出版社 : 河出書房新社
社会人五年目で友人なし。恋人は三ヶ月前に出て行ったばかり。そんな私の前に四年間行方知れずだった弟・風太がリーゼントの緑くんと共に現れた。突如始まった、弟との奇妙な共同生活。そんな風太は毎夜、なぜか私の「観察日記」を付け始めたのだが…。短篇「松かさ拾い」に加え磯崎憲一郎氏との特別対談を併録。『ひとり日和』に続く、芥川賞受賞第一作。
「西のはて」の都市国家エトラは、周囲の諸都市と戦を繰り返していた。幼い頃、姉と共に生まれた土地からさらわれ、エトラの館で奴隷として育った少年ガヴィアには、たぐいまれな記憶力と、不思議な幻を見る力が備わっていた。一家に忠誠心を抱いて成長したガヴィアであったが、ある日を境にすべてが変わっていくー。「西のはて」のファンタジー・シリーズ第三作。ネビュラ賞受賞作。
悲惨な事件によって愛する人を失ったガヴィアは、エトラを離れて放浪する。逃亡奴隷の集落「森の心臓」や、生まれ故郷である「水郷」をめぐりながら、旅の途中で出会った人々に助けられ、ガヴィアは自分のふたつの力を見つめ直してゆくー。「西のはて」のファンタジー・シリーズがついに完結。ネビュラ賞受賞、ル=グウィンがたどりついた物語の極地。
乃里子はボリュームのあるバストとはちきれんばかりの肉体の若妻。夫にナイショで、通販で秘密の買物をしている。買物の中身がバイブレーターであることを、ふとしたことで宅配便の運転手の青年・健也に知られてしまう。秘密を知り、興味をそそられた健也は乃里子をデートに誘う。乃里子は年下の男の誘惑をまんざらでもなげに受け入れ、二人は急接近し、背徳の性愛に溺れてゆく。-年下の男との淫らな性愛の原風景がうかがえる会心作。
玉緒が就職のために村を発つ前日、父の発案で撮った家族写真。半年後、帰郷した彼女は写真館に飾られた写真を前に「遅くなってごめんなさい」と呟く(「家族写真」)。断食で衰弱したガンディーの口から漏れた言葉は、幼き頃に別れた息子の名前だった(「わが胸のマハトマ」)ほか、美しく華麗な短篇七本に加え、文庫版「あとがき」を収録。
“西のはて”の都市アンサルでは、他国の圧政により、長い間本を持つことが禁じられていた。かつて交易と文化を担っていた名家に生まれた少女メマーは、一族の館に本が隠されていることを知り、当主である道の長からひそかに教育を受けるようになるー。巨匠ル=グウィンがおくる、新たなファンタジー・シリーズ第二作。
本当の王子はどこに? ……十三歳の誕生日。スワンは立て続けに三人の少年から“王子”に間違えられた。王子は〈超(リープ)〉中に事故にあい、行方不明になっているという。〈超〉人気作、待望の文庫化!
授業をさぼってなんとなく自転車で北へ走りはじめ、福島、山形、秋田、青森へ……友人や学校、つきあい始めた彼女にも伝えそびれたまま旅は続く。二十一世紀日本版『オン・ザ・ロード』と激賞された話題作!
コポリ、コポリ…はじまりはいつも、音だった。月に一度、水が溢れ出す「みずうみ」の畔に住む少年、身体が膨張し大量の水を体内から放出するタクシー運転手、そして、あの日、慎二と園子の身に起きた出来事ー喪失と再生、物語と現実…「はじまりとおわり」のない、循環する「命」の産声を描いた話題の長編小説。
「森羅万象は金毘羅になるのだ。金毘羅に食われるのだ」--私と金毘羅の神仏習合一代記。二十一世紀の世界文学に屹然とそびえ立つ、純文学の極北がここに著者圧倒的代表作! 第十六回伊藤整文学賞受賞作品。
イッポリート自殺未遂の翌朝、エパンチン将軍家の末娘アグラーヤとムィシキン公爵は、互いの好意を確認する。しかし、不可能な愛に悩むナスターシヤの呪縛から逃れられない公爵は、ロゴージンも交えた歪な三角関係に捕われ、物語は悲劇的様相を帯びていく。テンポ良く読みやすい新訳、完結。
超人的な力と鋭い頭脳で難事件を解決する黒服の私立探偵。ただし営業時間は夜間のみ。その正体はー短篇の名手リッチーが生んだユニークな名探偵カーデュラ・シリーズを全作収録した世界初の完全版“カーデュラの事件簿”。さらに「いい殺し屋を雇うなら」「さかさまの世界」など5篇を新訳で贈る。