1994年6月20日発売
愛の王国をさまよう青春。マドリード、バルセロナ、グラナダ、サラマンカ。スペインを背景に、劇的に展開される痛切な愛と死の物語。世界的なフラメンコ・ダンサーである著者による、初めての自伝的書下し長篇。
私立探偵ジョン・タナーにとって、救急車の運転手をしているトム・クランドールは大切な友人だった。おなじバーに通い、たまに話を交わす程度の仲だったとはいえ、その彼が歓楽街で死体で発見されたというニュースはショックだった。しかも、自殺の可能性があるという。たしかにトムは悩みを抱えていた。企業買収でのしあがった大富豪が、金にものをいわせて彼の最愛の妻を奪おうとしていたのだ。だが、タナーにはどうしても、トムが自殺するような男だとは思えなかった。そもそも、なぜトムは歓楽街にいたのか。そして、彼が死ぬ直前にタナーの留守番電話に残した、「おれはいま血の痕跡をたどっている」というメッセージの意味とは。死にいたるまでのトムの足跡をたどりはじめたタナーの前に、頑ななまでの正義感ゆえに周囲の者の人生を狂わせていた友の姿が浮かびあがってきた。深い人間洞察に裏打ちされた正統派ハードボイルド。
サクストン卿夫人となったエリエンヌは、ついに不気味な夫に身をまかせ、狂おしいほどの歓びにひたる。そして、夫の背中にある傷跡をたどりながら、わたしはこの人の妻なのだ、と自分にいいきかせた。しかし、ある夜、闇に浮かぶ夫の瞳にクリストファーの影を見て、歓びのさなかに、かれの名を口にしてしまう。静かにベッドを去る夫に、深く自分を責めるエリエンヌ。あくる日、夫の不在中に、夜盗との格闘で深手を負ったクリストファーが館にかつぎこまれた。
若いころは知的でドキドキするような生活を夢見ていたグレゴリオも今や45歳を過ぎ、さえないサラリーマンを続けている。友人を勇気づけるためについた彼のささやかな嘘。嘘は人生を幸福にする安上がりな手段だったはず。それがいつのまにかおそろしい武器に…危険なゲームへと人を駆り立てる。イカロ文学賞、文芸批評家大賞、国民文学賞を受賞。又、地中海文学賞の外国作品部門最優秀作品に選ばれた。
きものが着たいと思っても、きまりがわからなくて…と、いうかたに、実際にきもの、帯、小物を使って、きものと帯などのくみあわせを目的別に写真で見せた、他に類をみない画期的な一冊。忘れられつつある着物独特の色あわせ、素材あわせを、ビジュアルに見せた貴重な入門書。
不倫の清算として医者と看護婦が心中した事件に不審を抱いた美人研修医が、事件の背景を調べ始めたのだが…。次々と自殺者を出す“崇りの部室”を借りてしまったOLの身に起こり出した奇妙な出来事…。ふとしのび寄る『悪魔の囁き』に弄ばれる現代社会のただれた一面と、その暗部に躍る「悪魔」を抉ぐり出す本格傑作ミステリー集。