小説むすび | 出版社 : 研究社

出版社 : 研究社

『ハックルベリー・フィンの冒けん』をめぐる冒けん『ハックルベリー・フィンの冒けん』をめぐる冒けん

出版社

研究社

発売日

2019年10月21日 発売

ジャンル

『ハックルベリー・フィンの冒けん』てゆうホンヤク本をよんでない人はおれのこと知らない、とはかぎらなくて、そのまえに出たいろんなホンヤク本で知ってる人もおおぜいいるらしいんだけど、まあそのへんはどっちでもかまわない。『ハックルベリー・フィンの冒けん』はシバタ・モトユキさんてゆう人がつくった本で、まあだいたいはただしくホンヤクしてあるらしい。おれはニホンごよめないけど、ともだちのクマダカメキチがそういってた。ところどころゴヤクもあるけど、まあだいたいはただしくホンヤクしてあるとカメキチはいう。べつにそれくらいなんでもない。だれだってどこかで、一どや二どはゴヤクするものだから。(本文より) こんな本ですーー あいさつ  ハックルベリー・フィンによる紹介 この本について  編訳著者による紹介 I 『ハック・フィン』入門(構成・執筆 柴田元幸) 1. ハック・フィン』基本情報  ハックルベリー・フィンとは/マーク・トウェインとは/『ハックルベリー・フィンの冒けん』の構成/  同時代の評価/文学的意義、後世への影響  『ハックルベリー・フィンの冒けん』の構成/同時代の評価/文学的意義、後世への影響 2.『ハックルベリー・フィンの冒けん』の英語   標準でない英語のあたたかさ/ハックが「語った」ものーーと同時に「書いた」もの 3. 『ハックルベリー・フィン』第1章徹底読解   対訳+詳注+〔さらにうるさいことを言えば〕 4. ハック英語辞典   adventureからtroubleまで 5. ハック名場面   厳しい自然/のどかな自然/ハックの葛藤/人間相手の冒険/ジムとハックの珍問答/哲学者ジム II 『ハック・フィン』をどう読むか 1. ハックはどう読まれてきたか   T・S・エリオット/大江健三郎/トニ・モリスン/平石貴樹 2. 現代アメリカ作家が語る『ハック・フィン』   レアード・ハント/レベッカ・ブラウン/スティーヴ・エリクソン(書き下ろし) 3.『ハックルベリー・フィンの冒けん』書評  横尾忠則/池内紀/谷崎由依 III 『ハック・フィン』から生まれた新たな冒けん 1. ハックの末裔たち   トウェイン自身による続篇/J・D・サリンジャー/ソール・ベロー/大江健三郎/ジョン・シーライ/   ラッセル・バンクス/ジョン・クリンチ/ノーマン・ロック/ロバート・クーヴァー/   カート・ヴォネガット 2. ノーマン・メイラー「ハック・フィン、百歳でなお生きて」 3. ジョン・キーン『リヴァーズ』 IV 『冒けん』に入らなかった冒けん   「ジムのユウレイばなし」   「筏のエピソード」 編著者あとがき

ハックルベリー・フィンの冒けんハックルベリー・フィンの冒けん

★柴田元幸氏がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。  ●オリジナル・イラスト174点収録  ●訳者 柴田元幸氏の作品解題付き(2017年、第6回早稲田大学坪内逍遙大賞受賞) 「トム・ソーヤーの冒けん」てゆう本をよんでない人はおれのこと知らないわけだけど、それはべつにかまわない。あれはマーク・トウェインさんてゆう人がつくった本で、まあだいたいはホントのことが書いてある。ところどころこちょうしたとこもあるけど、だいたいはホントのことが書いてある。べつにそれくらいなんでもない。だれだってどこかで、一どや二どはウソつくものだから。まあポリーおばさんとか未ぼう人とか、それとメアリなんかはべつかもしれないけど。ポリーおばさん、つまりトムのポリーおばさん、あとメアリやダグラス未ぼう人のことも、みんなその本に書いてある。で、その本は、だいたいはホントのことが書いてあるんだ、さっき言ったとおり、ところどころこちょうもあるんだけど。 それで、その本はどんなふうにおわるかってゆうと、こうだ。トムとおれとで、盗ぞくたちが洞くつにかくしたカネを見つけて、おれたちはカネもちになった。それぞれ六千ドルずつ、ぜんぶ金(きん)かで。つみあげたらすごいながめだった。で、サッチャー判じがそいつをあずかって、利しがつくようにしてくれて、おれもトムも、一年じゅう毎日(まいんち)一ドルずつもらえることになった。そんな大金、どうしたらいいかわかんないよな。それで、ダグラス未ぼう人が、おれをむすことしてひきとって、きちんとしつけてやるとか言いだした。だけど、いつもいつも家のなかにいるってのは、しんどいのなんのって、なにしろ未ぼう人ときたら、なにをやるにも、すごくきちんとして上ひんなんだ。それでおれはもうガマンできなくなって、逃げだした。またまえのボロ着を着てサトウだるにもどって、のんびり気ままにくつろいでた。ところが、トム・ソーヤーがおれをさがしにきて、盗ぞく団をはじめるんだ、未ぼう人のところへかえってちゃんとくらしたらおまえも入れてやるぞって言われた。で、おれはかえったわけで。 ーーマーク・トウェイン著/柴田元幸訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』より

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP