1988年6月1日発売
王朝文学を華やかに彩った清少納言とはどんな人間であったか。-結婚、破局、中宮定子への献身そして公達・殿上人との恋模様など、謎の人間諾子の真実に迫る著者はじめての書き下ろし歴史小説。
美人の評判の保母・芝山里枝が顔を滅多打ちにされて惨殺された。新聞記者の根津が、死体に化粧を施す仕事に従事する影の薄い、老婆のような中年女に会ったのはその葬儀の日のことだった。事件を追う根津の前に、やがて明らかになるこの2人の女の因縁。そして真相に迫る根津にとりついたあの女の不気味な死の影ー表現作のほか、4篇の傑作ホラー・ミステリーを収録。
「どう?…触ってもいいのよ」少年の、唾を呑みこむ音が響くー。美人のスタイリスト・小夜子は、若くしてファッション界に君臨し、まだ初々しさの残る少年モデルを物色しては、貪り喰っているー。そんな小夜子を付け狙う男は、少年との写真をネタに脅迫する。凌辱の限りをつくした男の欲望で、初めて被虐の悦びを知り、果てもなくつづく獣欲に、小夜子は牝の泪をながすー。
福岡黒田藩6石取りの足軽の子に生まれ、父母妻子を捨てて志士の道に投じた歌人国臣は、西郷隆盛に「藩と幕府は無用有害。時代の要求は民衆を柱にした新しい国づくり。実現の道は公武合体でも佐幕でもない。ただ討幕のみ」と、火矢の飛び出す眼光で開眼を迫る。天皇に「回天三策」を献じると、討幕の潮流に火を点じるため生野に挙兵-。知られざる維新史の深部に迫る。
古びた洋館の一室、正装に身を包み大量の花の中に横たわって死んでいたのはこの館の主人で醜い容姿のために同僚たちから蔑まれ疎外されてきた男だった。まもなく復讐を告げる手紙が同僚たちに届き、彼らは次々に無残な死を遂げてゆく。そして「死者による殺人」という奇怪な事態の背後にはさらに陰惨で恐るべき真相が-。人の心の闇の部分を鋭く衝く、戦慄の書下ろし本格推理。