1996年1月30日発売
青年将校たちの間で昭和維新が熱っぽく語られる時代-。若き陸軍中尉・剣持梓は、幼い頃から繰り返し見る幻の中で、陛下への熱い思いを募らせる。魔王のような存在・北一輝との交流や、実姉との危うい関係の果てに梓はついに“叛乱”に身を投じてゆく…。歴史上希有な“官能的事件”とも言うべき二・二六事件外伝にして、刺激的な“恋愛小説”の登場。山本周五郎賞受賞第一作、衝撃の長編小説。
『猫』の最後で死んだはずが、目覚めたらなぜか上海にいた「吾輩」。そこへ飛び込んだ、なんと苦沙弥先生殺害の報、そして犯人はこの街に。個性的な猫たちが、上海の街を縦横無尽に駆け回って事件解決に大活躍、『猫』でお馴染みの登場人物も総出演。漱石文体を駆使した書下ろし一千枚、“純文学”をぶっ飛ばす奇想天外の冒険ミステリー。
“愛”の一文字を兜の前立に掲げ、戦場を疾駆した男・直江兼続。知略の限りを尽くし、主君景勝を補佐して乱世を生きぬき、のちの上杉鷹山に引き継がれる領国経営のもとをつくった戦国随一の知謀と信念の男の生涯を描く。
東西呼応して家康を撃つ。関ケ原合戦における石田三成との密謀の裏には、直江山城守兼続の大いなる賭けがあった。処世にあけくれる上方政権を見限り、東北に独自の「王国」を築こうとした名将兼続の壮大な構想とロマン…。新しい視点で描き出された時代小説の傑作。
幼いころに両親を亡くし、施設で育った小料理屋の板前・楠木谷純一郎。彼は、女性に接すると狂乱状態になり、性的不能に陥るという奇妙な病いを持っていた。そんな彼が、通っていた歯医者の受付をしている佐々木千織に声をかけられ、生まれて初めて恋におちた。彼の心の病いを治そうと、千織の献身的な努力が始まる。純一郎の閉ざされた心の殻が、千織によって一枚一枚はがされたとき、ある衝撃の事実が浮かび上がった。少年時代の戦慄の記憶。謎の女・千織の真の目的は。謎と恐怖を孕んだ著者会心のロマン・サイコ・サスペンス、全力の書下ろし長編野心作。
御手洗潔が日本を去って一年半、横浜馬車道に住む御手洗の友人で推理作家の石岡のもとに、二宮佳世という若い女性が訪れ、「悪霊祓いに岡山県の山奥に一緒に行ってほしい」と言う。なんとその理由は、大きな樹の根もとに埋められた人間の手首を掘り出すためだった…。三月末、石岡と佳世は、霊の導くままに、姫新線の寂しい駅に降り、山中に分け入り、龍臥亭という奇怪な旅館にたどり着いた。これが、身の毛もよだつ、おぞましい、不可解な大量連続殺人事件に遭遇する幕開きだった。推理界の鬼才が、構想を練りに練り一年、満を持して放つ、二千枚を超す、渾身の書下ろし傑作超大作。
時代が、体制が音を立てて崩れ、移り変わってゆこうとする幕末に生きた九州は柳川藩の一剣士・神影流大石進の一代記である。六尺余の長身に長刀を持たせ、必殺の突き技を使わせたら江戸の千葉周作道場、斎藤弥九郎道場を破るほどの腕を持ち、天保年間の剣術界に旋風を巻き起こし、剣技・剣道具の改良にとり組んだ異色の剣豪である。