出版社 : 祥伝社
二〇一六年七月三十一日、一人の力士がこの世を去った。小柄ながら躍動する筋肉で大型力士を次から次へと投げ飛ばす、伝説の横綱千代の富士。国民から愛されたスターの裏には、想像を絶する苦労があった。左肩の脱臼癖。幕下落ちの屈辱。生まれたばかりの三女の訃報。飛び交う引退の噂。そして気力、体力の限界ー剥き出しの闘志で我々を虜にした、昭和の名横綱の記憶。
竜閑橋袂で、美人女将の愛嬌と絶品茶漬で繁盛する『紅葉屋』の娘が攫われた。橋の管理を頼みに来ていた橋廻り立花平七郎は探索に乗り出す。凄腕の定町廻りだった平七郎は、閑職と揶揄されつつも数々の難事件を解決、町人の信頼を得ていたのだ。やがて拐かし犯が房次郎という浪人を捜していたと発覚すると、女将は狼狽する。房次郎は大和の国で別れた夫だった…。
足袋問屋『山形屋』への婿入りを次男から切望され、鼻緒問屋『能代屋』の主は悩んでいた。相手は美人だが、高額の持参金、趣味三昧、病死した婿は毒殺だった、と黒い噂ばかり。真相究明を頼まれた青柳剣一郎は、仲人や検視した同心を尋ね歩くが、前夫の死因は揺るがない。そう結果を報告するも、次男が婿入りした直後に事件が!奥深い男女の闇を剣一郎が斬る。
百万石の栄華も今は昔。財政難に喘ぐ加賀藩では、大半の者が大槻伝蔵による藩政改革を歓迎しつつも、その強引なやり口からは目を背けていた。金沢城下を訪れた清之助の前にも、金十両で雇われた刺客関左兵衛が現われる。誰の差し金なのか?一瞬の斬り合いを制した清之助は、関の遺言に従い、十両を菩提寺の墓前に届けるべく、一路高岡を目指すのだが…。
祖母が祖父を介護する家に居座る孫、唐突に同棲を快諾した恋人、鉢合わせした住人に違和感を抱く空き巣…。変わりゆく町で繰り広げられる一筋縄では解けない事件とは?精緻で心温まるミステリーの玉手箱。
愛媛県南予町の町役場職員・沢井結衣は、窓際部署と噂される“推進室”に異動した。決められた業務はなく、押しつけられるのは面倒事ばかり。ボンクラ町長は的外れな町おこし政策を打ち出すし、住民からは様々な苦情が舞い込むし、おまけに昼行灯の北室長と偏屈な一ツ木さんは、将棋ばっかり打ってるし…。悩める結衣だったが、田舎町の危機はすぐ近くに迫っていた!
両国川開き大花火の深夜、薬研堀で勘定組頭が斬殺された。刀を抜く間も与えぬ凄腕に、北町奉行所平同心の日暮龍平は戦慄した。先月の湯島切通しと亀戸村堤での殺しに続く凶行だった。探索の結果、いずれの現場近くにも深川芸者くずれの夜鷹の姿が。やがて、人斬りと女のつながりにとどいた龍平は、悲しみと憎しみに包まれた真相に愕然としー剛剣唸る痛快時代!
“奉行所に見放され、悲惨な末路を辿った人々の怨みを晴らしてほしい”公事宿大黒屋は真っ当な裁きも受けずのうのうと生きる悪の始末を託した。千坂唐十郎の直心影流の腕を見込んだのだ。唐十郎は許嫁を自刃に追いやった藩士を斬り脱藩、江戸へ逃れてきた剣客であった。早速、乾物屋主の不可解な失踪を探るが、鍵を握る男が斬殺されると別事件との関連が浮上し…。
若狭小浜城下から敦賀へと向かう若狭路。道中、騎馬軍団海天狗の乱暴狼藉を目の当たりにした金杉清之助は、南蛮兜の首領を船上の決闘で討ち果たした後、鯖江城下から永平寺へと足を運ぶ。武者修行に出て三年と四月。「血と怨念に穢れた身を浄め、初心に戻りたくなるときがございます」と申し出た若武者は、食を断ち、暗黒の岩穴に篭もる「三十三日闇参籠」に挑む。
特別感受性保持者ーEspecially Sensitivity Totally Bringerの頭文字から“エスタブ”と呼ばれる超人たちによって争われ、その勝者の“予言”が世界経済の流れを決定すると言われる“パンゲア・ゲーム”。タワーの如く卓上に積み上げられた777個のピースを移動させ、誰が崩すかで勝敗を決する一見単純な遊戯だが、“未来視”ができる者たちが戦うとどうなるのか?この究極の戦いの場に、かつて前人未踏の連勝記録を打ち立てたあと消息を絶っていた伝説のプレイヤーが復帰、息詰まる死闘の幕がいま上がった!『ブギーポップは笑わない』の著者が贈る、究極の頭脳&心理戦!
鉄道ファンに人気の信州・姨捨駅で、休暇中の亀井刑事が奇妙な服装の男を目撃して驚愕する。東京・麹町ミスキャンパス殺人事件の容疑者中西がアリバイを証明する存在として挙げた男と瓜二つだったのだ。だが、男は見つからず、中西は送検された。冤罪なのか?十津川警部は大々的な男捜しを開始するが…!?(「姨捨駅の証人」より)四つの難事件に十津川が挑む傑作推理集。
新宿署一の嫌われ者百面鬼竜一は、管内の暴力団から金品をたかり、押収品の麻薬や銃を横流しする小悪党の刑事だった。だが、捜査で知り合い、関係を結んだ能塚亜由を拉致され、犯人に難民救援活動家の暗殺を命じられる。百面鬼は五輪の候補に選ばれるほどのライフルの名手だった。苦悩の末に狙撃を実行した百面鬼。ところが、見えざる敵はさらなる暗殺を要求し…。
十七歳の洋子は佐久間という工員の青年と恋に落ちる。だが仲間二名が殺害される事件が起き、犯人と疑われた彼は姿を消す。洋子は佐久間を追って故郷である東北の寒村を訪ねると、かつて東京で彼が飼っていた三毛猫を見つける。村人らは佐久間はいないと口を閉ざし、洋子を監視しはじめた。恋人との再会を信じる洋子を待っていたのは、あまりにも残酷な衝撃の結末だった。
武州忍田は幕府の台所を支える最重要拠点である。年の瀬、公儀御鳥見役とその手下が斬殺された。領主の阿部家は追剥ぎ強盗の仕業とするが、公儀目付役は疑念を隠さなかった。同じ頃、唐木市兵衛は俳諧の宗匠を訪ねていた。彼は阿部家の元家士で、忍田までの旅の供を依頼される。破格の給金を訝しんだ市兵衛が真意を問うや、捕らえられた友の救出に向かうと…。
榎本釜次郎武揚。日本最大最強の軍艦「開陽」を擁して箱館戦争を起こした男。旗本出身ではあるが、海軍伝習所に学び、三年半ものオランダ留学を経験した男。科学者であり、技術者であり、万国公法に通じた法学者ー幕末から維新を駆け抜けた、「武士の鑑」か「武士の風上にも置けぬ」裏切り者か。真にあるべき「新しい日本」を唯一捕りに行った、不屈の挑戦の物語!
二ツ森伝次郎たち戻り舟同心は憤っていた。一件の子供の拐かしから、残忍な人買い組織を五十年間野放しにしていた疑いが浮上したのだ。やがて、伝次郎の右腕・鍋寅の死んだ倅・吉三が、その存在に気付いていたと知る。御用聞きとして一人真相を追い、志半ばで斃れたのか…。子供たちと吉三の無念を晴らすため、捕物に命をかける熱い爺が、弔い合戦の火蓋を切る!
身内の死を機に武士を捨て、無宿人となった新九郎は、偶然出会った国定忠治に使いを頼まれ松井田から高崎へ向かっていた。だが道中、古寺に野宿する色白で愛らしい鳥追いの初音になぜか誘われる。初物だと羞じらう言葉とは裏腹な初音の大胆さに二度も絶頂を迎えた新九郎。翌日別れを惜しみつつ高崎に着くと、聞き覚えのある甘い唄声が…。美女と中山道を行く悦楽記。
罪なき農民が斬られ、女房、娘らが夜伽を強要される。江戸近郊の村での勘定方の非道を聞き、本多控次郎は怒りに打ち震える。だが勘定奉行の名で斬殺が行われていると知り、それが周到な謀略と気付く。「浮かれ鳶」と渾名され、暢気な長屋暮らしの貧乏旗本控次郎だったが、実弟で養生所与力の片岡七五三之介や、地本問屋の手代辰蔵らと共に、許し難き悪を討つ!
一年に及ぶ柳生逗留を終え、惣三郎と結衣が江戸に帰ってきた。しのと結衣は抱き合って再会を喜ぶ。惣三郎は皆に飛鳥山菊屋敷での静養を薦められ、すぐにも精出して働きたいと渋るが、人々の厚意を受けることにした。息子や娘、弟子の成長を見るにつけ、自らの老後に想いを馳せる惣三郎。そんな折、近隣の「烏鷺荘」に引っ越してきた老人が、惣三郎を囲碁に誘うが…。