1993年4月30日発売
神話と伝承に彩られた惑星イマキュラータ。13歳の少女ペイシェンスは、幼いながらも有能な外交官兼暗殺者として、父とともに王家に仕える身だった。だが彼女には重大な秘密があったー。太古の予言はペイシェンスこそ人類の救世主であり、神を産む聖母になると告げていたのだ。父の死後、放浪の旅に出た彼女だが、その行く手には予言の成就をはばむべく恐るべき敵が待ちうけていた…。人気作家カードが描くSF冒険譚。
初代アリは複製の育成のために、公私にわたる莫大な記録をのこしていた。後見人である叔父との確執、仲間の子供たちとの駆引き、性のめざめー。多くの悩みを抱えるアリに、初代アリはコンピューターを通して語りかけ、アリは初代アリの人生をなぞるかのように成長していく。いっぽう防衛庁内部では、テープ製造を独占しているリシューンの国有化を主張する一派が台頭し、アリの立場を脅かしはじめるが。ヒューゴー賞に輝く傑作巨篇第三巻。
ケルソンは、デリニの貴族モルガンとダンカン神父の力を借りて、魔女チャリサとの果たし合いに勝利をおさめ、王位についた。だが王冠を手にしたケルソンを待ち受けていたのは新たな陰謀だった。デリニに反感を持つ司教たちが結託して、モルガンとダンカンを追い落とすべく画策していたのだ。おりしも王国辺境では、ケルソンの統治に不服を唱える者たちが反乱を起こそうとしていた…。少年王の活躍を描くシリーズ第2弾。
恒星間宇宙船。ここで過す者は宇宙空間ではなく、偽の風景を見て暮らす。だが、少女の部屋の窓はもう何年も前から雨の風景しか映し出さなくなったー。宇宙船に閉じ込められた少女の運命を描く表題作ほか、自ら創造したキャラクターが模型となって動き出すことになった少女の心の動きを描き、絶賛を浴びた「そばかすのフィギュア」、著者の原点ともいえるデビュー作「ブルー・フライト」など7篇を収録した新鋭の初作品集。
自暴自棄になっていたアダムは、リーとサミュエルの真摯な心に触れ、再び自己を取り戻した。双子にアロンとカレブ(キャル)と名をつけ、立派に育て上げると誓ったのだ。その間にも時はたゆみなく流れ、いつしかサミュエルも不帰の客となっていく。唯一変わらぬものは、アダムの胸中に宿るキャシーの美しい幻影だった…。やがて多感な思春期を迎えたアロンは、愛らしい少女アブラと出会い、ほのかな慕情を抱いてゆく。
アダムは子供たちに教育を受けさせるため、サリーナスの町なかへと居を移した。アロンとアブラの仲はいっそう深まり、弟キャルの胸には孤独感がつのってゆく。そんなある日、キャルは母の消息に接して驚愕する。だが、その秘密を知ったが故に、やがて自分が兄を悲惨な運命に追いやろうとは夢想だにしなかった…。『怒りの葡萄』で知られるノーベル賞作家が、原罪からの人間解放を旧約聖書の物語に託して描く畢生の大作。
真夏だというのに窓を閉めきった書斎で、飛行機の爆発事故の取材中の新聞記者が撲殺された。そばには、凶器と思われる真鍮の電気スタンドが落ちていたが、書斎は中から鍵を掛けられており、犯人が出入りできたはずはない。記者の死は、取材中の事故と何か関係が?休暇中に事件と出くわした統計コンサルタントのマギーは、犯人探しに乗りだすが…。好奇心あふれる人情家の素人探偵が、密室殺人の謎に挑む本格ミステリ。
夏の日の午後、私とレイシーは退屈な大学の研究室を出て、魔法瓶にジン・トニックをつめ、古いキャデラックに乗りこんでメキシコ国境へ向かう。国境の町の売春宿へ。妻とうまくいっていなかったレイシーは、そこで出会った美しい娼婦と恋に落ちるが-。表題作「娼婦たち」をはじめ、『さらば甘き口づけ』の続篇の冒頭部分「メキシコのリュウキュウガモ」、農夫だった祖父の葬式のためにテキサスへ帰郷する男を描く「石の墓標」、創作の秘密を語るインタビューなど、独自の男の世界がひろがる11篇。
麻薬密輸の取り締まりに命をかけるハードキャッスルとゲファー、ハマーヘッズの司令官となったエリオット将軍と副司令官マクラナハンたちが繰り広げる死闘。そして、大空に展開する迫力溢れる航空戦。全米でベストセラーとなった超大作軍事スリラー。
日本のTV局のレポーターの代役を頼まれて、ヒマラヤ山中のラダックへ飛んだ工藤秋生は、チベット独立運動で騒然とする聖都でセシリアとともに取材を開始した。雪嶺に立つ旧王宮、寺院の曼荼羅、合体仏に目を奪われている間に戒厳令が布かれた。香港のビンセント・青とヘンリー・西は中国特務機関の尹虎嶺から、チベット亡命政府の香港事務局代表ナムギャルが、国を統治する転生霊童を捜す不隠な動きをしていることを知らされる。その時すでに秋生一行は、山岳のゲリラと中国人民解放軍に狭まれ、大銃撃戦の渦中にあった。
鎌倉で出会った少年は、一年前に交通事故で亡くした夫・和彦によく似た面差しを持っていた。若きピアノ教師・美袋由紀子は、その不可思議な少年・氷川橡にだんだん魅かれてゆく。一方、夫や兄のかつての同僚である産婦人科医・佐久野、柴崎が、次々と変死体で発見された。それぞれの現場には『運命の輪』のタロットカードが…。惺旺大学医学部に事件の鍵があるとみた警視庁捜査一課の須賀刑事は、氷川橡とその出生にかかわる十八年前の出来事にいきあたった。狂気の連続殺人にからむ数奇な運命。渾身の本格推理。
新しくきたチャドウッド伯爵に援助を断られ、オリヴィアは茫然としていた。先代の伯爵が亡くなってから一年、食べるものさえ満足にない村の暮らしは困窮をきわめていた。その帰り道、村の若者にナイフで刺されて重傷を負った伯爵をオリヴィアは助けるはめになった。村人たちの暴動をなんとかおさえなければ…。意識不明の伯爵を前にして、オリヴィアは一計を案じた。
通産省に就職が決まっていた東大生が、卒業式の二日後に原因不明の自殺を図った。事件の取材を始めた新聞記者が、遺書の中の謎の言葉に導かれて意外な真相に辿りつく。しかし、その先には、さらに驚くべき展開が待ち受けていた…。脆くて幼い現代の若者達。彼らを取り巻く犯罪の構図を、社会心理ミステリーの旗手が鮮やかに描く意欲作。
男は人を殺してみたくてしようがなかった。金なら腐るほどあるし、容姿は映画スターなみ。地位や名声にも恵まれている。それでも男は歪んだ欲望に衝き動かされ、一人の悪徳刑事を抱きこんである殺人計画を実行に移そうとしていた。そんな彼らに、いま一人の刑事が疑惑の目を向けたとき…。ひねりの効いたウィット、そして絶妙な人間描写。まさにレナードの真骨頂を示す名品。