出版社 : 春秋社
日本統治時代に台湾南部の港町・高雄で生まれた孫愛雪。戦後の政治的弾圧で父と夫は国を去り、やがて愛雪も夫を追って日本へ渡る。「良妻賢母」の価値観を教え込まれた愛雪は、その通りに家の仕事をこなし、台湾独立運動に奔走する夫を支えながら、自らも実業家として道を切り拓き強く生きた。そして晩年、家族を陥れた意外な真実を知る……。 数々の歴史ノンフィクションを手掛けた陳柔縉ならではの、歴史の細部まで描き込んだ生き生きとした筆致。実在の人物・郭孫雪娥をモデルとしつつ、虚構を交えながら女性の視点で台湾の現代史を問い直す歴史小説。 装幀:佐野裕哉 装画:原倫子 蔡英文・前総統推薦! 「この小説は、高雄港を舞台とし、女性の視点を通して現代台湾の100年にわたる流転が丁寧に描かれている。 ぜひご一読を!」--蔡英文氏Facebookより 「どのようにして革命家の妻が、世で言う「良妻賢母」を全うし、さらにその枠を飛び出して自分の名前で生きるようになったのかを書きたいと思った。それだけではない。日本統治時代の高雄港、高女世代、そして台湾の百年の移り変わりを書きたいと思うようになっていた。」--「著者あとがき」より
1945年、日本占領下のマラヤ(マレーシア)では少年たちが次々と姿を消し始める…。日本軍のスパイに協力した主婦・セシリーと、その家族に起こった数々の悲劇。大胆な想像力を駆使して新たな視点から戦争を描き、発売前から世界中で話題を呼んだデビュー作。
ライカを手に変わりゆく台湾を写し続けたひとりの写真家がいた。日本統治時代の台湾に生まれ、法政大学カメラ部でライカと出会った南光ことトウ騰輝。モダン都市・東京と戦争と戦後の動乱、台湾写真史を鮮やかに描きだす。巻末に南光による写真12点を掲載。歴史小説の名手・朱和之が南光の残した写真をもとに、たぐいまれな想像力で写真家の人生と台湾写真史を描き出す。羅曼・羅蘭百萬小説賞受賞作。
チベット発、シスターフッドの物語。ラサのナイトクラブ“ばら”で働く4人の女性たち。花の名前を源氏名として、小さなアパートで共同生活を送る彼女たちは、それぞれが事情を抱えてこの町にやってきた。暴力や搾取、不平等の犠牲となりながらも支え合って生きる彼女たちの心の交流と、やがて訪れる悲痛な運命を、慈悲に満ちた筆致で描き出す。
希望の光、再生への旅。満州からの帰還。敗戦の傷跡を背負いつつ真摯に生き抜いた人びと。若い世代は過去から何を伝え聞いたのか。世代を超えて語り継ぐ小さな愛と勇気と祈りの物語。
第二、第三の人生を自分らしく生きることに悩みを抱える女性は多い。夫婦、子供、友人との関係など、明るく軽やかな日々を送る心意気と気遣いとは何か。新たな希望のときを踏み出す一歩。
苦しみのない人なんて、いない。それでも、私たちは生きている。介護、原発、死刑、犯罪、いじめ…複雑化する現代社会のなかで、いのちきらめく一瞬を見つけて、生きていく。“人生”が凝縮された掌編集。
飛騨高山は江戸幕府の直轄地であった。一八六八年(慶応四年)、明治新政府の代表者として、最初にこの地に派遣されたのが、国学者竹沢寛三郎であった。彼は人心掌握のため年貢半減、諸運上軽減廃止等を布告したが、竹沢の施策は新政府の方針に反して理想的すぎたため、罷免される。替わって、元水戸浪士梅村速水が新たに県知事として任命される。梅村は企画力に優れた若き俊才で、急進的な改革を推し進め、飛騨高山の土俗的な風習や伝統的な制度と対立していく。さらに新政府の矛盾した政策の忠実な実行者としての役割をも演じていく。そして村娘おつるを迎えたことで、すべてが裏目に出ることになる。
梅村速水の政策は根本的には、飛騨高山の文化、歴史を無視したもので、彼の強引なやり方に、農民たちは極度な恐怖を抱くようになった。しだいに梅村は孤立していく。様々な小さな齟齬の積み重なりが、ついに農民一揆を招来する。村に怪火が次々と起こるようになる。それが、不穏な人気をいやが上にかき立てた。農民たちによる打ちこわしが始まった。高山の町は一揆が占領したのである。梅村は追われる身に変わっていった。明治政府は梅村知事を罷免した。梅村速水は公金横領という罪状により唐丸かごで京都へ送られ、移送された東京で未決囚のまま死因に謎をのこして獄死する。やがて一揆の首謀者の逮捕が始まり、みな牢死する。「そしてこれが犠牲者の大多数の共通した運命であった。」