1994年5月発売
暁天の夢(下)暁天の夢(下)
李唐長安にあって、半神半人の運命からこれまで幾多の事変に巻き込まれざるを得なかった顕聖二郎真君に最大の危機が襲った。一身二者、彼の内が神と人の二つに分かれたのだ。天界に安住することを嫌って塵界に身を染めてはじめて、二郎は翆心という女性の真情に魅かれてきた。一方、天宮の玉帝は外甥にあたる二郎が卓絶した力で天界に謀叛を起こさないかと警戒をゆるめなかった。人としての限られた時間に命を燃やすか、今こそ天界を掌中に治め絶対の威力を揮うか。二人の二郎が、翆心をはさんで相対決する完結巨篇。
狩野俊介の事件簿狩野俊介の事件簿
「私の最も大切な財産は石神探偵事務所の狩野俊介君にゆだねるものとする。猫を追い払うより皿を引くべきであった」-俊介の愛猫ジャンヌを通して親しくなった元市長・滝之水老人が、息をひきとる際、弁護士に託した遺言だった。真っ白な便箋に象形風に書かれた不可解な文字は、遺言であると同時に、その意味を解けとの探偵俊介への依頼だという。老人の娘婿・高山代議士から「大切な財産」を渡せと居丈高に要求された俊介は、それに反発し、長兄の娘、梨花とともに遺言の謎に迫る。会心の本格推理シリーズ新作。
信州・佐渡殺人鉱脈信州・佐渡殺人鉱脈
バレンタインデーの夜、長野県諏訪市の十九歳の新聞配達員・青島蕗子が行方不明になった。蕗子は販売店に住みこみながら、信州大学へ通う学生であった。連絡を受けた諏訪署の刑事・道原伝吉は、いやな予感がした。果して、蕗子は絞殺死体となって発見された。しかも、その後、蕗子の死体発見場所から、わずか150メートルの畑の中に、若い男性の刺殺死体が埋められていた。2つの殺人事件の捜査の過程で、繰り返し哀切なメロディーが聞こえてくるのだった。その曲、幼女の歌う童謡「砂山」と事件の関連は…。