2000年8月28日発売
長い黒髪をぬらし、汚れた着物姿で山道を歩いていた私を一人の警官が助けてくれた。私の名前は小夜子。それ以外の記憶はない。私はなにものかに導かれて新宿にたどり着いたが、そこには山梨で私を助けてくれた警官がいて、私にこう告げた。「きみは死んだ人間なんだ。人の後ろに立つと、その人間の怨みの中にきみの怨みが入ってしまう」とー。人間の心の闇を描き出す長篇ホラーの傑作。
天変地異や変事を扱う陰陽寮の頭、弓削是雄は当代一の術士と衆人より目されていた。彼は陰陽師の紀温史、蝦夷の淡麻呂、陸奥で山賊の女頭目であった芙蓉…と多士済済の者たちを配下に従え、忙しい日々を送っていた。そんなある日、羅城門に人の倍以上も背丈がある鬼“長人鬼”が現れた。一方、是雄は関白からの急な呼び出しがあり、「淡路行き」の命を受けるが…。是雄たちが怪異の謎に挑む、妖かしの新物語。
どこにでもある新興住宅街のアパートで、その前代未聞の事件は起った。血まみれの現場には、臓器を取り出され、全裸となって変わり果てた美人OLの姿があった。しかも臓器の一部を持ち去られてー。いったい被害者の身に何が起ったというのか?やがて、彼女を執拗につけ狙っていたものが、次々に浮かび上がるが…。鬼才・友成純一の描く戦慄のストーカー世界、書き下ろし。
徳川家康は南光坊天海ら密教僧に命じて、新たなる領地となった江戸を霊的防御都市とするべく開発、その力で豊臣家に成り代わって天下人たらんと目論んでいた。その動きに気付いた石田三成は、陰陽師半井を借り受け、家康の野望を粉砕するべく妨害工作を開始する。江戸と京都で繰り広げられる密教僧と陰陽師との法力合戦の勝敗はいかに!そして現代まで続く江戸ー東京の繁栄の源となった風水の秘密とは。
有田順二は通勤電車で「痴漢」の濡れ衣を着せられた。起訴された有田は争い続け、無罪が言い渡されたが、結局その間に職を失い、妻と離婚した。有田は心身ともに荒廃していった。そんなある日、飲み屋で熊谷という男に「雑談クラブ」へ誘われた。そこは心に深い傷を負った被害者たちの憩いの場であった。そんな折、有田を含む四人の常連たちの加害者たちが、相次いで死傷した…。心に傷を背負った人間たちを描くホラーミステリーの傑作。