鍵のかかった書斎で発見された。自殺だろうと思いつつも、現場に到着したパスコーには気になることがあった。普段は頼まれても足を運びたがらない上司ダルジールが早々と駆けつけているのだ。しかも自殺を強く示唆する言動を…だがパルの父親が十年前に同じ書斎で自殺しており、さらにはその自殺の状況と今回の事件があまりにも酷似していることから疑念が生じる。後妻と子供たちの確執、父子二代にわたる因縁、そしてダルジールの過去までが複雑にからみあい、事件は迷宮へと突入してゆく。
グインは、ガウシュ村を襲った「光の騎士団」の跡を追い、彼らの狙いがフロリー母子であることを知る。騎士団を率いる「風の騎士」こそ、誰あろう、元モンゴールの赤騎士隊長アストリアスであり、アムネリスの無念を晴らす人質として、イシュトヴァーンの隠し子を捜索していたのだ。憎しみに燃えるアストリアスは村に火をかけ、いったんはフロリーを捕えるのだが、グインは、リギアの助けを得て、すぐさまフロリーを奪還する。
不肖わたくしめは、ロンドンの裏街で探偵を営むパキスタン系イギリス人トミー・アクタル。人生において知るべきことはクリケットから学び、ワイルド・ターキーと煙草がなくては手先が震えるアフガニスタン帰りの元聖戦士ってとこだ。そんなわたしの薄汚いオフィスに、ゼリーみたいなおっぱいの黒人娼婦がノックもなしに訪ねてきた。その名はメロディ・チェイス。行方不明の娼婦仲間を探してほしいという。下心からなんかじゃなく調査をはじめた優秀な(よく言うよ)わたしだが、事態はやがて下院議員殺害事件、さらにはロンドンを襲う自爆テロ騒ぎに発展してくって、マジかよ、こりゃ。ロンドンを襲った自爆テロ。ほんとうの犯人は誰なのか?ウィットブレット賞を射止めた英国の新鋭が紡ぎあげる、探偵小説のニュー・ボイス。
時間的同一性交換によって6カ月前の世界へ向かった俺が見たのは、すべてが燃えあがり、あらゆる生命が死滅した終末のパノラマだった-タイムトラベル実験の恐るべき顛末を描いた表題作、謎の異星生命体との危険なコンタクトを果たした詩人の手記にしてSFマガジン読者賞受賞作「メデューサの呪文」、アキバ系科学幻想譚「シュレディンガーのチョコパフェ」ほか、全6篇を収録する最新作品集。時間、宇宙、言語、超人テーマなど、SFならではのアイデアを現代に蘇らせる、科学と奇想と語りの饗宴。
旅客機がハイジャックされ、操縦士のオハラはアンデス山中の高所に無謀な不時着を強いられた。機体はひどく損傷し、犯人らは死亡。かろうじて生き残ったオハラたち九名は、高山病に苦しみながらも救助を求め山を下り始めた。そんな一行を、突如銃撃が襲う。一体誰が、何のために?背後は峻険な峰々。絶体絶命の窮地に陥った彼らは、驚くべきアイデアでこれに挑むが…壮大な自然に展開する死闘。冒険小説史上屈指の名作。
マリウスと旅を続けるグインは、銀色の仮面の騎士に率いられた謎めいた騎士団に遭遇した。これをやり過ごしたふたりは、湖畔の一軒家にたどりつき、ローラという女性のもてなしを受ける。このローラこそ、かつてのアムネリスの侍女フロリーであり、その息子のスーティはすなわち、イシュトヴァーンの子にほかならなかった。世間の目を避けて暮らすふたりだが、その運命の歯車は今や軋みをあげて大きく回ろうとしていた。
西アフリカの植民地で警察副署長を務めるスコービーは、芸術家肌で気まぐれな妻ルイーズに手を焼いていた。南に移住したいという妻の願いを叶えるため、彼は地元の悪党に金を借りて費用を作り、彼女を送り出す。間近に迫った彼の引退まで別居生活となるが、それが彼女の希望だった。だが、やもめ暮らしをはじめたスコービーの前に、事故で夫を失った若い女ヘレンが現われ…英文学史上に燦然と輝く恋愛小説の最高傑作。
結婚4年目の若い夫婦バーニーとカレンは不妊に悩んでいた。カウンセリングを受けるが成果はなく、二人の仲はぎくしゃくしたものになっていく。そんな時、バーニーの勤務先で放射能事故が発生する。会社の発表によれば、汚染は最小限にとどまり大惨事は防がれたというが、事故から数週間後、バーニーとカレンの体には吐き気やめまいなどの奇妙な異変が…。しかもこの最悪の時期に、カレンの妊娠が判明する。はたして、胎児に放射能の影響はあるのか?夫婦はこの子に生を与えるべきか?-突然の災厄に翻弄される夫婦が経験する、愛の崩壊と再生の軌跡を描きあげた衝撃作。
ホークが撃たれた。大口径ライフルの銃弾三発を背中に受け、瀕死の重傷を負ったのだ。集中治療室で厳重看護という状態に陥りながらも、人並みはずれた頑健さと、常人では及びもつかぬリハビリをこなしてホークは快復した。だが、ホークに護衛を依頼した賭け屋とその家族は、託児所にいた幼子一人をのぞいて全員が殺されてしまっていた。彼は、職業上の誇りと個人的なプライドを取り戻さなくてはならなかった。ホークを襲撃したのは、ウクライナ・ギャング。彼らが何のために?スペンサーはホークとともにその謎を追う。やがて、ボストンの黒人裏社会を牛耳るトニイ・マーカスの存在が浮かび上がり、麻薬密売がからんでいることが明らかになってゆく。ホークは、ボストンに近接するウクライナ移民が作った市の市長でもあるウクライナ・ギャングのボスとの対決を決意する。瀕死の重傷を負いながらも、「ほかの男たちと同じであってはならない」と絶大な自信をもって語るホーク。誇りを取りもどすために闘う彼の強烈な個性が炸裂する。
馴染みの退職刑事種谷からの突然の連絡。呼び出しの応じた“俺”を待っていたのは「殺人容疑者と親友になれ」という頼みだった。未解決のままの女子高生行方不明事件の証拠を見つけるため、容疑の濃厚な男の家に上がるまでになれ、ということらしい。“俺”は、バーでの偶然の出会いを装い、男に近づくことを企む。そしてそれは生涯最低の冬の幕開けでもあった。“ススキノ探偵シリーズ”書き下ろし長篇。
たまたま台所にあったボウルに入っていた食用かたつむりを目にしたのがきっかけだった。彼らの優雅かつなまめかしい振る舞いに魅せられたノッパート氏は、書斎でかたつむり飼育に励む。妻や友人たちの不評をよそに、かたつむりたちは次々と産卵し、その数を増やしてゆくが…中年男の風変わりな趣味を描いた「かたつむり観察者」をはじめ、著者のデビュー作である「ヒロイン」など、忘れることを許されぬ物語11篇を収録。
エジンバラの街では、強者は弱者を喰らい、弱者は強者にへつらい続ける。難民とおぼしき男が無残に刺し殺された。その身元は不明だったが、捜査に乗り出したリーバス警部は男が謎の女に会っていたとの情報を得る。警察に電話をしてきた女には独特の言葉の訛りがあった…時同じくしてパブの地下で女の骨が発見された。リーバスは、骨が250年前に魔女ときめつけられ住民に処刑された女のものと知る。大学の研究室に保管されていたはずの骨を、誰が、なぜここへ移動させたのか…さらにリーバスは、ある強姦犯が出所してきたことを知る。被害者の女性はレイプされた後に自殺した。その妹は最近失踪を遂げていた。なぜか死んだ姉そっくりの恰好をしていたというが…次々と襲いくる事件と謎に一匹狼リーバス警部が立ち向かう、現代イギリス最高峰のミステリ。2005年度CWA賞ダイアモンド・ダガー賞受賞作品。