2007年5月25日発売
出雲の富田城主尼子氏に仕えた山中鹿之介は、十六歳の折、伯耆の行松氏との合戦に参加、敵の猛将を討ち取り、勇名を馳せた。だが、虎視眈々と中国地方の統一をもくろむ毛利元就は、凄まじい謀略と圧倒的な軍事力で富田城を攻め落とす。牢人となった鹿之介は艱難のすえ、一城を奪い、織田信長の支援を得て尼子家の再興をはかるが…。“忠誠心”の代名詞として、日本人に愛されてやまない武将の生涯を描く戦国ドラマ。
斉藤一夫は小学六年生。ある日クラスに斉藤一美という転校生がやってきた。なんと彼女は幼稚園で一緒だった、ちょっとやっかいな女の子。みんなの前で秘密をばらされたり、ちょっかい出されたりで弱った一夫は、ちょっと脅かしてやろうと「身代わり地蔵」の前で一美に体当たり。ところが二人ともでんぐりがえって気を失ってしまった。気がつくと、二人の体は完全に入れ替わっていた。
富士五湖の一つ、西湖のほとりにある巴屋旅館から一人の男が遺書を残して失踪した。西湖の近くには自殺の名所といわれる青木ヶ原樹海が広がっている。それから一年、その男の妻が東京で殺された。十津川警部率いる捜査一課が事件を担当するが、その間に第二の殺人事件が発生する。失踪事件との関連は?死体に残された桃の小枝の意味は?二転三転する十津川たちの推理。その先には驚くべき真相が隠されていた。
美術品を専門に狙う、怪盗チェシャ猫が現れた。大胆不敵な犯行はたちまち話題に…。そのチェシャ猫から犯行予告が。標的は画壇の重鎮野上益一郎の主催する「アダムとイヴ・コンクール」。その実力と強烈な個性で君臨する暴君、野上。その妻、娘、弟子、画商、演奏家、様々な利害を持った面々が会場に集まり、そして殺人事件がー。犯人は?怪盗の目的は?ホームズとチェシャ猫が対決する、大人気シリーズ第30弾。
酸素欠乏症を引き起こす時限式爆発物を追い、名古屋の中心街をF1で疾走する臨床心理士・岬美由紀は最悪の事実を突きつけられる。それが高校に仕掛けられたと。そして残された時間は1時間を切っているとー。いじめや自殺、社会格差など、現代日本の抱える問題点に鋭く切り込みながら、美由紀の新たな側面を描き出す。シリーズの新たな地平を切り拓く書き下ろし第5弾。異色の社会派エンターテインメント。
時は1899年。トルコの首都スタンブールに留学中の村田君は、毎日下宿の仲間と議論したり、拾った鸚鵡に翻弄されたり、神様同士の喧嘩に巻き込まれたり…それは、かけがえのない時間だった。だがある日、村田君に突然の帰還命令が。そして緊迫する政情と続いて起きた第一次世界大戦に友たちの運命は引き裂かれてゆく…爽やかな笑いと真摯な祈りに満ちた、永遠の名作青春文学。
スペインの石鹸工の娘テレジアは、その美貌で伯父を虜にし、12歳で女の歓びを知った。仏社交界へのデビュー、侯爵との結婚、出産をへて、不倫へ。男性たちを機知と色香で篭絡し、第二のマリー・アントワネットと呼ばれ、数多の有名人を愛人に贅沢な生活を送り、最後は大公后にまで成り上がったー。欲しいものを手にいれ、人生を楽しみ、長寿を全うした、史上最強の勝った女の華麗で波乱に満ちた生涯。
画家だったパパの突然の死から五年。浮き世離れしたママと、美術館に改装した家で暮らす大学生のいずみ。離れの間借り人、渋い老人の伏見に恋しているが、伏見はじめ美術館に出入りする男たちはみなママに夢中だ。ある日、放映されたパパのドキュメンタリー番組に、パパの愛人が出演していた…。なにが起ころうと否応なしに続いていく人生と渡り合うために、ママがとった意外な行動とはー。
アトランティス、暗殺集団、赤い酒場、巨石信仰、狼男、吸血鬼、不死の生命…。この本を手に取ったあなたは、これらの言葉からどんな物語を想像するだろうか。失踪した妻を捜し夜の街を歩く建築家・隅田、展示場から消えたアトランティスの壷を追うカメラマン・伊丹。彼らの周囲には、次第に不可解な出来事が起こり始める。一見脈絡のない事象を縦糸に、男女の愛を横糸に紡ぐ、半村良の伝奇ロマン。
イギリスのオックスフォードで若い女性が惨殺された。無惨に切り裂かれた遺体の上には一枚のコインが残されており、何かの儀式を思わせた。やがて第二の殺人事件が発生、被害者はやはり若い女性で、遺体にはまたしてもコインが置かれていた。取材でこの地を訪れていた作家のローラは、警察から犯罪現場の写真を撮る仕事を請け負っている元恋人フィリップとともに、この異常な事件を調べ始める。そして、そのコインが紀元前400年頃のエジプトで使われていたものの模造であることを突き止めた。さらに、殺人の行なわれた日が占星術に基づいて決められていることにも気づく。そして、第三の殺人が起きた。犯人はいったい何を企んでいるのか?調査を進めるローラとフィリップは、やがて1851年にも酷似した連続殺人事件が起きていたことを探り出す。そして、一連の事件に偉大な科学者ニュートンが深く関わっていることを知るが…錬金術、占星術の知識を巧みに織り込み、壮大なスケールで描くサスペンス小説。知的興奮を呼び起こす話題作。
四川省成都。莫は留学先のパリで、夢を解釈するフロイト派精神分析学を学び、故国に戻ったばかりの、心の医師。彼は、大学時代片想いをしていて、今は政治犯として投獄されている女性・胡〓(フーツアン)を釈放してもらうため、法曹界の影の実力者・狄判事のもとを訪れる。賄賂で解決しようとする莫に、判事はある条件に適う女性を用意できたなら、胡〓(フーツアン)を放免すると告げる。だが、広大な国土を誇る中国のこと。莫は終わることのない夢分析の旅に出る羽目に…。フランス在住中国人の著者が、自らの分身とも言うべき精神分析医の旅路を、瑞々しい筆致で描いた長篇第二作。フェミナ賞受賞。
宮崎一晃は、ゆっくりと全身が麻痺していく難病に冒された、少壮の画家。しかし、彼にはもう一つ、ウラの顔があった。宮崎の身の回りの世話をする美貌の介護人・篤子は、彼のウラの稼業を知らない。破格の契約を交わしている二人のあいだは、カネで結ばれているようでもあり、それだけではないようでもあり…。シニカルでユーモラスな、異色のハードボイルド・ロマン。
経理課員の轢き逃げ死、失踪、そして横領疑惑。度重なる事件の裏には大企業の暗黒面が隠されていた。単身赴任中の出向社員が腐敗した会社の不正を暴いていく。正義のためというより、ただ愛するひとのために、たった一人の闘いが始まった。人生のレースから降りかけていた男が命懸けで真実に迫ろうと志したとき、女は…。