出版社 : 素粒社
「俺はこの町で一番頭が悪く、なんのコネやツテもなく、やる気も金もないクソみたいな道具屋だ」 関西某所のとある古道具店。その店主は、かつてブログが登場する以前のインターネットで多くの読者を魅了した伝説のテキストサイトの著者だったーー中卒、アングラ商売、アルコール依存症、ホームレスなど破格の経歴をもつ道具屋店主による、金と汗と汚物と愛にまみれた“冒険”の数々を、唯一無二の文体でつづった痛快私小説。 「俺だけのルールがある。俺専用のやつがな。誰だってそうだろ? 俺たちは世界のすべてを全員で共有してるわけじゃない。たまに交錯したり、部分的に共有してるだけだ。だから自分の世界を生きるのには、自分だけのやり方がいる。他のやつのやり方じゃダメなんだ」 【推薦】 古物のみならず人間の本質を見抜く確かな目。群れない。他人の評価に無関心。 クソをクソのまま描く作者の口の悪さと無類の筆力に圧倒された。 ーーこだまさん(作家) 溢れ出す悪態、自分流儀の厳守、ときに逡巡なき暴力、そして猫。ハードボイルドさながら、古道具屋の日々をタイトなビートで描く、こんなクールな「業務日誌」が、かつてあっただろうか。 ーーbooks 電線の鳥 原山聡矢さん 世間、社会そして自分自身に対して悪態をつきまくりですが、その底にある優しさや愛、その在り方が滲んでいて読みながら愛おしくなってくるから不思議です。この人に後始末をしてもらえるなら成仏できそう。 ーー湘南 蔦屋書店 八木寧子さん 三途の川を渡れない品々を汗みずくでかき集める因果な稼業の秘密を川井さんは見事に物語化してしまった。漂泊の果ては乱暴で温かい世界だ。 ーー平井の本棚 津守恵子さん 川井さんの言葉ざまが好きだ。ロクでもないし、本物だ。というか、マジで面白い。噓じゃない。残念ながら、最高だ。川井俊夫を読まないという選択肢があるひとが羨ましい。ぼくにはなかった。ありえなかった。 ーー紀伊國屋書店 国分寺店 猪股康太さん この「途方もなくデカい肥溜め」という世界の中で、何かを、誰かを、見つけたいと思っているあなたへ。 ーーBOOKS青いカバ 小国貴司さん 読み始めは荒々しい言葉に少し身構え、自分には縁のない世界だな…なんてことを思っていました。読み進めていくうちに何だか憎めない、さらには愛おしさすら感じてしまう不思議な魅力がありました。破天荒な人生を歩んできた川井さんにしか書けない唯一無二の作品。すでに次作が待ち遠しくすらあります。 ーー紀伊國屋書店 吉祥寺東急店 徳光のぞみさん
池澤夏樹さん推薦!!! 「この人、何者? 極上のエッセーで、文体が弾み、とんでもなく博識で、どうやらフランス暮らし。俳句を作る人らしい。一回ごとに漢詩の引用があるが、その漢詩はいつも角を曲がったところに立っている。しなやかな和訳と読解が続く。 世の中は驚きに満ちている、と改めて思った。」 (本書帯文より) フランス在住の俳人・小津夜景さんがつづる、漢詩のある日々の暮らしーー 杜甫や李賀、白居易といった古典はもちろんのこと、新井白石のそばの詩や夏目漱石の菜の花の詩、幸徳秋水の獄中詩といった日本の漢詩人たちの作品も多めに入っていて、中国近代の詩人である王国維や徐志摩も出てきます。 巻末には本書に登場する漢詩人の略歴付。 はじめに いつかたこぶねになる日 それが海であるというだけで 釣りと同じようにすばらしいこと 虹をたずねる舟 翻訳とクラブアップル とりのすくものす タヌキのごちそう おのれの分身と連れ添う鳥 あなたとあそぶゆめをみた 空気草履と蕎麦 屛風絵を旅する男 はだかであること 愛すべき白たち はじめに傷があった 隠棲から遠く離れて スープの味わい イヴのできごと 海辺の雲と向かいあって 生まれかけの意味の中で 砂糖と試験管 紙ヒコーキの乗り方 春夜の一服 ベランダ暮らしの庭 文字の消え去るところ 鏡とまぐわう瞳 無題のコラージュ ひょうたんのうつわを借りて 貝塚のガラクタたち ファッションと柳 旅行の約束 わたしの祖国 おわりに 本書に登場するおもな詩人たち 漢詩出典 初出