2010年8月発売
太陽から二億三千万キロ離れた夏星。そこではP.U.Sという先天的病気の因子が住民を蝕み、人々は“新世界”への渡航を夢見ていた。斡旋住宅で兄シュイと二人きりで暮らすイオ。彼の元に残された謎の物質“ゼル”とは何か?二人を巻き込む壮大な闘いが今、始まる。超人気シリーズの第一巻。
どこにでもいる無邪気で平凡な女子大生、一実。自殺した親友の四十九日の翌日、眠りから目覚めると、彼女の右足の親指はペニスになっていた。突然現れた親指Pに困惑し、揺れ動く人々。そして無垢だった一実にも徐々に変化が訪れー。驚くべき奇想とユーモラスな語り口で大ベストセラーとなったあの衝撃の作品が、待望の新装版に。
新しい恋人、春志と、性的に特殊な事情を持つ人々が集まる見せ物一座“フラワー・ショー”に参加した一実。だが、一実自身は同性である映子に惹かれてゆき、そしてー果して親指Pを待ち受ける運命は?性の常識を覆し、文学とセクシャリティの関係を変えた決定的名作が待望の新装版に。
“ミンクを収容施設から連れ出せ!”シュイは、主治医ソレンセンからの指令を受け施設に侵入するが、襲撃を受け格闘するうち、傍らで何者かが燐光を起こす…徹底的に監視され孤独を深めゆくシュイの姿を描く巨篇・第二部。謎の物質“ゼル”をめぐる争いは混迷を深め、少年たちの運命の歯車が回りだす。
「希んだら、あなたの手で殺してくれますか」-イオの放った紡錘の直撃を受け意識を失ったシュイ。傷を負い、目醒めた彼のもとに戻ってきたのはイオではなく“ミンク”だった。二人は果たして別人なのか?衝撃の展開が訪れるシリーズ第三部。翻弄される“兄弟”の運命は?長野まゆみロング・インタヴュー(後篇)付。
「ミンクが覚醒すれば、イオは消滅します…あなたはそれで平気なんですか」-美貌の亜人ジャウが、シュイに近づく時、最も危険な人物の影もまた忍び寄っていた。超人気巨篇シリーズ、ついにクライマックス突入!最後の闘いが今、始まる…。新世界をめぐるQ&A/長野まゆみ自身による図解・カバーイラスト集付。
拘束されたジャウの命が失われゆく中、ソレンセンは最後の賭けにでる…。シュイとイオの躰が融け合い、一つになるとき、“永い眠り人”は、記憶の彼方からついに目を醒ますのか?超人気巨篇シリーズ、ついに感動の最終巻。
ぼくは野球を知らなかった。ぼくの友だちもパパもママも先生さえも知らなかった。「野球を教わりたいんです」-“日本野球”創世の神髄が時空と国境を越えていま物語られる。一九八五年、阪神タイガースは本当に優勝したのだろうか?第一回三島由紀夫賞受賞の名作。
十九歳のオレと三十九歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てたーー「思わず嫉妬したくなる程の才能」と選考委員に絶賛された、せつなさ百パーセントの恋愛小説。第四十一回文藝賞受賞作。映画化。
高三の夏、赤いコンバーチブルにのって青春をグルグル回りつづけたぼくと彼女のミオ。はじけるようなみずみずしさと懐かしく甘酸っぱい感傷が交差する、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。第三十二回文藝賞受賞。
幻の娘の誘惑は甘く、そして切なかったー東京郊外、眠りが丘。一時の快楽に身を委ね、堅実なはずの人生を踏み外していく人々。彼らはただ、自らの欲望に少しだけ素直なだけだったのかもしれない…。夢想の町「眠りが丘」を舞台に島田雅彦が描き出す、悦楽と絶望の世界。
純文学の守護神にして永遠の「新人」、笙野頼子。デビュー後暗黒の十年を経て、立て続けに受けた三つの栄光ー野間文芸新人賞受賞作「なにもしてない」、三島由紀夫賞受賞作「二百回忌」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」を一挙収録。いまだ破られざるその「記録」を超え、限りなく変容する作家の栄光の軌跡。
世界が世界になる一歩手前の音を、鳴らしたいーあるビルを「落とす」ため、不動産屋の男は祖母の形見の三味線を手に、十年ぶりに故郷・新潟を訪れた。競売物件を巡り奔走する中で出会った、ロシアの女性エレーナとバーのマスター渡辺。再び「音」に取り憑かれた男が辿り着いた「果て」の世界とは。
人を思う気持ちはいつだって距離を越える。離れた場所や時間でも、会いたいと思えば会える。「だって、わたしはどこにでも行けるから」-遠い隔たりを“ショートカット”する恋人たちのささやかな日常の奇跡を描いた、せつなく心に響く連作小説集。
ハツとにな川はクラスの余り者同士。ある日ハツは、オリチャンというモデルのファンである彼の部屋に招待されるが……文学史上の事件となった百二十七万部のベストセラー、史上最年少十九歳での芥川賞受賞作。
「私、あなたを抱きしめた時、生まれて初めて自分が女だと感じたの」-二人の女性の恋は、「男と女ごっこ」を拒絶し自分たちに合った性愛を手探りするうちに、捩れて行く。至純の愛と実験的な性を描き、発表当時から年を追うごとに評価の高まった異色の傑作が、待望の新装版で甦る。
ごめんねといってはいけないと思った。「ごめんね」でも、いってしまった。-埼玉郊外の下請け会社に、事務として中途入社した、澤野睦美。恋人・四郎と同棲する彼女に、不意に訪れた心変わりとは?話題の表題作ほか、「センスなし」を収録。恋をめぐる心のふしぎを描く魅力あふれる小説集。
喫茶店で働く私の日課は、向かいの部屋の窓の中を覗くこと。そんな私はやがて夜の街を徘徊するようになり……。『ひとり日和』で芥川賞を受賞した著者のデビュー作/第四十二回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇収録!
生後三ヵ月の赤ん坊が誘拐された。錯乱状態の母親、具体的な要求をしない奇妙な誘拐犯、翻弄される捜査本部。そんな中、遺留品が発見された山中から掘り出されたものとは…バツイチ、子持ち、大酒飲み、捜査一課検挙率No.1、そして「無駄に美人」。ベストセラー『推理小説』に続く、刑事・雪平夏見シリーズ第2弾。