1995年11月発売
建築家である夫、巌と二人の息子、邑人と都夢と暮らす未央子は四十六歳。家族の危機に、未央子の年齢の危機が重なり、行き場を失くしつつある時、ホームステイの少年を迎えることになる。オーストラリアからやってきた十六歳の少年、エマニュエル・Kは、未央子にとって瞬時に魂の奥底まで理解しあえるような、不思議な心のつながりを感じる存在であった。南十字星から贈られたこの少年は、やがて静かな波紋となって、家族を予期せぬ方向へ導いていく…。
癌で余命いくばくもない往年のTVスター、フィンキー・リンキー。その彼の前に“死”そのものが現われ、死者を蘇らせる奇怪な力を授けてゆく…いっぽう世界的な女優だったアーレンは、ひょんなことから巡り会った一人の戦場カメラマンに真摯な恋心を抱くようになるのだが…ふたつの物語が交錯するとき、明らかにされる衝撃の真実とは。死という永遠のテーマに挑む鬼才、愛と死の錬金術師キャロルがおくる感動の最新傑作長編。
精緻きわまりない究極の「私小説」は、父の遺骨探しの旅から始まる。過去・現在・未来が相互嵌入式に複雑に重なり合いながら言語は歴史をはらみ、アカシアの葉がそよぐとき、小説が生まれる。本書は、作家としての自分の「起源」にさかのぼる、クロード・シモン版『感情教育』。
ファシズムの色濃い日本から、新天地を夢見てソ連に亡命した演出家杉本良吉と女優岡田嘉子-だが、入ソ後の杉本の足取りはいまだにわかっていない。厳寒のシベリアに消えた杉本の「その後」を描く渾身の著。第10回織田作之助賞受賞作。
ウェールズ-そこは、英国にありながらケルト人の血を引く人々の住む土地。アーサー王、奇蹟を起こす聖人、妖精、魔法使い、聖なる井戸。人々は千年の時を超えて伝説を語り継ぐ。ケルト人の血と、亡び去った者たちへの熱い思いを胸に…。
私、深雪、トラブルメーカーの雪女。お嬢様殺人事件で大暴れして、やれやれと一息ついていたら、今度は、バイクを走らせてる途中で、数人のチンピラから逃げているスッパダカの女の子を拾ってきてしまった。しかも、この子がなんと、今をときめく若手アイドル女優、王麗碧子だったから大騒ぎ。そのうえ、ヤクザの親分にはなつかれるわ、不可解な殺人事件に遭遇するわ、義兄さんは行方不明らなるわ、邪教集団と関わりになるわ…またもや厄介事のオンパレード。