出版社 : 言叢社
◆1922年2月2日、ジョイス40歳の誕生日に『ユリシーズ』は出版された。最新研究を踏まえた7つの精選された論考により、世界文学の金字塔を気鋭の研究者が読み解く。植民地主義・文化・教育・世界大戦との関わりなど、ダブリンを舞台に新たな地平が開かれる。作品の構造・背景を知るための初心者向け27のコラムも充実。 ◆ジョイスほどにダブリンを愛し、街路の隅々までを精細に書き遺した作家はいない。ヨーロッパの西の果ての国の都市での、人びとの日常と出来事のたった一日の記述。作者だけでなく、何人もの登場人物が、今も確かにそこにうごき存在している。《世界と世紀の創生》でもあるような「ふしぎな規模」の実験文学を読み解く。 【主な目次】まえがき(吉川信)/序にかえてーー『ユリシーズ』とアイルランド自由国の誕生(横内一雄)/ジョイス『ユリシーズ』--各挿話のあらすじと解釈のポイント(各章執筆者分担)/第一章 手紙を読む/読まないブルームを読むーー『ユリシーズ』の手引きとしての手紙(小林広直)/第二章 階級の授業ーー『ユリシーズ』第二挿話における植民地教育と社会的分断(田多良俊樹)/第三章 第四挿話と腎臓を食らう男(桃尾美佳)/第四章 『ユリシーズ』と動物の痛みーーレオポルド・ブルームの優しさについて(南谷奉良)/第五章 「セイレン」・喫煙(スモーキング)・誘惑(セダクション)(平繁佳織)/第六章 泥、肉、糞ーー戦時小説としての『ユリシーズ』(横内一雄)/第七章 パラドクシスト・スティーヴンのシェイクスピア論ーー重力、今、可能態の詩学(金井嘉彦)/附編 『ユリシーズ』を読むための二十七項(各章執筆者+コラム執筆者[戸田勉・新井智也・湯田かよこ岩下いずみ・河原真也・田中恵理・山田久美子])/フォトエッセイ[各章末]/あとがき(金井嘉彦)/執筆者紹介/索引
すべてはダブリンから始まった。20世紀最大の作家の世界へ、ようこそ。 執筆一一〇年の視差で甦るジョイスのダブリン市民像 《おもな目次》序 はじまりのジョイス 吉川 信/第一章 「姉妹たち」 金井嘉彦/第二章 「遭遇」 小島基洋/第三章 「アラビー」 桃尾美佳/第四章 「エヴリン」 奥原 宇/第五章 「レースの後」 滝沢 玄/第六章 「二人の伊達男」 丹治竜郎/第七章 「下宿屋」 田多良俊樹/第八章 「小さな雲」 横内一雄/第九章 「複写」 南谷奉良/第十章 「土」 坂井竜太郎/第十一章 「痛ましい事件」 小林広直/第十二章 「蔦の日の委員会室」 戸田 勉/第十三章 「母親」 平繁佳織/第十四章 「恩寵」 木ノ内敏久/第十五章 「死者たち」(一) 中嶋英樹/第十六章 「死者たち」(二) 河原真也/第十七章 「死者たち」(三) 吉川 信/あとがき 金井嘉彦/引用・参考文献一覧