2011年3月4日発売
山の楽しさ、厳しさ、美しさを知り尽くした男・島崎三歩。彼はいま日本アルプスで山岳救助ボランティアを続けていた。要救助者ありの連絡が入ると、三歩はすぐに現場にかけつけ、事も無げに遭難者の命を救う。そんな三歩が暮らす山に、北部警察署山岳救助隊に配属されたばかりの新人・椎名久美がやってくる。久美は、三歩たちの指導の下、厳しい訓練をこなしていくが、実際の救助となると未熟さや過酷な自然を前に、自信を失くし失意の日々が続く。そんなとき猛吹雪の山で多重遭難が発生。救助に向かった久美を待ち受けていたのは想像を絶する雪山の脅威だった。
享保九年(一七二四年)、神君・徳川家康の命日である四月十七日に、八代将軍・吉宗が久能山へ参詣することとなった。幕府の要人たちが準備に追われるなか、鉄砲方を拝命している旗本・井上義継の跡継ぎ小十郎が誘拐される。御用取次の加納久通は、尾張藩がこの策謀に絡んでいるとみて、目安箱改め方の竜巻誠十郎に調査を命じる。事件には誠十郎の父・竜巻順三と、ある「結社」が関係していた。尾張藩邸に潜入した誠十郎と相棒の勘次の前に、書院番頭にして究極の剣技といわれる小野派一刀流の使い手・嶋信綱が立ちはだかる。大好評シリーズ第一部ついに完結。
賢は大学で映画研究会に属している。四年生の賢が監督で映画を撮ることになり、ヒロインには同じ映画研究会の杉崎莉沙が選ばれる。莉沙も実は監督志望で、賢が書いた脚本をめぐって、ふたりは言い争いとなるが、撮影は進む。莉沙の最後のショットを残して、彼女が交通事故に遭い死んでしまい、映画は頓挫する。一年後、賢は莉沙にそっくりな女性を見かける。声をかけ話を聞くと、莉沙の双子の妹の洋子だった。賢は洋子を起用して残されたショットを撮影し、映画を完成させようとするが、一年ぶりに集まったメンバーは、そんな賢に途惑いの表情を見せるのだった。
ロシアマフィアを怒らせた代議士Kのド助平「海外政経事情調査」、「金髪ポルノ」で美人研修生に英語講習する首席事務官M、在外公館・女性家事補助員が見た「公使Aの裏金とSEXの罠」-。尖閣問題、朝鮮半島有事など外交有事の最前線で繰り返されているのは、実に呆れた破格の蓄財と性の宴だった。全篇、個人名を除いてほぼ実話、大宅賞作家にして最強外交官が描く初の小説。
新幹線の車中で男が死亡した。ポケットからはアカベと呼ばれる真っ赤な花と湯山仁三郎という弁護士の名刺が。アカベはかつて流人の島だった南海の孤島・恩根島のみに咲き、咲くと島に不幸がもたらされるという。偶然隣に座っていた弁護士の中原正弘は「早くしないと妹も…」という男のメッセージを手がかりに、秘書の京子とともに恩根島へ向かったが、余所者の二人に島民の口は固く…。
見知らぬ女性から突然届いたメールから始まった主人公の心境の変化を描いた表題作『こんなところに…』ほか、言葉の力、善と悪、生命倫理、生物多様性など、現代人が直面する問題を小説やショートショート、童話の形で軽妙に描く25編。