出版社 : 東京創元社
心臓移植を受けている学者は、手術中にどんな夢を見たのか。ダイアナ妃に憧れた少女が語るプリンセスの一生とは。聖戦に参加することになったイスラム教徒の青年たちは、観光地で何を思うのか。芸術家の老女が、家のあちこちにいる幽霊たちへ向ける想いとは。--すべての結末に描かれる鮮烈な「絵」が、わたしたちの心を奪っていく。ブッカー賞候補作家が放つ、驚きと寂しさ、愛おしさに満ちた12編。カナダ総督文学賞最終候補作。
緻密な伏線と論理展開の妙、愛すべきキャラクターなどで読者を魅了する、ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。著者の生前、単行本に収録されなかった短編小説などを収めた作品集を、二分冊にした文庫化でお届けする。絡繰篇は、大胆不敵な盗賊・隼小僧の正体を追う「大奥の七不思議」ほか、江戸の雲見番番頭・亜智一郎が活躍する時代ミステリシリーズ、五節句の紋を誂えた着物にこめられた想いを読み解く「五節句」ほか、紋章上絵師たちのシリーズ、背中に見事な彫物を持つと評判の美女を巡る「荼吉尼天」といったノンシリーズなど、17編を収めた。
ミステリ界の魔術師・泡坂妻夫。その最後の贈り物である作品集を、二分冊にした文庫化でお届けする。手妻篇は、辛辣な料理評論家を巡る事件の謎を解く「カルダモンの匂い」ほか、ヨーガの達人にして謎の名探偵・ヨギ ガンジーが活躍するミステリシリーズ、酔象将棋の名人戦が行われた宿で殺人が起こる、単行本刊行後に発見され初書籍化となる「酔象秘曲」、マジシャン同士の心の機微を描く「ジャンピング ダイヤ」ほか、マジックショップ・機巧堂を舞台にした奇術もの、住人が次々と死んだマンションの一室で交霊会を行い、真実を暴く戯曲「交霊会の夜」など13編を収録。
その惑星では、かつて人類を滅ぼした異形の殺戮生物たちが、縄張りのような国を築いて暮らしていた。罪を犯して祖国を追われたマガンダラは、放浪の末に辿り着いた土地で、滅ぼしたはずの“人間”たちによる壮大かつ恐ろしい企みを知る。それは惑星の運命を揺るがしかねないものだった。マガンダラは異種族の道連れとともに、戻ったら即処刑と言い渡されている祖国への潜入を試みる。『皆勤の徒』の著者、初長編。
長閑な夏の昼下がり、田舎の名士の屋敷、赤い館で銃声が轟いた。死んだのは、15年ぶりに館の主マークを訪ねてきた兄。発見したのは館の管理を任されているマークの従弟と、友人を訪ねてきた青年ギリンガムだった。発見時の状況から当然マークに疑いがかかるが、マークは行方知れず。興味をひかれたギリンガムは、友人をワトスン役に事件を調べ始める。『クマのプーさん』で有名な英国の劇作家ミルンが書いた長編探偵小説、新訳決定版。
シアトル近郊のレブンワースは、ドイツのバイエルン地方に似た風景が広がる、ビールで有名な小さな町。町で一番のブルワリーを夫とその両親と切り盛りしていたわたしは、平和な日々を過ごしていたーー夫マックの浮気が発覚するまでは。わたしは新しくオープンするブルワリーで働くことにする。フルーティーながらもすっきりした後味のビールや、腕によりをかけたわたしの料理のおかげで、開店初日はなんとかうまくいった。しかし翌朝、店で死体が発見されてーー。ビール・ミステリ第一弾。
1980年のバルセロナ。弁護士のマリアは、政治捜査に携わっていた警部が情報屋を制裁した殺人未遂事件で、警部を終身刑へ追い込んだことで名声を得た。だが数年後の今、その事件が何者かの陰謀によって仕組まれていたと判明する。マリアは再調査をはじめ、自らの血の桎梏と体制側の恐るべき策略を知る。殺人、偽証、復讐を通して描かれる、抗えない運命へのやるせなさが滲む圧巻の人間ドラマ。ポラール・ヨーロピアン大賞受賞の大型ミステリ。
邪険な扱いしかしなかった亡き妻に謝罪したいーー一代で財を成した傑物、方城兵馬の願いを叶えるため、長男の直嗣が連れてきたのはなんと霊媒師。自宅で降霊会を開いて霊魂を呼び寄せようというのだ。霊媒のインチキを暴こうとする超常現象の研究者までもが乱入し騒然とする中、兵馬が密室状態の離れで撲殺される。霊媒は方城家に悪霊が立ち籠めていると主張、かくて調伏のための降霊会が開かれるが、その席上で第二の惨劇が起きた。名探偵猫丸先輩がすべての謎を解き明かす、本格推理小説の雄編。
恒星を巡る、想像を絶する生態の生命体との邂逅を描くヒューゴー賞受賞中編「島」、シャーリイ・ジャクスン賞受賞の驚愕の一人称短編「遊星からの物体Xの回想」、任務遂行のため実験的に意識を与えられた無人軍用ドローンの進化の極限を描く「天使」など、星雲賞受賞作家の真髄を示す傑作ハードSF11編を厳選した、日本オリジナル短編集。
出演者同士の殺し合い、まるで『ハムレット』の見立て殺人!?直木賞作家が描く、シェイクスピア×ミステリ。夢の中で助けを求めてきた大女優のために私立探偵・山浦歩が挑む事件の謎。
客席最前列の男が、暗闇のなかで喉を掻ききられて死んでいた。男は上演中の芝居のもと脚本家だった。駆けつけたマロリーとライカーは捜査を開始する。だが、劇場の関係者は、俳優から劇場の“使い走り”に至るまで全員が変人ぞろい。おまけに、ゴーストライターなる人物が、日々勝手に脚本を書き換えているという。ゴーストライターの目的は? 殺人事件との関わりは? 氷の天使マロリーが、舞台の深い闇に切り込む。好評シリーズ。
ここはウサギ穴に落ちたり、鏡をくぐり抜けたりして異世界へ行き、帰ってきたものの、現実世界に適応できない子供たちに救いの手をさしのべる学校。ある日学校に空から少女が降ってきた。彼女は、スミの娘と名乗る。だが、スミは死んだはず。それを聞いた少女はスミを取りもどさないと自分が消えてしまうと訴えた。そこで友だち4人がスミを取りもどすべく死者の世界に旅立つ。ファンタジーの醍醐味を凝縮したヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞受賞シリーズ完結。
16歳のぼくを置いて母は逝った。宮沢賢治研究に生涯を捧げた母は、否定されている『銀河鉄道の夜』の第四次改稿版の存在を主張していた。花巻へ散骨に訪れたぼくは、気がつくと、昭和8年、賢治が亡くなる2日前にいた。辿り着いた賢治の家でぼくを迎えたのは、早逝したはずの妹トシと、彼女の娘「さそり」だった。永遠に改稿され続ける小説、花巻を闊歩する賢治作品の登場人物たちーー『銀河鉄道の夜』をモチーフに時間と物語の枠を超える、傑作長編SF!
あと二日で、四人死ぬーー ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ待望の第二弾! その日、“魔眼の匣”を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた直後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白しーー。ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。
チャールズは切羽詰まっていた。父から受け継いだ会社は不況のあおりで左前、恋しいユナは落ちぶれた男など相手にしてくれない。叔父アンドルーに援助を乞うも、駄目な甥の烙印を押されるばかり。チャールズは考えた。叔父の命、または自分と従業員全員の命、どちらを選ぶのか。身の安全を図りつつ遺産を受け取るべく、計画を練り殺害を実行に移すチャールズ。快哉を叫んだのも束の間、フレンチ警部という名の暗雲が漂い始める。『樽』と並ぶクロフツの代表作、新訳決定版。
真面目さが取り柄の会社員・透子は、ひょんなことから名探偵・九条の秘書になる。かつて彼は全国を股にかけ、多くの難事件を解決した素人探偵だったが、今はなぜか地元・川崎市内というご近所でのささやかな謎にしか興味を持たない、自称“ご当地探偵”になっていた。ご当地アイドルに届いた予告状の謎など、ものぐさ探偵と生真面目秘書が依頼人の悩みを晴らす連作ミステリ全5編。
忘却城に眠る死者を呼び覚まし、蘇らせる術で発展した亀珈王国。過去の深い傷を抱えた青年儒艮は、ある晩何者かに攫われ、光が一切入らない盲獄と呼ばれる牢で目を覚ます。儒艮ら六人を集めたのは死霊術師の長、名付け師だった。名付け師は謎めいた自分の望みを叶えるよう六人に命じ、叶えられた暁には褒美を与えると言うが…。第3回創元ファンタジイ新人賞佳作入選作。