1990年11月1日発売
『伝奇集』はアルゼンチンが生んだラテン・アメリカ文学の旗手、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの代表作である。不思議な『百科事典』をめぐる奇譚「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」、夢の世界の〈秘儀〉を描いた「円環の廃墟」、永遠なる図書館の神秘を語った「バベルの図書館」、占星術や“無限のくじ引き”の歴史を考察する「バビロンのくじ」他、全17篇を収録。伝説、神話、博物誌等、虚実織り混ぜた、さまざまな書物に対する限りない偏愛に満ちた作品集。
「私がいろいろと教えてあげる。優しく、上手にね」百合子は英語を教えてくれるときとは別人のような艶っぽい声で囁き、里加のジーパンのファスナーを下げはじめた。好奇心のおもむくまま、自由奔放に行動する現代女性たちの実態を赤裸々に描く官能ロマン。
すみきった夜気をふるわす天使の合唱、星をしるべに馬小屋をたずねあてた羊飼いや賢者たちの話は、牧歌的な美しいクリスマスを連想させる。しかしほんとのクリスマスは、ローマの圧政のもと、町はずれのかいば桶を産所とする、ヘロデ王の幼児虐殺の手も迫ってくり、暗い陰に彩られていた。ところがその暗さ、本来のクリスマスの暗さは、人々に深くいい知れぬ慰めと希望をもたらすのである。『クリスマスの短編』はわれわれの世紀末の現実のなかで、今、現に、この力がどのようにその慰めと希望を人々にもたらすかを描いて、見事である。
カリブ海域にフランス大革命の理想を広めるべくハバナを訪れたビクトル・ユーグ。彼につき従うキューバ青年エステバンと美しいソフィア。キューバを含むカリブ全域からフランス、スペインにまたがる世界を舞台に、3人の波瀾にみちた運命を語りつつ、《革命》への限りない情熱と深い幻滅を描ききった、現代ラテンアメリカを代表する作家の待望久しい大長篇小説。
サスペンス、ロマン、恋、情熱、政治、戦争、ユーモア、外交や宇宙間の財政問題など、この作品には全てがある。全世界をかけめぐる怒涛の大ベストセラーがいよいよ日本上陸。