1999年6月18日発売
国姓爺鄭成功、幼名福松は、東アジアの海の実力者を父として、日本人田川氏の娘を母として、平戸に生まれた。七歳のとき福建泉州へと渡り、父のもとで成長、やがて南京の太学に学ぶ。折りしも李自成軍に首都北京を占領された明朝は滅亡、山海関を越えた満洲鉄騎軍は中国大陸制圧に向けて怒涛の南進を開始した。唐王隆武帝を奉じ、父とともに反清勢力を率いることになった若き英雄の運命は。
古墳の闇から復活した大津皇子の魂と藤原の郎女との交感。古代への憧憬を啓示して近代日本文学に最高の金字塔を樹立した「死者の書」、その創作契機を語る「山越しの阿弥陀像の画因」、さらに、高安長者伝説をもとに“伝説の表現形式として小説の形”で物語ったという「身毒丸」を加えた新編集版。
男女両性の長所から生命の芸術をクリエイトする「創造」、谷崎の府立一中時代の友人・大貫晶川をモデルに描く「亡友」と長篇「女人幻想」-器量よしとお洒落とで評判の兄妹。思春期を境により美しくなってゆく光子、女性的の美を羨みこだわり続ける由太郎は、女を騙すことばかり覚えて…。
「夫は吸血鬼かもしれない」-マタニティ雑誌「プレマム」編集部の布施乃理子あてに不審な手紙が届いた。一方、同じ頃、「プレマム」の元モデルが絞殺され、さらに「プレマム」の読者を巻き込む児童誘拐事件が発生する。不審な手紙と二つの事件には、複雑な人間関係と恐るべき事実が隠されていた…。「現代」の吸血鬼をテーマに、人間の“血”と“愛”を描く心理サスペンスの力作長篇。
人でありながら、神の子であったイエス=キリスト。数々の奇跡を起こし、そして人間の罪を負って十字架にかけられたイエスの生涯を、われわれと同じ、ひとりの人間の生涯として描いた本書は、神を求め、その声を聞くことができない悲しみや、信仰に迷いながらも、貧しい者の中に希望を見いだそうとするイエスの姿を鮮やかに甦らせる。ここには、神話の中にではなく、われわれの心の中に息づくイエスがいる。