2005年4月1日発売
老舗の紙問屋の跡取りとして生まれながら、継父との不和から家出。目明しの下っ引きとなった達造。実家とは、子守奉公のおたえとの交流だけが細いつながりだ。仲間の下っ引きが殺されたことから事件は拡大。闇に潜む悪を追う達造だが、魔の手は、達造の実家にも及ぶ…。江戸の底辺で生きる市井の人々の哀歓や情緒を、情感あふれる文体で描いた、清新で心あたたまる人情時代小説。
将来を嘱望されていた大手邦銀NY支店のディーラーが、滞在先のNYのホテルから飛び降りた。彼は、死の前日に偶然旧友の芹沢と再会を果し、謎のメッセージを残した。あまりに突然な友の死に衝撃と責任を覚え、死の真相を探ろうと決意した芹沢の前に、辣腕家としてウォール街でその名を知られた有吉州波が、そのまぶしい姿を現したー緻密な構成とスピーディな展開の金融ミステリー。
相次ぐ金融不祥事を傍観するだけの政府、ひたすら保身を図る大蔵官僚、すべてをひた隠しにして自分らだけの生き残り策を弄する邦銀重役たちー恋人の復讐を誓い、真相を公にしようと、州波は芹沢と力を合わせてある計画を実行に移す。それは彼女の知識も人脈も経済力も、すべてを賭けた途方もない秘策だった。著者がその専門知識を駆使して、日本金融界の闇を告発する衝撃作。
東京の西の近郊の小さな古道具屋でアルバイトをする「わたし」。ダメ男感漂う店主・中野さん。きりっと女っぷりのいい姉マサヨさん。わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ。どこかあやしい常連たち…。不器用でスケールちいさく、けれど奥の深い人々と、懐かしくもチープな品々。中野商店を舞台に繰り広げられるなんともじれったい恋、世代をこえた友情。幸福感あふれる最新長篇。
浅草田原町の庫裏で寺子屋を手伝う浪人・鬼怒玄三郎。彼には、法で裁けぬ悪党を密かに始末する裏の顔があった。女を食い物にする“玉ころがし”と呼ばれる男を誅殺したあと、奉行所同心の手下となり悪事を重ねる金十一家の者たちを次々と葬り去っていく。この玄三郎の手腕に、豪商・紀伊国屋文左衛門が用心棒を乞うてきた。交誼を深める二人だったが、玄三郎には思惑があった。文左衛門と張り合う成り上がり者で、姉を悶死させた材木商の奈良屋茂左衛門を狙っていたのだ。
魔の深淵に金山の女娼を投げ込んだものは何か?魔の深淵に糸取り工女と恋人を追い込んだものは何か?その魔性は今もなお、大手を振って生きつづけてはいないか?多摩川の源流、おいらん淵の底から、あなたによびかける怨霊の叫び。