2003年12月25日発売
結婚式当日、新郎・中林浩士は逮捕された。そして、十年。新婦だった淳子は待っていた。浩士の出所する日をー。だが、待っていたのは淳子だけではなかった。かつて浩士が強奪した二億円を狙っている男達がいたのだ…!!偶然、中林の出所に立ち会った女子大生探偵・亜由美は、殿永刑事に盗まれた二億円がまだ見つかっていないことを聞かされる。いったい、お金はどこに!?名探偵・亜由美の活躍が始まる!花嫁シリーズ第14弾。「三十年目の花嫁」を併録。
五年前に愛を交わしながらも突然姿を消した女、瞭子と偶然の再会を果たした弁護士の栖本誠次は、翌朝、彼女の死を知った。事務所の留守電には、相談したいことがあるとの短い伝言が残されていた。手がかりを求めて彼女の故郷を訪ねると、そこには別の人間の少女時代が…。愛した女は誰だったのか。時を遡る執拗な調査は、やがて二十年前の産業誘致をめぐる巨大な陰謀と、政財界をも巻き込んで蠢く裏社会の不気味な構図に行き当たる。謎とサスペンスの中に孤独で真摯な愛の行方を描き切った第52回日本推理作家協会賞受賞の傑作、待望の文庫化。
「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。-関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ」中学入学を目前に控えた春休み、岡山県境の地方都市、新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持ち、それゆえ時に冷酷なまでに他者を切り捨てる巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。巧に対し、豪はミットを構え本気の野球を申し出るがー。『これは本当に児童書なのか!?』ジャンルを越え、大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が、ついに待望の文庫化。
夢見がちな感性をもって描かれた平安時代の日記文学。作者13歳の時、上総介の任期を終えた父に伴われての上京に記事は始まる。東国に育った作者が京へ上り、恋い焦がれていた物語を読みふけった少女時代、晩い結婚、夫との死別、その後の侘しい生活と、ついに少女期の憧れを結実させることのなかった一生の回想録である。平凡な人生の中に描かれる、作者の人生の断片の輝きが、今なお、われわれを惹きつけてやまない。有名な作品にもかかわらず、ごく一部しか一般に知られていなかった古典を、懇切な注と自然な現代語訳で手軽に読み解く。
「対空目標、本艦到達まであと三十秒!」「くらま」艦内にアラームが響きわたり、乗員の叫び声がこだまする…。先ほどまでの喧噪が嘘のように静まりかえった艦橋。傍らでは豊田艦長が舵輪を握っている。中西要群司令は懊悩していた。(なぜトマホークが向かってくる?この時代にはなかった兵器なのに)我々以外にもタイムスリップした艦がいた、というのが幕僚たちの見解だ。妥当な結論ではあったが、それなら彼らの目的はいったいなんなのか。中西はやめていた煙草を急に吸いたくなった。昭和十九年十二月三日。六十年前の世界に迷い込んだ自衛艦は、昼下がりの陽光に照らされ、ルソン海峡を北上していた。感動の完結編。