1996年1月31日発売
強力な磁場を持つ中性子星「スター」の内部では、体長約10ミクロンの微小な人類が驚くべき都市を形成していた。だが近年、グリッチと呼ばれる星震現象が頻発し、人類の居住域は徐々に崩壊しつつあった。想像もつかないほど強大な何かが「スター」を騒がせているのか。その陰には宇宙の支配的種属ジーリーに関わる重大な秘密が…エキゾチックな中性子星を舞台に驚異のスケールで展開する、ハードSFファン待望の書。
植民惑星ハーモニーを軌道上で密かに統轄するマスター・コンピューター「オーヴァーソウル」。入植以来四千万年を経て機能低下を自覚したこのコンピューターは、夢のお告げを送って人々を地球へ導こうとする。兄弟とともに花嫁を探せとのお告げを受けた少年ニャーファイは、独裁者ムウズーの侵略に揺れる都市バシリカを訪れた。そのお告げに隠された、コンピューターの真の思惑とは。人気作家の新たなる未来史、第二巻。
何万人もの人が居住するワルシャワ市のはずれの高層ビル団地。そこには様々な人生があり、老いも若きも、男も女も、それぞれの過去を、愛を、苦悩を、希望を、孤独をみつめながら、ひたむきに現代を生きていた。運命に左右されすれ違うこともあり、出会うこともあり…。それは偶然と必然の糸でつながれた不可思議な心の物語。十篇の愛の物語を鮮やかに描いた名匠キェシロフスキの伝説的連作映画を完全小説化する話題作。
最初に受けもった生徒たちが卒業すると、ルアン先生の心はカラッポになった。持てる力のすべてを捧げてきたので、自分の情熱さえも消滅する気がした。そんなある日、緊迫する事件が連続する。ある生徒は殺してやると叫ぶ男にピストルで狙われ、ある女生徒はセックスシーンをヴィデオに録られて恐喝される。疲労と緊張のきわみのなかで、ルアン先生は事態にどう立ち向かうのか。映画『デンジャラス・マインド』原作の続篇。
うつろな心を持てあますバークのもとに、昔のムショ仲間ヴァージルの妻が訪ねてきた。彼女が預かっていた少年が連続狙撃犯の容疑をかけられ、ヴァージルとともに逃亡したという。旧友の求めに応じて、バークはインディアナへと急いだ。そこで出会った謎めいた美女ブロッサムの助けを借り、バークは真犯人を誘いだす奇策を練ることになったのだが…少年の自立と家族の絆をモチーフに、シリーズに新境地をひらく注目作。
年老いた脱獄囚がアパラチア山脈近くの故郷へ向かっていた。保安官のスペンサー、保安官助手志願のマーサらが追い始めるが、その矢先、奇怪な事件が続発する。折りしも、二百年前の事件を調べるため、若い男が山道に踏み入るが…いくつもの運命が絡み合い、やがて緊迫の結末へ。アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞の最優秀長篇賞を受賞した注目作。
クイン・クリアリーは医師になりたかった。しかし、家が裕福ではない彼女にとって夢がかなう唯一の道は、イングラム医科大学に合格することだった。イングラムは製薬会社関連の財団が設立した大学で、全米から選ばれた優秀な学生が、無料で教育を受けることができた。補欠ですべりこんだクインは、有頂天で新生活に飛びこんでいく。だが、彼女は奇妙なことに気づきはじめた。クラスメイトたちが、医学倫理を受け持つオールストン教授の理論とまったく同じ-将来、限りある医療資源を分配するのに、その人間の社会的価値によって差をつけるべきだという-考え方をするようになってきたのだ。正義感の強いクインは反発するが、彼女と同意見だったボーイフレンドのティムまで、オールストンの思考様式に染まりはじめた。クイン以外に、その考え方に疑問を覚える者がひとりもいないのはなぜか。やがて、寄宿舎のティムの部屋で盗聴器が発見され、彼の姿が消えた。いたれりつくせりの医学部のキャンパスをひそかにおおう悪夢-屈指のストーリー・テラーによる医学サスペンス。
1961年のロサンゼルス。ホワイトハウスには若きジョン・F.ケネディ大統領がいて、南部ではマーティン・ルーサー・キング牧師を指導者にして黒人解放運動が燃えさかっていた。ブラック・アメリカの新しい夜明けが叫ばれるなかで、黒人の私立探偵イージー・ローリンズは不動産投資に失敗し、破産状態に近かった。親友マウスも五年の刑期を終えて出所していた。四十一歳になったイージーにとって、この五年は悲惨な日々だった。親友が酒場の路地裏で人を撃ち殺すところを目撃した彼は、悪夢に悩まされた。しかも、可愛い子供がふたり残ったものの、妻のレジーナは自分のもとを去っていた。そんな彼のもとに、人捜しの依頼がもちこまれた。捜す相手はなんと“ブラック・ベティ”ことエリザベス・イーディ。イージーがテキサス州ヒューストンの少年時代に憧れ、はじめて異性にめざめさせられた年上の女であった。ベヴァリーヒルズの大富豪の家で働いていた彼女の行方を捜すことは簡単に思われたが、事は連続殺人へと発展していき…。セピア色のロサンゼルスを舞台に黒人の私立探偵イージー・ローリンズの活躍を描く人気ハードボイルド・シリーズ、『ブルー・ドレスの女』『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』に続く第四弾。
ラッド・ポリス-犯罪者たちからは“死刑執行警察”と呼ばれて恐れられる超過激警察だ。法のもとでは裁けない巨悪に対抗するために秘密裏に警察内部に組織され、その存在は一部の者しか知らない。片桐達哉はラッド・ポリスのリーダーとしておとり捜査のために麻薬売人と接触していた。麻薬、武器売買の頂点には加賀ファミリーが君臨していた。末端組織をつぶした片桐の次の仕事は、ファミリーの情報を持ち逃げした公認会計士の身柄保護だった。敵は腕の立つ殺戮師を放ってきた。暗黒組織との壮絶な戦いが始まった。
「これが-桃花源か」白戴星は息を呑んだ。人の背丈よりも少し高いぐらいの木が幾本も幾本も、見渡すかぎり植わっていた。「桃」。ただ、その木には花も葉もなく、枯れた枝がむなしく空に突き出ているばかり。土地は、乾ききってひびもはしっている…今上帝の世継ぎ白戴星をつけ狙う殷玉堂、東京の双剣舞の芸人・陶宝春、落第挙人の包希仁たちの運命と彼らを追跡する劉皇后と宦官雷允恭一派の謀略をのせて、伝説の理想郷を前に彼らが目にしたものは。第一作より三年の歳月を経て遂に大団円を迎える井上祐美子の決定版。