1994年5月発売
ズラータはサラエボ生まれの11歳の少女。少女は日記をつけており、日記のなかで自分の日常生活を自分のことばでつづっている。ところが旧ユーゴスラビアで内戦が勃発し、少女の日記にも戦争のことが記されるようになる。恐怖、怒り、嘆き…ズラータの平和な世界は崩壊する。爆撃や狙撃によって多くの死傷者が出、水も電気も食糧もなくなる。ズラータは無理やりうばわれてしまった自分の少女時代に涙を流すが、それでも日記を書きつづけ、戦禍の目撃者でありつづける。彼女がたびたび思いをはせるあのアンネ・フランクのように。
国際結婚に破れたキャリアウーマン日下八重が、妻ある男との恋愛で別れ話がもつれているとき、彼女の前に全身で愛を訴える年下の青年が現われた-。求めあいつつ、どこかズレてしまう二人の愛の行方は。新しい物語構成で展開する恋愛小説。
聖ジョン大聖堂で育てられていた幼いメシアが悪魔に誘拐された。悪魔を倒すことができるのは、聖なる音楽と聖なる剣のみだという。そこで時空の彼方から二人の男がニューヨークに呼び寄せられる。現代楽器を手にしたベートーヴェンと流星刀をもつ土方歳三、そしてメシアの母親ジュネ。風変わりな三人組が悪魔と戦う痛快無比の冒険譚。
代表作時代小説百花繚乱。ヴァラエティに富んだ魅力あふれる作品21編を収録した本年度版は40巻の節目を迎え、ますます大きな感銘をあたえるであろう自信のアンソロジーである。歴史・時代小説の金字塔。
人類初の恒星間宇宙船が惑星キャンドルに到着したとき、人々は空飛ぶカヌーを操るインディアンと遭遇した。13世紀に光速飛行術を見出したインディアンの一群がカヌーで地球を離れ、この星に移住を果たしていたのだ。数百年後この星を訪れた新聞記者ウィルは平和共存を続けているはずのインディアンと入植者との間に深刻な対立があることを知る。異星の地で、開拓時代そのままの激烈な戦いが、いま始まろうとしていた。
インディアンの光速飛行法の秘密が隠された“クレイ”の所有権をめぐって政情不安におちいった惑星キャンドル。クレイ埋蔵地を保有する娘ジェイニイは、入植者とインディアンとの間で窮地に立たされる。ウィルは彼女を救うため友人でインディアンの指導者でもあるトーマスとともにカヌーで地球に旅立ったが、そこで彼らを待っていたものは…?90年代SF期待の新人が、奇想天外な設定のもとに描く迫真のSFドラマ。
惑星ハーモニーに人類が入植して四千万年。平和な文明の栄えるこの星は、じつは軌道上のマスター・コンピューター“オーヴァーソウル”に密かに管理されている。ところがその機能が低下し、世界を制御できなくなってしまった。このままでは人類が自滅への道をたどるのは必至。守護者としての使命をまっとうすべく、オーヴァーソウルは一人の少年にメッセージを託すのだが…遠未来に生きる人類の姿を壮大に描く傑作長篇。
騎士の娘マリアンが十字軍帰りのロバートから聞かされたのは、代官ドレイシーと結婚せよという父の遺志だった。だが、代官は酷薄な男。彼に嫌悪を覚えたマリアンは、しだいにロバートに惹かれていった。そんなある日、マリアンが逃亡死刑囚にさらわれ、無法者が徘徊するシャーウッドの森に連れこまれた。ロバートは彼女を救うべく森に足を踏み入れた…ロビン・フッド伝説を鮮やかに甦らせるシリーズ第2弾。
世界各地で激しい航空戦が繰り広げられている一方で、航空技術は目覚ましい進歩を遂げていた。ハーフナーらのドイツ技術陣は革新的なジェット戦闘機Me262を開発、一挙に戦いの主導権を握ろうとする。だが生産は遅々として進まず、戦局はドイツにとって取り返しのつかないほど悪化。残されたパイロットたちは一握りのMe262で、圧倒的な連合軍爆撃機隊に絶望的な戦いを挑む。史実をもとに空の男たちの死闘を描く。
平らな山の上にあるフラットヘッド族の国と、湖のなかの島にあるスキーザー族の国。この二つの国の争いをおさめに、オズマ姫とドロシーは出発した。ところが、スキーザーの国の高慢ちきな女王につかまって、二人は湖の底に閉じこめられてしまった。それを知った〈よい魔女〉グリンダは、オズの魔法使い、かかしたちといっしょに助けにいくが…。オールスター・キャストで贈る、ファンタジイの名作オズ・シリーズ完結篇。
彼の名はジョン、あるいはゴーストとも呼ばれている。一切の武器を持たないハートレスな殺し屋だ。精妙な感覚と異様な剛力を秘めた自分の両手が唯一の凶器。そのまがまがしい手で、請け負った仕事を確実にこなしていく。しかし、仕事以外のことには関心も知識もなく、しかもひどく無口なので、他人からは頭が弱いと思われている。そんな彼が初めてシェラと会ったのはシアトルのストリップ・バーだった。彼女は店の踊り子で、ふたりは互いに相手が同種の人間であることを嗅ぎ取り、美人局のコンビを組んで、デンヴァー、ヒューストン、ニューオリンズと放浪の旅をつづけた。ところが、タンパという町でふたりは殺人事件に巻き込まれ、シェラは失踪、ジョンは殺人犯として刑務所で三年間すごした。出所後ジョンは、姿を消したシェラを捜し出すことしか頭になかった。しかし、手がかりは全くない。何としてもシェラと会い、逃げた理由を直接聞き出したい彼は、どんな危険な仕事も引き受けながら、シェラ捜しの旅をつづけた…。
二人の貴族が出会った。一人は25歳、一人は83歳。時と場所を越えて奇妙に符合する二人の人生を通して20世紀英国ゲイ社会の歴史の仮面を剥ぐ一大問題作。サマセット・モーム賞受賞作。