2008年発売
「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」-御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択したー。それから13年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監察機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。これは“人類”の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語ー。『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
コンビニで働く大学生の宗助には、気になる女性客がいた。クリスマス・イブにも一人で店を訪れ、ショートケーキを買う彼女は見映えのしない四十代だが、なぜか気になってしかたがない。ある日、街中でその女性を見かけ、自分でも大胆だと思えるほどの行動に出る。思いがけず、親子ほども歳の離れた若い男から情熱を寄せられた美南子は、結婚に破れたという自身の傷から立ち直れず、恋愛に臆病になっていた。だが、物怖じしない宗助の一直線な恋愛を前に、だんだんと自分の中に眠っていた火が燻りはじめる…。
昼間はお堅い薬剤師…だけど木曜の夜だけ、ユキナリという名のわがまま猫になって好みの男を漁る。期間限定の気ままな暮らしーそんな由紀也が一夜の相手に選んだジュエリーデザイナーの岸田は、カッコよくて構い上手でベッドも最高!俺だけに飼われろよ…と言われ、初めて本気の恋にはまってしまった。でも…。岸田は昼間の顔を見られても、自分は双子の弟だと言い張る由紀也で…。
最先端技術の商品を扱う陽光工業。営業部の三浦は突然、本社の新部署、総合戦略企画室の室長付き秘書に抜擢された。会長自らが連れてきたという若き室長、桐生は米国帰りのクールな美人。先鋭たちが集められた新部署で早速辣腕ぶりを発揮する。だがそんな桐生には、会長の愛人という噂が…。怜悧な頭脳の持ち主が時折見せる頼りなげな瞳にメロメロとなった三浦は…。昼は忠犬、夜はセクハラ!桃色オフィスラブ。
上等だよ!ヤクザだろうがお巡りだろうが関係ねえよ!抗争、乱闘、死闘…。元「ぼったくりの帝王」が過去に別れを告げ、歌舞伎町の夜明けに誓ったあらたなる決意とは?驚愕の半生を綴る衝撃のノンフィクション。
河童の画家、生誕140年・没後70年。牛久沼のほとりに暮らし、水魅山妖に惹かれ、独自な日本画を描き、河童の絵を描き続けた自然人がいた。「平民新聞」の幸徳秋水らと交わり、横山大観に認められ、田舎の幻想世界を追求した農画家の魅力が今よみがえる。その生涯を描く、初めての評伝小説。
「人生」という旅を、少しずつ受け入れるようになったあなたへ。親友が恋した男との、密会。老いた両親と旅して変化する、娘の感情。恋人以上だけど夫婦未満、微妙なカップルが旅の途中で出遭った「幽霊コレクター」…。ドイツで30万部を超えるベストセラーとなった青春の終りを予感する旅をめぐる、傑作短篇集。
獣が女に変わり、女が獣になっていく。奥さまはカミツキガメに変身し、美女に変身中の忠犬は、オペラスターになる夢を抱いて家を出るー奇想の女王が描く、愛と不可思議に満ちた現代のピカレスク変身譚。
山田正紀の膨大な作品群のなかでも、きわめて重要な意味をもつ「犯罪ゲーム」という概念。本書では、実行不可能と思われる作戦に果敢に挑む男たちの、手に汗握る活躍を描くシリーズ「贋作ゲーム」計四篇に加え、「アマゾン・ゲーム」「マッカーサーを射った男」「伊豆の捕虜」の計三篇を収録。著者が「“ミッション・インポシブル”と“地下室のメロディ”の中間ぐらいをねらった」と述べる、痛快無比なる「泥棒小説」の粋をぜひお楽しみあれ。
今を生きる孤独、喪失と再生の物語。幼いころに両親を殺害され、たったひとりの肉親である兄まで殺人容疑で逮捕されるという、過酷な運命を背負わされた佳音(かのん)。さまざまな困難に見舞われつつも、ただ純粋に人を愛する気持ちだけを支えに生きていく姿を、せつなく、リアルに描いたラヴストーリーをここに。
一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。