出版社 : 朝日新聞出版
がんや糖尿病をもつ認知症患者をどのように治療するのか。認知症専門病棟の医師・三杉のもとに、元同僚で鳴かず飛ばずの小説家・坂崎が現われ、三杉の過去をモデルに「認知症小説」の問題作を書こうと迫ってくる。医師と看護師と家族の、壮絶で笑うに笑えない本音を現役医師が描いた医療サスペンスの傑作。
1998年ノーパンすき焼きスキャンダル発覚、大蔵省設立以来最大の危機が訪れる。黒幕の大物主計局長、暴力団幹部、総会屋総帥、敏腕政治家らの思惑が入り乱れるなか、 “大蔵省始まって以来の変人”霞が関のダークヒーロー・香良洲圭一が現れた!驚愕のラスト、香良洲の決断に読者は震撼する!!前代未聞の官僚ピカレスクロマンーー待って下さい、私はこれでも大蔵官僚ですよ。こともあろうにヤクザと内通だなんて……面白すぎるじゃないですかーー「香良洲は一連の大蔵不祥事を利用して、金融政策の転換を狙っているようですね」「まさか」 デスクを前にした錐橋議員が目を見開く。「そんなことが可能なの? たかが文書課の課長補佐に」「まず無理でしょう。無理と言うより、真面目に聞くのも馬鹿馬鹿しい話です。けれど、香良洲ならやれるかもしれません。彼はそういう男です。この私がわざわざ時間を割いて会いに行ったくらいですから」(本文より) 1998年冬、接待汚職「ノーパンすき焼きスキャンダル」が発覚した大蔵省は大揺れに揺れていた。接待を受けていた89年入省組は処分を逃れるために、同期で“大蔵省始まって以来の変人”の異名を取る文書課課長補佐の香良洲圭一に協力を要請する。香良洲は元妻で与党・社倫党政治家秘書の花輪理代子から、政財官界の顧客リストの存在を告げられる。リストを探すために、香良洲はフリーライターの神庭絵里に調査を依頼、絵里は暴力団・征心会若頭の薄田に接近するが……。
運送会社の事務として働くママは、同僚の池ちゃんと帰りにおでん屋へ寄るのが最近の楽しみ。そこで出会った佐々木君と仲良くなり、「さくら」と「もも」が産まれる。しかし、ある事情で夫婦生活はあっけなく破綻し、離婚。子どもたちは順調に育っていく一方で、手取り十数万円の給料は変わらず、家賃、保育料、そして借金の返済をすると、手元に現金は残らない。様々な事情を抱えながらも笑いの絶えない同僚たちやタフな娘たちの明るさに救われてはいるのだが、ママは誰にも「助けて」とは言えず…。ギリギリの日々を全力で生きる、すべての「ママ」におくる物語。
世間が万博に沸き返る1970年、洋一郎が小学校2年生の時に家を出て行った父親の記憶は淡い。郊外の小さな街で一人暮らしを続けたすえに亡くなった父親は、生前に1冊だけの「自分史」をのこそうとしていた。なぜ?誰に向けて?洋一郎は、父親の人生に向き合うことを決意したのだが…。
老人ホームの施設長を務める洋一郎は、入居者たちの生き様を前に、この時代にうまく老いていくことの難しさを実感する。そして我が父親は、どんな父親になりたかったのだろう?父親の知人たちから拾い集めた記憶と、自身の内から甦る記憶に満たされた洋一郎は、父を巡る旅の終わりに、一つの決断をするー。
日ノ本すら破壊する斎藤道三の最終兵器“国滅ぼし”とは?その核心に行き着いた三代目義龍が下した驚愕の決断とは!?著者初の書き下ろし。従来の戦国史を根底から覆す、瞠目の長篇時代小説。
音楽のこととなると時間も忘れて熱中し、時には体を壊してしまう、心優しき作曲家の夫・裕而。裕而を支えながら、オペラ歌手になるという自分の夢も諦めない、いつも前向きな妻・金子。ともに音楽を愛する二人は、文通を通じた大恋愛の末に結婚する。作曲家として成功した裕而の一番の理解者となった金子は、戦時歌謡を作らざるをえなくなった裕而の苦悩に寄り添い続けた。戦後、疲れ果てたこの国の人びとを励ますために寝食も忘れて曲を作り続ける裕而に、金子はー。
見えない魔の手から子どもたちを守ることができるのか?埼玉県の片田舎から都内の幼稚園に赴任してきた幼稚園教諭・神尾舞子。待機児童問題、騒音クレーマー、親同士の確執…様々な問題を抱える中、幼稚園の生き物が何者かに殺される事件が立て続けに発生する。やがて事態は最悪の方向へー。12ヶ月連続刊行企画第1弾!
幼い頃から「犬になりたい」と切望する八束房恵は、玉石梓という理想的な犬の飼い主に出会い、「あの人の犬になりたい」と願うようになる。そこへ謎の男・朱尾献が現れ、「犬化願望を叶えてやる代わりに魂をよこせ」と契約を迫る。第59回読売文学賞受賞作。本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位(2010年度)
梓の飼い犬・フサとなった房恵だが、彼女の実家は決定的に崩壊していた。性的虐待を続ける兄、息子ばかり偏愛する母親。一方、まるで梓が書いているかのような、兄との性的関係を告白するブログが公開され…さまよえる犬の魂は何処に行くのか?第59回読売文学賞受賞作。本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン第1位(2010年度)
敗戦後、戦地から復員した画家・平泉貫一は、出征前と同じ人物なのか。似ても似つかぬ姿で帰ってきたものの、時をおかずして男は失踪してしまう。兵役中に嫁いだ妻、調査の依頼主、妾、画廊主、軍部の関係者たちー何人もの証言からあぶり出される真偽のねじれ。調査を依頼された私がたどり着いたのは、貫一が贋作を得意としていたという事実だった。
経産省キャリア官僚殺害事件の容疑者が冤罪を主張、その弁護人は特命係と因縁のあるあの女性弁護士だった。絡み合う事件の謎を解きほぐしてゆく「99%の女」、歪んだ正義感を持つ因縁の元相棒がロンドンで再び動き出す「倫敦からの刺客」、ある殺人事件のからくりを知った少年の思いに共鳴した“花の里”女将、幸子の覚悟と決断を描く「漂流少年」など6篇を収録。(連続ドラマ第17シーズンの第14話〜第20話を収録)
「俺の邪魔立てをする者は、何人たりとも容赦せぬ!」己が理想の国を目指し、天下布武に邁進する信長は、歯向かう者をことごとく葬り去っていく。その苛烈極まる戦いの中、光秀は信長に抗する自らの内なる声を聞く。その甘い響きは、やがて彼自身を蝕みはじめ…。
「信長様の酷薄、それほどであったか」四国を牛耳る長曾我部元親討伐の先手を待ち望む光秀だが、信長から下されたのは秀吉の後詰めに加え、丹波と坂本の領地替えだった。屈辱に震える中、信長が滞在する本能寺の守備が手薄だと知ったことで、揺らぐ気持ちは決意に変わる!
林ちひろは、中学3年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族のかたちを歪めていく…。野間文芸新人賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた著者の代表作。
深川で鍼灸師を営む染谷。「医は仁術」と心得て、朋友の漢方医・昭年とともに市井の人々を癒す。元辰巳芸者で気風のいい内儀の太郎にも支えられ、人助けに世直しにと奔走する日々を人情味あふれる筆致で綴る。現代の疲れた心にもじんわり効く長篇時代小説『たすけ鍼』待望の続編。
長崎の油商・大浦屋の女あるじ、お希以ーのちの大浦慶・26歳。黒船来航騒ぎで世情が揺れる中、無鉄砲にも異国との茶葉交易に乗り出した。商いの信義を重んじるお希以は英吉利商人のヲルトやガラバアと互角に渡り合い、“外商から最も信頼される日本商人”と謳われるようになる。やがて幕末の動乱期、長崎の町には志を持つ者が続々と集まり、熱い坩堝のごとく沸き返る。坂本龍馬や近藤長次郎、大隈八太郎や岩崎弥太郎らとも心を通わせ、ついに日本は維新回天を迎えた。やがて明治という時代に漕ぎ出したお慶だが、思わぬ逆波が襲いかかるー。いくつもの出会いと別れを経た果てに、大浦慶が手に入れたもの、失ったもの、目指したものとはー。円熟の名手が描く、傑作歴史小説。