出版社 : 祥伝社
砥石で潤う豊かな村には、禁忌の“掟”が存在したーー 隠密同心が御神体の正体と村の悪事を暴く! 因習に囚われた人間の愚かさと哀しさを描く傑作時代小説。 これは龍神の眼じゃ。富を生む砥窪の安寧と長命になる蓬をくださる。 隠密同心の長澤多門は、小日向藩石場村へ赴いた。そこは上物砥石を産する豊かな地。奉行所から、翡翠のごとき美しい砥石の闇取引根絶のため、探索を命じられたのだ。砥改人に扮して潜入するや、多門は次々と奇妙な風習に遭遇する。信仰を集める「おりゅうさま」と絶対に入ってはいけない禁足地の存在、男たちが二十五歳で長寿の祝いをすること、夜中にしか表に出ない不思議な兄弟ーー。だが、ある女の死によって、多門の前に村ぐるみの罪業が浮かび上がる……。
舞台のリハーサル中、不可解な死を遂げたひとりの女優。 事故なのか、自殺なのか、それともーー。 女はみんな、誰かを演じて生きている。 舞台の上でも、日常でも、 演じることをやめられなかった女優を描く、 今、大注目の著者があぶり出す女のリアル。 他人を演じている間だけは、ここにいていいんだと思える。 ゲネプロの最中に一人の女優が命を落とした。彼女の名は遠野茉莉子。開幕を直前に控えた舞台で主役を演じる予定だった。舞台演劇界で高い評判を得て、名声をほしいままにしていた茉莉子。彼女をその地位に押し上げたのは、劇作家の名倉敏史だった。 茉莉子の死からほどなくして、舞台の関係者が一堂に会するなか、名倉は重い口を開く。「遠野茉莉子を殺したのは、ぼくです」。やがて関係者たちも次々に、彼女について語りだす。茉莉子の「死」の真相を探るほどに、次第に彼女の「生」が露わになっていきーー。
忘れられたら楽なのにーー。 傷ついた言葉。消せない過ち。ふたりだけの約束。 すべてなかったことにしよう。この人生が変わるなら。 ミステリーの新鋭が贈る、奇妙であたたかな“忘れられない”物語。 小江戸川越の街にひっそりと佇む「Memory」は、“記憶を消してくれる”カフェ。不思議な力を持つ家入蘭のもとに、過去の失恋やトラウマに苦しむ人々が、今日も引き寄せられるようにやってくる。最愛の人に先立たれ生きる気力をなくした坂下麻季は、自分のことは忘れてほしいという亡き恋人の遺志にしたがい、Memoryを訪れた。記憶が完全に消去されるまでの間、川越の街をぶらつく麻季。そこに死んだはずの恋人が現れて……。麻季の最後のデートを描いた「あなたに似た人」や、表題作「いいえ私は幻の女」のほか、驚きと感動せまる追憶の物語集。
大陸に接した台湾領=金門・馬祖諸島ーー 中国動く! そのとき、日本は!? 重要影響事態⇒存立危機事態⇒武力攻撃事態! 新安保法制下、戦火は回避できるのか? 元幹部自衛官の著者が放つ超リアル軍事サスペンス最新傑作! 202X年春、中国国家主席が「金門・馬祖は中国の安全保障上の脅威」と発言、対岸に戦力を集結させ始めたーー! 防衛担当内閣官房参与の蓮田は、君田首相から衆院の解散について意見を求められた。アメリカ大統領選の今年、解散が重なれば、日米の政治的空白を突いて、中国が軍事行動に出る可能性を懸念するも、君田は解散を断行。はたして中国はそれを好機と動き出したのだ。 大陸に最短で数キロに接する金門・馬祖諸島は、第二次大戦後、台湾領として死守され、以降、複数回の交戦を経て、現在は緊張緩和が図られていた。だが、邦人救出に向かった空自機と中国軍戦闘機との接触事案が発生する。 首相と蓮田らは、新たに整備された平和安全法制に基づき、重要影響事態、存立危機事態、そして武力攻撃事態の対応を協議。事態は刻々と緊迫の度を増し、一触即発の危機が迫っていたーー。
2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位 『アーモンド』の著者が贈る、 すべての人の人生を応援する、心温まる物語。 失敗しても、また始めればいい。 つかんだ藁が浮き輪(チューブ)になって水面に浮かぶまで。 仕事なし、家族なし、運もなし、ないない尽くしの中年男の、人生改造プロジェクト! 一人の力じゃ難しいなら、他の人に応援してもらったらどう? どこにでもいる平凡な中年男、キム・ソンゴン。 仕事にも家族にも運にも見放され、彼はついにこの世に別れを告げる決意をする……が、 それさえもあえなく失敗してしまう。 この世に舞い戻ったソンゴンが見つけたのは、とある一枚の写真ーー そこには若かりし頃の彼が家族とともに写っていた。 何もかも今の自分とは違いすぎることに愕然とした彼は、写真の中の自分を真似てみようと、 まずは姿勢矯正から始めることに。そんな取るに足りない小さなチャレンジが、 やがてソンゴンの人生を大きく変えていくーー。
天下布武を目指す織田信長は、積年の宿敵石山本願寺を制圧するため、兵糧攻めを続けていた。陸からの物資は押さえたものの、海路が止められない。業を煮やした信長は、本願寺を支援する毛利の補給船を全滅させるよう、伊勢志摩の九鬼水軍に厳命する。ところが天正四年(一五七六)、木津川沖で九鬼水軍は、毛利軍擁する村上海賊に惨敗。陶器に火薬を詰めた焙烙玉によって焼き尽くされたのだ。この大敗から信長は、船が木造だから燃えると思い至る。ならばと、九鬼嘉隆と滝川一益に鉄甲船の建造を命じ、捲土重来の時を待つー。織田信長と九鬼水軍の仰天の知恵と活躍を描く、未曾有の歴史時代小説。
2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位 扁桃体が小さく“感情”がわからないユンジェ。 怪物と呼ばれた少年が愛によって生まれ変わるまでーー。 日韓累計150万部のベストセラー、待望の文庫化! 扁桃体が小さく、怒りや恐怖を感じることができない16歳の高校生、ユンジェ。祖母から「かわいい怪物」と呼ばれた彼は、目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、黙ってその光景を見つめているだけだった。事件によって一人ぼっちになった彼の前に現れたのは、もう一人の“怪物”ゴニ。激しい感情を持つその少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくーー。
わたしがわたしであるために、 物語がつづきを書いてと叫んでいる。 少女から大人へのーーはてしない物語。 中学生の本村結芽は、急死した伯母の部屋で、愛読する児童書の原稿を見つけ舞い上がる。『鍵開け師ユメ』シリーズは、孤独な小学校生活を過ごした結芽にとって、唯一の友達であり、心の拠り所だった。伯母は、その作者イズミ・リラだったのだ。最新作を夢中で読むが、しかし遺稿は未完のまま。どうしても続きが読みたい結芽は、自分で物語の続きを書くことを決意する。第一巻からページを繰り、主人公ユメの魔法の呪文を唱えると、物語の中へ飛び込めた結芽。ファンタジーの世界と現実を行き来できるようになり、自らの冒険を書き記していくが、何かが足りない。物語に息吹を吹き込むには、伯母の、イズミ・リラの人生を知らなければーー。 現実を生きる自分、ユメとしての自分、伯母を探す自分。結芽の本当の冒険が、はじまった!
「スウィンダラーハウスへようこそ。皆様にはこれから、ここで詐欺師として働いていただきます」。フードデリバリーサービスの配達員として働くアオイは、依頼者の自宅内でふいに意識を失う。目覚めるとそこは、どことも知れぬ謎の密室。集められた若者6人は、道化の仮面をつけた女性から「詐欺で1億稼ぐまでこの部屋からは出られない」と告げられる。果たしてアオイたちはこのハウスから、警察の捜査の手から逃れられるのか? 「義賊を名乗る特殊詐欺グループ」vs「あらゆる手段で逮捕を目指す警察」の息詰まる頭脳戦を描いた、令和の傑作コンゲーム小説!
一行を読み逃せば、謎の迷宮から出られない。 奇想の歌野ワールド、珠玉の作品集 新しい価値観のゆらぎが生み出す7つの悲劇 ボーナス・トラック 青春ショートショート「花火大会」 著者の企みに舌を巻く!哀しみと可笑しみの令和ミステリー 小学生のときは女男と指をさされ、母親からはあなたの代わりは誰にもつとまらない、胸を張れと言われる。平穏を求めて入学資格に性別条項のない私立の中高一貫校に入るが、いじめはさらにエスカレートし、みじめな姿がSNSで世界中にさらされていく。それは僕の名前が太郎だからーー(「彼の名は」)
ミイラ化した死体は何を語る? 引きこもりを抱えた家族を襲う悲劇。 彼らは被害者か、それともーー。 光崎教授が抉り出す、深い闇とは? 死体は嘘を吐かないーー傑作法医学ミステリー第5弾! 家族はどこで一線を越えてしまったのか 浦和医大法医学教室にミイラ化した遺体が運び込まれた。亡くなったのは40歳の独身女性で、死後2週間が経っていた。 まだ4月だというのに埼玉で見つかった4体目の餓死死体だ。埼玉県警の古手川によると、女性は大学受験に失敗して以来20年以上引き籠っていたという。同居していた70代の両親は先行きを案じ、何とか更生させようと民間の自立支援団体を頼ったが、娘は激昂し食事も摂らなかったらしい。彼女はなぜ餓死を選んだのか? それとも親が嘘を? だが、解剖を行った光崎教授は、空っぽであるはずの胃から意外なものを見つけるがーー。
わたしは母を傷つけた。たった一人の肉親を、言葉のナイフでーー。 あれから13年、後悔ばかりで大人になった。 でも、孤独に負けずにいられたのは、母の、仲間の、「うた」 があったからーー。 シリーズ累計54万部突破!『ひと』 『まち』 『いえ』に続く感動の青春譚 母がわたしを産んだ歳になった。今、わたしに、湧き出るものがあるーー。 27歳の古井絹枝には、晴らすことのできない後悔があった。中学生の頃、地域の合唱団に所属する母に「一緒にうたおうよ」と誘われたものの、撥ねつけてしまったのだ。母が秘めていた想いも知らずに・・・・・・。 大学時代、絹枝はバンドを組んでいた。 ギター担当は伊勢航治郎。バンド解散後もプロを目指したが芽が出ず、だらしない日々を送っていた。 ベース担当は堀岡知哉。バリバリ働く妻がいるが、自分はアルバイトの身で、音楽への未練も僅かにある。 ドラムス担当は永田正道。大学卒業後、父が越えられなかった資格試験の壁に挑もうとするが・・・・・・。 かつての仲間が、次の一歩を踏み出そうとする物語。
海あり県には負けられない! ダイビング、手漕ぎボートに海鮮料理。川で鍛えた腕で挑む、ライバル校との大勝負! 栃木県発ベストセラー! 全国唯一、内陸県の水産高校生が繰り広げる、笑いと涙の青春デイズ第2弾! 栃木県立那珂川水産高校(ナカスイ)の食品加工コースに通う2年の鈴木さくらは、海洋実習が楽しみで仕方ない。というのも、実習先の茨城県立那珂湊海洋高校の関清斗に一目惚れしたから。海のありなしをめぐり両校の生徒がしのぎをけずるなか、さくらは実習のダイビングや手漕ぎボートで猛アピール、関の両親がデパートの水産加工食品フェアに出ると知れば、自らも出店を画策。ところがアフターコロナの経済難で、高校生活を脅かす危機が勃発。起死回生の策として、さくらはフェアの売上トップをねらい食品開発に奔走するが……。実習に料理に大奮闘! 大感動の青春物語。
作家 貴志祐介氏、絶賛。 『ループ・オブ・ザ・コード」の著者が紡ぐ、未体験ゾーン突入の歴史ハードボイルド超大作。 「ほんの一瞬だけなら何でも手に入れられる、俺の唯一の特技だ」 第二次世界大戦終結後、米軍占領下の琉球。その最西端の与那国島では、一本の煙草から最新鋭の義肢まで、ありとあらゆるものが売買される密貿易が行なわれていた!腕利きのサイボーグ密貿易人・武庭純は、ある日顔馴染みの警官からとんでもない話を耳にする。終戦とともに殺人鬼と化した元憲兵が島に上陸したというのだ。元憲兵探しに乗り出した武だったが、時を同じくして、謎のアメリカ人女性から 「姿も形も知れない “含光” なる代物を手に入れろ」という奇妙な依頼が舞い込んでくる。相棒の島人とともに奔走する武は、やがて、世界を巻き込む壮絶な陰謀に巻き込まれていく……。 琉球と台湾の史実をもとに描き出す、 サイバーパンク巨編! 一攫千金の夢が渦巻く欲望の“街”その男は、ただ魂を求めたーー
お前に消防士を名乗る資格はない。 精鋭揃いの消防軍団を目指せ! 3カ月間続く地獄の研修に挫折寸前の女消防士が挑む! 傑作パニック小説『炎の塔』『波濤の城』『命の砦』につづくシリーズ最新作! 弱い。でも諦めない 近年予想される首都直下地震に備えて設立された銀座第一消防署。日本中の精鋭を揃える最強の消防軍団だ。今回、新隊員を選抜するため、全国からエース級の若手30名が3カ月間の研修に招集された。メンバーのうち女性はふたり。そのひとりが神谷夏美だった。体力も技能も劣る夏美がなぜ選ばれたのか? 脱落率は91%。一歩間違えれば、自分の命だけでなく仲間の命も奪いかねない極限状態の中、鬼教官の容赦ない訓練についていけない夏美は、研修生たちに一刻も早く辞めろと迫られる。そんな中、大規模なマンション火災が起こり夏美たちにも出動命令が!
「まだまだこれから、なんだってできるわよ、あたしたち」 照子と瑠衣。ともに七十歳。妻を見下す夫を捨て、 老人マンションの陰湿な人間関係を見限って、 女性ふたりの、逃避行の旅が始まったーー。 痛快で心震える、最高のシスターフッド小説! 「身勝手な女」と呼ばれたって一ミリも後悔なんかしないわ。 照子と瑠衣はともに七十歳。ふたりにはずっと我慢していたことがあった。照子は妻を使用人のように扱う夫に。瑠衣は老人マンションでの、陰湿な嫌がらせやつまらぬ派閥争いに。我慢の限界に達したある日、瑠衣は照子に助けを求める。親友からのSOSに、照子は車で瑠衣のもとに駆けつける。その足で照子が向かった先は彼女の自宅ではなく、長野の山奥だった。 新天地に来て、お金の心配を除き、ストレスのない暮らしを手に入れたふたり。照子と瑠衣は少しずつ自分の人生を取り戻していく。照子がこの地に来たのは、夫との暮らしを見限り、解放されるため。そしてもう一つ、照子には瑠衣に内緒の目的があったーー。
おなじ光をみていたーー 夕暮れを染める一瞬の不思議な輝きが、ふたりを結び付けて離さない。 成熟した男女が行き着くのは、後悔か、希望か。 至高の愛を描く恋愛小説。 直木賞受賞作『ほかならぬ人へ』から14年。 折り重なる出会いの神秘を問う白石恋愛文学の到達点。 「あなたのせいで万引きと間違えられてるの。あなたが三日も帰ってこないから」 込み入った事情は不分明だが、俺はことさら丁寧に男に頭を下げる。 「うちの妻が、どうやら誤解をさせるような行動を取ったようで……」 (本文より抜粋) スーパーの人気商品を盗んだ野々宮志乃は、万引きGメンから声をかけられる。咄嗟に志乃は、店の駐輪場にいた箱根勇に、「あなた」と夫のごとく呼びかけた。勇は反射的に夫婦を装い、志乃を助けて……。夫に先立たれた四十代販売員の志乃と、不倫が原因で離婚した五十代会社員の勇。親しげな言葉を交わすようになったふたりは、断ち切れぬ絆を感じる。傷を抱えた大人たちが辿り着いた場所とはーー。
星めぐる家族の不協和音!? 占い師を父に持つ、男ばかりの四兄弟。 一枚のタロットを引き金に、ほろ苦い過去や秘密がうきぼりに。 ささやかな幸せをめぐる心優しい物語。 『ありえないほどうるさいオルゴール店』の著者が贈る、ツイていそうでツイていない家族のハートフルな日常! もがくほど、事態は悪くなるでしょうーー。 占い師の父を持つ東家は、男ばかりの四兄弟。上から研究者の朔太郎、占い師の真次郎、会社員の優三郎、大学生の恭四郎と両親が、ほどよいバランスで暮らしている。ある日、優三郎が趣味のタロットで<最凶>のカードを引き当てた。直後、優三郎と彼女の秘密が真次郎によって恭四郎に明かされ、信頼関係に亀裂が入ってしまう。不運の連鎖は止まらない。朔太郎や両親にも波及し、隠れていたトラブルが表面化しはじめた。あげくの果てに家族関係を崩壊させそうな女性まで現れ……。噴出する秘密と本音に大わらわの東家に、平穏な日常は戻るのか!?
住むと幸せになれる不思議な場所? 三十年居つく教授、空手の有段者、DV夫から逃げたシングルマザー。 「東京バンドワゴン」シリーズの著者が贈る! ワケあり住人と強面の管理人で繰り広げられる心温まる人間ドラマ! 逃げて辿り着いたその〈場所〉が守ってくれる 小説家になった羽見晃が入居を決めたのは、墨田区鐘ヶ淵にある築六十年、二階建ての〈マンション フォンティーヌ〉だった。真っ白いアーチの入口、中庭には噴水と少女像、花壇もあって、フランスにありそうな建物。管理人嶌谷さんの腕には本物の入れ墨があったり、大家のリアーヌさんは七十八歳のフランス人だったり色々変わっている。三十年もいる教授や生まれた国を追われたハーフの男性とかワケありな人が多く住んでいるけれど、みんな優しくて仲がいい。ガーデンパーティ中、三号室の三科さんが元DV夫から追われていることを知り、住人たちで役割分担をして守ることに。でも同時に、思わぬ人物がマンションを訪れていて……。
人生得たり、喪ったり、出会ったり、別れたり。 大切な人との幸せな記憶ーー 書きかけの本に隠された秘密は? 人は弱い。弱いからこそ、誰かのために生きていく。 「第1回警察小説新人賞」受賞作家の優しさに満ちた物語。 深川の新兵衛長屋に住む十三歳のお綾。三年前に母を亡くしたが、大工の父直次郎、弟正太と慎ましく暮らしていた。ある日、父の朋輩重蔵の店賃滞納で揉めている中、隣に坂崎清之介という写本を生業とする侍が越してきた。本好きのお綾は、部屋の片づけを束脩代わりに坂崎に手習いを見てもらうことに。そこで書きかけの本 『つきのうらがわ』を見つける。子が亡き母の住む月へ辿りつこうとする物語だった。「続きを考えさせてくれませんか」とお綾は頼みこみ、正太と重蔵の子おはると一緒に考え始める。次第に子どもたちは優しい坂崎を慕うようになる。だが、坂崎には人を殺して生国を追われたという噂があったーー。