2002年3月31日発売
「ぼくは行くよ」と語り手は言う。でも、どこへ?北極へ、南仏へ、なにもないガレージへ。軽やかに錯綜する物語の糸が、やがてその空白の行き先をひとつに絞っていく。災厄を呼ぶ美女と善悪のコミカルな変わり身。エシュノーズの話術がもっともまろやかにブレンドされた、円環するロードムービー小説の快作。ゴンクール賞受賞作。
衰運にむかいつつある映画監督モゲルと青春の盛りに近づきつつある少女ナシマ。“帆船アザール=危険な夢”に我が身を賭けた男と少女を描いて、現代フランス最大の作家が、壮麗なる冒険の世界へ読者を誘う。洞窟で伝説となった男を描く予言的な中篇「アンゴリ・マーラ」所収。
書店のアルバイトとして働くキャル・カニングハムは作家志望の青年。いつの日か傑作をものすることを夢見ているが、小説の素材集めと称して女遊びに興じるばかりでいっこうに筆は進まない。ある日、ルームメートの法学生スチュワートがひそかに小説を書いていることを知ったキャルは、留守中にその原稿を盗み見てしまう。それはキャル自身をモデルにした小説で、まごうことなき傑作だった!ところがその矢先、スチュワートが交通事故で亡くなり、キャルはその原稿を自分の作品と偽って発表する。一躍ベストセラー作家となったキャルだったが、盗作の事実を知る脅迫者が現われた時から、彼の人生は音を立てて崩れていく…。スティーヴン・キングをして「ヒッチコックの最高傑作に比肩するスリラー」と言わしめた、異能の大型新人のデビュー・ノヴェル。
私の人生は17歳から始まった。ある早朝、意識をなくし、傷つき、顔を潰され、全裸で放り出されているのを発見されたのだ。ようやく昏睡状態からさめたとき、私は何も覚えていなかった。自分の名前も、顔も、自分が何をしてきたのかも…15年後。その雑誌を見た時、確信が私を襲った。この男は、私の過去を知っている。写真に写っていたのは、ワイナリーの経営者ジェームズ・マクゲイン。過去を知るため、私は彼のワイナリーに料理人として勤めることにする。やがて、私の正体に気づいたジェームズは、自分の過去を知りたがる私に条件を出す。15年前の真相を知りたければ…それは、性の奴隷として絶対的な服従を強いることだった。拘束、凌辱、調教。ジェームズの要求に限界はなかった。過去を知りたい一心で背徳の世界に踏みこんだ私は、いつしかその虜になっていく。だがその先で私を待っていたのは、あまりにも衝撃的な事件だった!『Mの日記』の官能と衝撃を上回り、モラルの限界を超える、超エロティック・サスペンス。
文化大改革の嵐が吹き荒れる1971年、医者を親に持つ僕と羅は、反革命分子の子として再教育のため山奥深くに送りこまれた。僕は17歳、羅は18歳だった。厳しい労働に明け暮れるなか、僕らは村に唯一ある仕立屋の美しい娘、小裁縫に恋をした。あるとき僕らは、いまや禁書となっている西欧の小説を友人が隠し持っていることを知る。壮大な愛や冒険の物語に僕らはすっかり夢中になり、これに刺激を受けた羅は、小裁縫にバルザックの小説を語り聞かせる。二人は次第に親密になっていくが、本によって自分たちの運命が大きく変わってしまうとは知らなかった…。在仏中国人作家が自らの青年時代の体験をもとに綴り、世界30カ国で翻訳された話題作。
20年前、町中が甲子園の夢に燃えていた。夢が壊れたとき、捨てたはずの故郷だった。しかし、今。母を亡くした父一人の家に帰ってきた失業中の男と、小学5年の娘。ボストン留学中の妻はメール家族。新しい家族の暮らしがはじまる。懐かしいナインの面々。会いたかった人々。母校野球部のコーチとして、とまどう日々。そして、見つけたのは。
同僚をケチな窃盗犯に射殺され、追跡中に犯人を誤って殺してしまった井川刑事。窃盗犯の上着から、三千万円の情報価値を持つメモリーカードが出てきたとき、彼は警察官であることをやめた。死体を始末し、三千万円を頂く人生を選んだのだ。しかしメモリーカード情報の現金交換可能期限は当日午後七時まで。隅田川の花火大会がまさに始まろうという狂騒の東京向島で、警察とギャングを相手に灼熱狂気の数時間がスタートした。