出版社 : 祥伝社
栃木県立那珂川水産高等学校は、内陸県にある日本唯一の水産高校。“脱普通”をもくろむ鈴木さくらは、淡水魚専門の水産高校“ナカスイ”に入学。青春を謳歌するはずが、鮎に恋する担任、魚ファーストの小百合、アニオタの地元ギャルかさね、釣りバカの渡辺ら、くせ者ぞろいで大打撃。水産実習では溺れかけ、おまけに少子化で学校は存続の危機。水没寸前、あるポスターが目に入り…。ナカスイの未来と青春をかけて、さくらは大勝負に挑む!
明治期に日本橋で創業の老舗マルトミ百貨店は、コロナ禍でメインバンクから追加融資を止められ、倒産の危機に瀕していた。憔悴しきった社長の富島栄二郎は、偶然にも四井商事の専務・徳田創と再会する。富島は若い頃四井で修業したことがあり、二人は同期だった。富島の窮状を聞いた徳田は同じく同期でプラチナタウンを作った山崎鉄郎を紹介する。藁にもすがる思いで山崎を頼る富島。同様の相談を複数受けていた山崎の中でそれらは化学反応を示し、再建案は思わぬ方向に向かい始めー苦況の日本を救う、目から鱗の再生構想とは!
とっとと嫁に行ってもらって、静かな余生を送りたいー万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は、齢十一にして悩みが尽きない。かしましい三人の姉ーお瀬己・お日和・お喜路のお喋りや買い物、芝居、物見遊山に常日頃付き合わされるからだ。遠慮なし、気遣いなし、毒舌大いにあり。三拍子そろった三姉妹の近くにいるだけで、身がふたまわりはすり減った心地がするうえに、姉たちに付き合うと、なぜかいつもその先々で事件が発生し…。そんな三人の姉に、鷺之介は振り回されてばかりいた。ある日、母親の月命日に墓参りに出かけた鷺之介は、墓に置き忘れられていた櫛を発見する。その櫛は亡き母が三姉妹のためにそれぞれ一つずつ誂えたものと瓜二つだったー。
旅行作家茶屋次郎は、有名俳優の高浜から友人の桐谷沙希の行方捜しを依頼される。沙希の自宅には「あきらめない。ぜったいにやりとげる」という謎の挑戦状が投函されていた。桐谷家の実家を探ると、二十年前に祖父が殺人事件を起こしたことも判明する。だが、相模川で沙希の溺死体が発見され、鎌倉では桐谷家を狙った凶悪事件が相次いで発生。依頼人高浜の過去にも、女性トラブルなど、暗い事件が浮上する!怨みに満ちた事件の裏にある犯人の狙いとは?歴史と自然が調和する古都を舞台に、茶屋の推理が冴える!
彼氏に振られ、職場をクビになり、賃料の値上げによって、今住んでいる部屋からの退去を余儀なくされた、踏んだり蹴ったりのシヨン。部屋探しのアプリで、格安の超優良物件に出会った彼女は即、入居を決める。格安なのには、理由があったー本来二人で暮らすはずの部屋を、四人で違法にルームシェアしていたからだ。優雅な独り暮らしには程遠いものの、そこそこ不自由のない生活を送っていたシヨンだが、ある日、オーナーが急遽、部屋を訪れる。慌てた四人は共同生活の痕跡を消すべく、その場しのぎの模様替えをし、借主の親族のふりをするが…(「他人の家」)。表題作ほか、人間心理の深淵をまっすぐに見つめた、傑作揃いの短編集!
“魔界都市“新宿””を生んだ巨大地震“魔震”。折しも新宿への亡命を図る某国王子の一行が区境の“亀裂”に呑み込まれたー。時を経て“区内”で首を千切ったり鉄棒で串刺しにする残虐な殺人が頻発。一方、人捜し屋秋せつらは消えた亡命王子と忠臣の捜索を依頼される。殺人は、ミイラとして地上に出た二人の、追っ手への反撃だというのだ。だが、彼らを狙うのは母国の刺客だけではなかった。米露も追う王子の身体に隠された、世界を破滅に導く力とは?やがて“新宿”を巻き込む災厄にせつらとメフィストは?シリーズ最新刊!
中国史上ただひとり、陸路で地中海に達した武将がいた。男の名は郭侃。祖父の代からモンゴルに仕え、攻城戦と砲術に長けた漢人だった。1253年モンゴル帝国は、イスラム世界の征服とさらなる領土拡大のため「フラグの大西征」を開始。37歳の郭侃は、15万の蒙古軍部隊長として西方遠征の途についた。新兵器「回回砲」をひっさげ、瞬く間に各地を陥落させる。だがエジプトを前に、隻眼の猛将バイバルスが立ちはだかり…。歴史に埋もれた智勇兼備の名将の一生を描く!
鎌倉にある名門・冬汪高校二年の滝蓮司は、眉目秀麗だが変人の卯月麗一とともに、生徒や教師から様々な依頼を受け解決する“便利屋”として活動している。ある日、道を歩けばスカウトが群がり、学内にファンクラブすら存在する超絶美少女・藤宮美耶から、蓮司はある依頼を受ける。美耶は双子の妹・沙耶とともに、狂気さえ感じさせる母親によって、異様すぎる管理下に置かれていたーまるで“人形”のごとく。蓮司と麗一がその依頼を引き受けたがゆえ、惨劇の幕は開く!舞台は、双子の姉妹とその母が住む白亜の豪邸。ふたりは特異な家族にまつわる、おぞましい事件の真相をひもといてゆく。第25回ボイルドエッグズ新人賞受賞作。
明治五年、博覧会の開催に沸く京。故郷丹後で天然痘にかかり失明の不安を抱えた少女ちとせは、鴨川でひとり三味線を弾いていた。素朴な調べに声をかけてきた俥屋の跡取り藤之助に誘われ、見知らぬ街をめぐるちとせ。閉じてゆく視界の中で懸命に焼き付ける、折々の風景、都の人々。一心に弾く三味の音は、やがて新たな光となり…。揺れ動く少女の葛藤と成長を、みずみずしく繊細な筆致で描く。第三回京都文学賞受賞作。
突然死した藤堂理沙の死因の調査をしてほしいー。依頼を受けた高円寺の私立探偵・常念勝は、理沙の親友である麻川マリから、理沙が小説教室で提出した作品『失踪』を渡される。誘拐された子どもが生みの親を訪ねるという内容は、かつて自分を「さらわれた子ども」と語っていた理沙そのもの。常念とマリは、理沙の執筆の足跡をたどり、神戸、京都、大阪へと飛ぶ。いないはずの弟、消えたパソコン、二人を襲う暴力…。複雑に絡まり合う謎と、輪郭をなくしていく理沙の正体。常念は理沙の遺したフィクションの迷宮にはまっていく…。
“ifの歴史”-あり得たかもしれない歴史を研究するゼミ「有賀研」に進級した南武大学三年の坂堂雄基。さっそく曾祖父が遺した大量の海軍資料に、准教授の有賀と院生の小春が目をつける。書斎の残る本家を訪ねると高齢の曾祖母が「戦地から持ち帰った大事なもの、取ってあるかしら…」と意味深な発言。謎の島の記述がある戦時中の日記も見つかり、「持ち帰ったもの」の正体を追うことに。やがて思いもかけぬ坂堂家の「秘密」が明らかとなり、さらに事態は人類史や国際社会に繋がる…。
駿河今川氏の家督を継いだものの、彦五郎氏真は隣国の圧迫に抗し切れず没落の一途を辿る。苦難の日々の中、氏真は近江の地で子どもたちの師となり、その未来に明るい光を見る。しかし、天下人・織田信長は、氏真が心通わせた子らを殺害。蹴鞠の名手である氏真が信長に見せた、最後の意地とは…(「蹴れ、彦五郎」)小田原征伐で奮戦した北条氏規を描いた「狐の城」、信玄が廃嫡した武田義信の苦悩の物語「晴れのち月」、江戸を築いた太田道潅を綴る「瞬きの城」など、珠玉の八編を収録。
橋倉藩の近習目付を勤める長沢圭史と団藤匠はともに齢六十七歳。本来一人の役職に二人いるのは、本家と分家から交代で藩主を出すー藩主が二人いる橋倉藩特有の事情によるものだった。だが、次期藩主の急逝を機に、百十八年に亘りつづいた藩主交代が終わりを迎えることに。これを機に、長らく二つの派閥に割れていた藩がひとつになり、橋倉藩にもようやく平和が訪れようとしていた。加齢による身体の衰えを感じていた圭史は「今なら、近習目付は一人でもなんとかなる」と、致仕願いを出す。その矢先、藩の重鎮が暗殺される。いったいなぜー隠居した身でありながらも、圭史は独自に探索をはじめるが…。名もなき武家と人々の生を鮮やかな筆致で映し出す。
母娘二人だけのドライブの帰り道、青沼柊子は峠の展望台で、暴行の現場を目撃する。暴漢は柊子たちを逃がすまいと車の前に立ち塞がるが、構わず柊子がアクセルを踏むと、サイドミラー越しに、男の影が崖下へと転落していくのが見えた。あの男は死んだのか?思い悩む柊子だが、県警捜査一課の刑事を務める夫の哲司には、正直に話せない。すると翌日、マンションのポストに告発文めいた脅迫状が投函されており…。私のせいで、父は死んだー。血の因縁が浮かび上がらせる、二十年越しの真実!次々と身の回りで起こる不穏な出来事に、刑事の妻・柊子は追いつめられていく。愛する家族を護るため、彼女が取った行動はー!?