2013年1月4日発売
東京の中流家庭の主婦として誇りを持つ由美子。高校中退の息子がフリーター娘・珠緒と結婚宣言をしたことで「うちが下流に落ちてしまう」と恐怖を覚え、断固阻止を決意する。一方馬鹿にされた珠緒は「私が医者になります」と受験勉強を開始してー切実な女の闘いと格差社会を描いた傑作ベストセラー小説。
江戸の大火で住み慣れた家を失ってから十年。伊三次とお文は新たに女の子を授かっていた。ささやかな幸せをかみしめながら暮らすふたりの気がかりは、絵師の修業のために家を離れた息子の伊与太と、二十七にもなって独り身のままでいる不破龍之進の行く末。龍之進は勤めにも身が入らず、料理茶屋に入り浸っているという…。
渋谷のチーム「雅」を解散して3年。カオルは東大生となり、アキは裏金強奪のプロとしてそれぞれ別の道を歩み始めていた。ところが、ファイトパーティを模したイベントを見たという級友の話を聞き、カオルは愕然とする。あろうことか主催者は「雅」の名を騙っていたのだ。過去の発覚を恐れたカオルはアキに接触するが…。
怪しげな健康食品販売会社に心ならずも就職した元フリーターの加藤は、路地裏のおんぼろビルの前に立つと呆然として見上げた。無認可保育園、学習塾、不動産屋、そしてデザイン事務所…。同じ小さなビルのなかで働きながら、それぞれの人生とすれちがう小さな奇跡。あたたかな気持ちになれる連作短編集。
メジャーを代表する東洋系スラッガー、“ジャスティン・キング”。大都市球団へのトレードを拒み続ける彼の正体を探る者たちが姿を消す。最後に日本の新聞記者が辿り着いた驚愕の真実とは。パワフルかつ緊迫の展開でラストへと一気に導く新時代野球ミステリの傑作。第一回「サムライジャパン野球文学賞」大賞受賞作。
スマートとはいえない風貌に「鈍牛」「アーウー」と渾名された訥弁。だが遺した言葉は「環太平洋連帯」「文化の時代」「地域の自主性」等、21世紀の日本を見通していた。青年期から、大蔵官僚として戦後日本の復興に尽くした壮年期、総理大臣の座につくも権力闘争の波に翻弄され壮絶な最期を遂げるまでを描いた長篇小説。
部屋に戻ると、見知らぬ犬が死んでいたー。「僕」は大きな犬の死体を自転車のカゴに詰め込み、犬を捨てる場所を求めて夜の街をさまよい歩く(「世界の果て」)。奇妙な状況におかれた、どこか「まともでない」人たち。彼らは自分自身の歪みと、どのように付き合っていくのか。ほの暗いユーモアも交えた、著者初の短篇集。
高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。