2004年1月25日発売
常巳22歳、腕っぷしが弱く、要領も悪い、お人好しのチンピラヤクザ。器量は悪いが、心やさしい年上の女・順子と同棲しながら、シンナー密売とパチンコでしのぐ毎日。だが、伝説の博徒・腕斬り万治さんの出所を機に、本物の男になろうと心に決める。仁義にあつく、一本筋を通す仁侠道を歩むため、常巳の悪戦苦闘が始まったー。町の片隅で必死に生きる落ちこぼれ達の姿が切なく胸に染みる物語。
オリンピックで華々しい活躍をし、当然プロ入りを期待されたが、ある理由から野球を捨ててしまった投手・藤原雄大。8年後、30歳を過ぎた彼は、突然、ニューヨークのメジャー球団に入団する。あの男ともう一度対戦したい!その悲願のためだけに…。一度は諦めた夢を実現するため、チャレンジする男の生き様を描くスポーツ小説の白眉。第13回小説すばる新人賞受賞作。
死ぬほど愛した男が、逃げてゆく。この愛を失うなら、本当に死のうとすら思ったー。求めれば求めるほど、遠くなる愛、つのる欲望。恋に溺れる女の心と体を描いた表題作「凍った蜜の月」ほか全6篇。からだの内に「月」を抱えて生きる女たちの、どうしようもない思いと、満ちては欠ける「月」のように、はかなく変化する男と女の関係を、エロティックに描いた短篇集。
白い猪になった少年、鳥と魚と蛇の歌を聴く美しい少女、耳に入り込むトカゲ、一糸まとわぬ姿で眠る女教師、薄明を精霊たちが遊弋する。バスクの伝承を背景に、屹立した言語によって拓かれる文学の深奥。
「タウは銀山也」タンガ王ゾラタスに届けられた知らせは、デルフィニアに強奪されたタウ東峰が宝の山だと告げていた。この密告こそ、タンガ挙兵を誘うべくウォルたちが仕掛けた罠であった。しかし、鬨の声はデルフィニア西方、パラストから挙げられる。微妙な均衡を保つ大華三国が、ついに動乱の時を迎えようとしていたー。