2003年12月5日発売
五世紀半ば、倭国は大王允恭(倭王・済)の死後、王家の息子達、その従兄市辺押羽王らの政権抗争の中にあった。一方、朝鮮半島では高句麗国が半島制覇を窺っていた。百済王の弟昆支王は倭国との同盟を模索すべく渡来。勇武に優れた允恭の五子ワカタケル(後の倭王・武)は昆支王に先進文化と情報戦略を学び、次々と反対勢力を制圧する。
百済王の弟昆支王の陰の協力を得て、ワカタケル王子(後の倭王・武)は腹心ムサノ青らの活躍によって、政敵市辺押羽王と御馬王子を斃し、眉輪王を使って兄の安康大王(倭王・興)を、更に立ちはだかる豪族葛城を滅ぼす。五世紀半ばの倭国に中央集権国家を築いた英雄ワカタケル大王の生涯を描く古代史ロマン小説。
神名平四郎。知行千石の旗本の子弟、しかし実質は、祝福されざる冷や飯食い、妾腹の子である。思い屈し、実家を出奔、裏店に棲みついたまではよいのだが、ただちに日々のたつきに窮してしまう。思案の揚句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲げる。…喧嘩五十文、口論二十文、とりもどし物百文、よろずもめごと仲裁つかまつり候。
世に揉め事の種はつきぬとはいえ、依頼主のもち込む話は多彩を極める。中年夫婦の離縁話、勘当息子の連れ戻し、駆け落ち娘の探索等々。武家と違い、万事気侭な裏店にも、悲哀にみちた人生絵図がある。円熟期にあるこの作家の代表的連作シリーズ、愈々佳境。人の姿、世の姿の哀切な陰影を端正に写し出す話題作。
新選組の伍長として幕末の動乱を戦い抜いた寡黙な巨漢・島田魁は、討幕派との全ての戦いに奔走する。ときに内部の軋轢に巻き込まれながらも、新選組を心から慈しみ、忠義を尽くし続けた男の苦悩と剣術にかける情熱、戦友・永倉新八との友情など波瀾万丈の生涯を史実に沿いながらありありと再現した長編剣豪小説。
関東取締出役、通称八州廻りの桑山十兵衛は悪党どもを追いかける毎日だ。そんなある日、昔の大盗賊日本左衛門の二代目らしき盗賊が関東各地を荒らしまわる。十兵衛たちは必死で一味を追跡するも行方はわからず、探索で浮んできたのは、虚無僧の影、そして老中と繋がる儒者・杉崎斂堂。一連の事件の真相は。