1998年10月18日発売
痛切な芸術上の欲求を“西洋”そのものに求め、激しい西洋崇拝を表す「独探」、漢詩文に詠まれて以来、遊子の心になじみ深い山紫水明の地西湖を舞台にした「西湖の月」ほか、「玄弉三蔵」「ハッサン・カンの妖術」「秦淮の夜」「天鵞絨の夢」を収める異国綺談集。
“異変”は突然の出来事だった。新聞記者・福井浩介はある朝、普段とはまったく違う光景を目にするーいや、「世界」はそのままなのだが、そこからは「人間」の姿が一切消えてしまっていたのだ!福井の他にも何人かの“消え残り”が確認され、この異様な事態の究明に乗り出すのだが…。人類消失という極限の状況下、人はいかに行動し、文明はいかに機能するのかを描く異色SF長篇。
生きている食糧“視肉”、猿を思わせる怪物“猩猩”、空を飛ぶ魚、二メートルを超える大グモ…。悪夢のような動植物がはびこる世界で、守護神が甲虫である戦士ジローは、恋する女、ランへの思いをとげるために、女呪術師ザルアー、“狂人”チャクラとともに「月」を求めて旅立った。「月」とは何かを知らない三人は「空なる螺旋」を探せと教えられるのだが…。
地底の病院探検を敢行した里見捜査官と立松刑事は、時の杜の真下に壮大な秘密が仕掛けられていることに気づきはじめる。しかし、その一方で連続殺人は止まらない。不潔恐怖症の女、謎めいた言葉を繰り返す美少女、スピード狂の高校教師、七五調で喋るクラブ支配人、不可解な行動をとるオカマ歌手、禁断の御神体を知る老婆。疑い出せばキリがない容疑者だらけの状況で、こんどはまさかと思われる人物が撃ち殺された。
森には神が棲んでいる、しかし悪魔も棲んでいるー早川家の老母歌子は、時の杜地区一帯に仕掛けられた壮大なスケールの陰謀を示唆する。その一方で、これまで変人を装ってきた住人たちが、その意外な素顔を続々と表わしはじめた。いったい誰が味方で、誰が敵なのか。混乱する里見捜査官をよそに、一色舞子を刺し殺した犯人の正体がついに明らかにされた!だがそれでもなお、惨劇はその幕を下ろさなかった…。
果てることなき連続殺人の真相をなんとか解き明かそうとする里見捜査官は、犯人に襲われて重傷を負った精神科医鰐淵吾郎から、時の杜地区に秘められた驚くべき秘密を聞き出すことに成功する。地下に御神体を祀り、独自の哲学によって新しい社会を築こうとする姫神教信者たち。その教義は、現代日本の常識を根底から覆すものだった!だが、真犯人逮捕を目指し地下神殿に突入した里見を待ち受けていたのは…最後の悲劇。