1989年8月3日発売
大岡越前大岡越前
後の世、名奉行といえば第一に名前をあげられる大岡越前。だが、彼の前半世は決して人に誇れるものではなかった。元禄の悪風に染まり、水茶屋の女お袖との間に一女までなしたが、一緒にはなれない。やがて、彼が江戸町奉行へ抜擢された時、お袖の復讐が彼を待っていた。-みずから蒔いた種をみずから裁く人間大岡越前の苦悩。著者が戦後の混乱した世相に、深い想いを託して描いた意欲作。
新・平家物語(十)新・平家物語(十)
平家追討の院宣ならびに朝日将軍の称号を賜わり、生涯最良の日々を味わう義仲。だが、彼の得意満面の笑みも次第に歪みはじめる。牛車の乗り方ひとつ知らない田舎そだちだから、殿上づきあいは苦手だ。相手は老獪な後白河法皇。義仲の凋落は水島合戦から始まった。反撃の平家、背後から襲いかかる鎌倉勢、加えて院方ーと義仲は四面楚歌。さすがの一世の風雲児も、流星の如く消えてゆく。
新・平家物語(十一)新・平家物語(十一)
源氏の内輪もめが幸いして、都落ちした平家は急速に勢力を挽回していた。西海は一門の軍事力の温床、瀬戸内には平家の兵船が波を蹴たてて往きかい、着々と反攻の秋を窺っていた。わけて一ノ谷は天険の要害、平家自慢の陣地だった。加えて兵力では、平家は源氏の何倍も優位にある。しかし、地勢と時と心理とは、まったく平家に不利だった。義経軍の坂上からの不意打ちに算を乱して敗走する。
新・平家物語(十二)新・平家物語(十二)
一ノ谷の合戦から屋島の合戦までには、1年の月日が流れている。さきの合戦に大功をたてながら、なんら叙勲の沙汰もうけぬ義経。そしていったん任官後は、鎌倉に断わりもなく、と不興を買い、平家追討使の大役も範頼に奪われた義経。鎌倉どの差向けの花嫁も、彼の心を暗くする。だが、源氏は義経をまだ必要としていた。-西国攻めの範頼軍は備前児島に立往生し、平家軍が猛威をふるう。
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