1999年7月18日発売
活動写真という夢の実現に奔走する吉之助は、俳優にしたてた混血の美少女グランドレンの肉体に翻弄され、映画こそが唯一の芸術であった筈が…。谷崎自らの映画制作体験を反映する「肉塊」、本牧の住まい、山手の家、忘れ得ぬ人々など追憶を創作の形にと、横浜時代の暮しぶりを回想した「港の人々」の二篇を収める。
科学者ジョー・コリガンは見知らぬ病院で目を覚ました。彼は現実に限りなく近いヴァーチャル・リアリティの開発に従事していたが、テストとして自ら神経接合した後の記憶は失われている。開発計画は失敗し、放棄されたらしい…。だが、ある女が現れて言う。二人ともまだ、シミュレーション内に取り残されているのだ、と。あまりにリアルな仮想現実から、脱出する方法はあるのか?
「わたし、本当に今幸せなのよ。これ以上、何もいらないの。早馬さんだけがいればいいの」-映画スター・北岡早馬との結婚で伊津子は幸せの絶頂にあった。しかし彼女を迎え入れた北岡家の人々は皆、早馬の先妻・貴緒のことが忘れられぬ様子であり、最愛の夫もその例外ではなかったのだ。謎の自殺を遂げたという貴緒の面影が色濃く残る邸で、やがて悲劇の幕が切って落とされる…。技巧の限りを尽くした本格ミステリー。
南アフリカ・ケープタウンの一角で、日本人船員の梶間は五人組の男たちの襲撃を受けた。持ち金の全てを奪われ、駆けつけた警官からも外国人ゆえの屈辱を受けた彼は、ひとり復讐を誓う。だが、異国に渦巻く様々な欲望と思惑が、容赦なく男に牙を剥き…。(船戸与一「キラー・ストリート」)-日本冒険作家クラブの七人の気鋭作家たちによる、傑作ハードボイルド・アンソロジー。
菅原良一は、図書館の近くで、ロープに吊り下げられたセーラー服姿の少女の死体を発見した。その縛られ方は彼が図書館に届けるはずだった『日本刑罰史』に書かれているものだった…。数日後、犯人と名乗る男から菅原あてに電話が入った。男は菅原がかつて出版した『誰かのせいだった』を読んでいるらしい。そして第二、第三の殺人予告がなされた!犯人の目的は一体何なのか?サイコ・ミステリーの書き下ろし長篇。