出版社 : 河出書房新社
金髪のその外国人少年は私の心の支えだった。彼は私の背中で疲れ切って死んだ…。南国の荒々しい自然の中で繰り広げられる地元の少年と収容所暮らしの謎の少年とのみずみずしい心の交流と、あまりに無残な最後を、強烈な筆致で描く永遠の青春小説!
昭和22年9月、小田原の成金倉田家に、白衣姿の異形の傷痍軍人が現れた。片手片脚、両眼がつぶれ口もきけないその男は、外地から復員した倉田家の次男安彦と思われたが、その翌晩、倉田家を惨劇が襲う。そして、五年前の倉田家長男親子の轢死事件が浮上するー。安吾の途絶作を、名匠高木彬光が巨勢博士の活躍で見事に完成させた傑作。
ヒラヒラと舞う雪花、冬の枯れ草の暖かい匂い、鉄の規律に縛られた軍隊生活、テーブルに刺さった赤い箸の十字架…。農村と軍隊と信仰をめぐる9つの短篇。ノーベル文学賞候補と目される作家が自ら選んだ傑作集。
金と愛と日本と神が、ひとつに交わるこの宴 狂乱の神前結婚パーティーが、いま始まる! 神社の披露宴会場で働く18歳のフリーター・浜野。披露宴の「茶番」を演じるうち、神社のまつる神が明治日本の〈軍神〉であることを知り……。 結婚、家族、そして日本という壮大な「茶番」を鮮やかに切り裂く、最注目の俊英による今年度最大の問題作! ■早くも話題、絶賛の声続々! 披露宴会場の仕事の細部を本物の現場感覚で見事に描きだし、結婚とは何かという普遍的な事柄とともに、神社や宗教を絡めてテーマを広げ、全部をうまく溶け込ませている。橋本治『草薙の剣』とも共通する、時代との独特の接し方。 ーー佐伯一麦(「群像」創作合評) 立ち位置なんて、決めたくない! 強い意志をもつ主人公浜野。相棒は、熱血青年の梶。正義を背負って参戦する、神道女子の倉地。 登場人物の葛藤が、なんともチャーミングな痛快作。古谷田奈月さんは、華燭の典の楽屋の壮絶な闘いをすべて書きつくされた。 ?-石田千(「群像」創作合評) 従来の結婚式小説とは違い、神道それ自体を描き出し相当奥行きのある作品に仕上がっている。震災やオリンピック会場の建設などの時事的な事柄をも主人公の経験に沿って語る、一種の平成史小説。 ?-陣野俊史(「群像」創作合評) 軽妙な語り口ですがすがしい読み心地。神社政治のメカニズムの扱いにも慣れた彼が、ライバル関係をうまくやり過ごし実現させるのは、全く新しいお一人様での結婚式。荒唐無稽のようでいて、意外と切なく、締まった結末。 ?-阿部公彦(「共同通信」) 軍神も神社も架空のものだが、いかにもなリアリティがあり、ワリの良い仕事だからと軽い気持ちで働き始めた主人公を通して、読者は「天皇制」の「日本」の「社会」と「家族」の不可思議に対峙させられる。力作である。 ?-佐々木敦(「東京新聞」) 右寄りの思想の空無な状態を戯画化し、それだけでなく、彼らの寄る辺なさに哀切を漂わせている。さらに現代の婚礼における差別主義をも暴く射程の広い物語。紛れもなく著者の代表作。 ?-長瀬海(「週刊読書人」)
混声合唱なのに男子がたった4人という多摩川高校合唱部。そこへ元気だけが取り柄の新入部員たちが加わり、「先輩が作詞した課題曲をどこよりもうまく歌いたい!」と、合唱コンクールに向けて猛特訓をしていくー。NHK全国学校音楽コンクールで初の全国大会出場を果たした県立高校をモデルに描く、奇跡の青春感動物語。
ラゴスからアメリカに移民した若い主人公がエクストラ・ヴァージン・オイル色の目をした白人の男の子と親しくなる表題作(「アメリカにいる、きみ」改題)のほか、「ひそかな経験」「明日は遠すぎて」など、人種、ジェンダー、家族にまつわるステレオタイプな思考を解きほぐす、天性のストーリーテラーの切なく繊細な12の短篇。
白パンと黒パン、干し草のベッド、ヤギのミルク、チーズ料理、フランクフルトへの旅、クララの病ー子供の頃に夢中になったアルプスの物語には、意外な真実が隠されていた。原作に潜む19世紀ヨーロッパの光と影を読み解く。
生まれてすぐに「ひかり公園」に捨てられたニーコ。幸運にもおばあさんに助けられ幸せな日々を送っていました。しかし三度目の春、おばあさんとの別れは突然やってきます。ふたたび公園に戻ったニーコは六匹の子ねこを産みました。そして…。いま、子ねこと、彼らを家族に迎えた人々が奏でる命の物語が幕を開けます。生きることの哀しみと煌めきに充ちた、猫小説の新たな代表作の誕生!
学校からいじめをなくすため、大仏のマスクをかぶり、休み時間ごとに、パフォーマンスショーを始めた新島英雄とその演出担当の佐古鈴。二人のアイデアは、たちまち生徒たちの心をつかみ、学校は平和になったかに見えた。だが転校してきた無愛想な美少女あかりが、新たないじめの標的になり…正義とは何かを問う、痛快学園小説。
「パロディーと戯れるわたしには、モラルも批評精神も皆無だ」(エーコ)。老女たちの性的魅力を綴った手記『ノニータ』、新大陸発見の実況中継、『フィネガンズ・ウェイク』続篇の書評…古今東西の文学作品、映画、取扱い説明書など、変幻自在のパロディー集。「知の巨人」による最高の遊戯的エッセイ。大幅増補「完全版」!
不幸を治す医師、幸医であるファンクビートは途方もない失態の末、大学の研究室を追いやられた。行くあてのない彼であったが、昔なじみに招かれた古い診療所で、人々の禍福に端を発する『幸害病(アンハピネシア)』と総称される様々な病と対峙していく。nyanyannyaが5つの物語を執筆、イラストはシリーズの世界観を表現している予感子が担当!
『黒死館殺人事件』で有名な博覧強記の名探偵・法水麟太郎。住職の変死事件に挑む初登場作「後光殺人事件」から、礼拝堂内で起きた殺人の驚愕の動機が解き明かされる傑作「聖アレキセイ寺院の惨劇」、最終篇「国なき人々」まで、法水の活躍する奇想天外でペダンチックな探偵小説全短篇。